2020年7月3日に行われた「時事通信」主催の金融懇話会で、遠藤俊英金融庁長官が「アフターコロナ時代の金融」と題し講演した。

金融庁
(画像=月刊暗号資産)

講演で語られたポイントは、以下の通り。

  • 新型コロナウイルスの拡大を受けた市場の動向
  • 金融仲介機能の十分な発揮と金融システムの安定の確保
  • 金融デジタライゼーション戦略
  • キャッシュレスの推進
  • 多様なニーズに応じた金融サービスの向上

なかでも「キャッシュレスの推進」のテーマでは、グローバルな課題への対応として「サイバーセキュリティへの対応やブロックチェーン等最新技術など(分散型金融システムについてマルチステークホルダー型アプローチで議論するガバナンスフォーラム(仮称)の開催、暗号資産に関連した新たな構想の出現を踏まえた対応の検討等)に重点を置く」と説明した。

例えば、平成30事務年度には、「ブロックチェーン・ラウンドテーブル」の開催など、国際的なネットワークの強化を挙げた。

そして、昨年9月に金融庁が発表した「多様なフィンテックスホルダーとの対話から見えた10の主要な発見」(金融庁公表資料)についても言及。

フィンテック企業を中心に金融機関、ITベンダーなどに考えを聞く「100社ヒアリング」など様々な関係者を訪問し、最新の取組み等について意見交換を実施したことにも触れた。

同ヒアリングでは、AIブロックチェーン等の技術面や資金供与決済等の金融サービスの特性にも留意し、ヒアリング先を抽出した活動状況を報告した。

「100社ヒアリング」の報告の中では、

  • 許可型ブロックチェーン等を活用した、金融と商流を繋ぐB2Bユースケース創出の動き
  • パブリック型ブロックチェーン(暗号資産取引)のセキュリティを高める動き
  • 効果的なAPI認証をはじめ、国際的にAPI接続のセキュリティに関する実務標準を目指す動き

などが主要な発見として挙げられた。

他にもテーマの1つ「キャッシュレスの推進」では、日本のキャッシュレスの現状と目標として「日本のキャッシュレス決済比率は約20%にとどまっているが主要各国では40〜60%台」であること課題とし、「キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%を目指す」と目標を掲げた。

また中銀デジタル通貨(CBDC)との主要中銀幹部の見方にも言及し、

「円建てのデジタルマネーが多々ある中で、CBDCに関する調査研究を進めると同時に、民間マネーの利用を促進していくことで、CBDCが目指す決済機能の向上を実現していくことが重要…民間 デジタルマネー間の相互運用性が高まれば、一般受容性という点で、中銀マネーに近接し得る」(日銀・黒田総裁[19年12月4日])

「中央銀行がCBDCを発行し、多くの消費者がこれを使うようになれば、こうした(決済手段の林立)状態の解消につながる可能性は確かにあるかもしれない…しかし、…現在は、FinTech企業や銀行が互いに競争し、決済のイノベーションを進めている段階。まずは、情報技術面で優位にある民間部門のイノベーションを促進していくことが重要」(日銀・雨宮副総裁講演[19年7月5日])

などといった日銀幹部のCBDCに対する個々の考え方も紹介した。(提供:月刊暗号資産