何事も、初めて挑戦することには失敗がつきもの。しかし貴重な財産を投じるFXでは、初心者といえども、損失を最小限に抑えるリスク管理意識が求められる。あらかじめ初心者がやってしまいがちな失敗事例を知っておけば、最悪の事態は避けられるはずだ。

失敗1,ギャンブル感覚でFXのトレードする

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(画像=Standret/Shutterstock.com)

FXの仕組みをあまり知らない人の中には、「FXは一種のギャンブル」という眉唾の流言飛語を真実だと思っている人がいる。

そんな人が運を天に任せてFXに手を出せば、手元資金が潤沢であろうがなかろうが、ロスカット発動が続き、あっという間にFX市場から撤退だ。最悪の場合、資金が一瞬にして消滅する可能性もある。

【解決策】「理論と分析で利益を出すのがFX」と認識する

そもそも「FXで稼いだ人は楽して儲けた、運が良いから勝てた」と思っている人は、FXに手を出してはいけない。

FXには、各国の経済指標や金融政策を分析するファンダメンタルズ分析と、チャートを使ったテクニカル分析がある。FXの勝ちには一定の法則があり、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析によって今後の値動きのパターンを予測して、勝ちパターンと一致する場合に取引を行う。

予測どおりであれば勝ち、予測が外れれば負けになる。FXの勝ち負けは偶然に決まるのではなく、統計学上の確率が物を言う。FXで勝ちたいなら、一に分析、二に分析……と心得よう。

失敗2,損切りできずに大損発生、即刻撤退

投資に慣れていない人は、「損切りは負け」と感じるかもしれない。

何の手も打たずに新規注文を出してしまうと、相場環境の急速な悪化によって、ロスカットが発動された時点で証拠金の大半を失ってしまうことがある。最悪の場合、証拠金を上回る損失が発生して、損金の支払うことになってしまう。

初心者の頃に大きな損を出して追加の損金の支払いを経験すると、それがトラウマになって、その後の取引で恐怖を感じるようになってしまうかもしれない。

【解決策】損切りラインを決めて、逆指値注文などでリスク管理を徹底する

まずは、株式でもFXでも、損切りはれっきとしたリスク管理であることを肝に銘じてほしい。

具体的な損切り方法としては、以下の二段構えをおすすめしたい。

・第1段階……自分の資産状況を鑑みて、証拠金の10%減など、どこまでの損失だったら許容できるかを決める。
・第2段階……新規注文の際に、必ず逆指値やOCO注文・IFO注文など、ストップロスのための注文も入れることを習慣付ける

損切りの決断ができないという優柔不断な人は、自動売買でトレードするという手もある。

失敗3,スプレッドが一気に開いて、あっという間にロスカット発動

低コスト第一で、スプレッドが業界最狭水準のFX会社を利用しているし、証拠金維持率にも余裕があったはず。

それでも「帰宅後に新規注文を出して、様子を見ているうちに寝落ちして、朝目が覚めたら大きな含み損を抱えていた」「米国雇用統計発表後に為替相場が急落し、あっという間にロスカット発動」という災難に見舞われることも。

これらには、為替相場の値動き以外にも「スプレッドが開く」ことを甘く見ていたという問題もある。

スプレッドはFXの主要コストであり、スプレッドが開けば開くほど、純資産はどんどん減少する。相場は自分でコントロールできないが、コスト管理は自分次第だ。

【解決策】早朝などの流動性が低い時間帯や、重要経済指標発表時はトレードを控える

どのFX会社でも、原則固定のスプレッドの狭さをアピールしているが、それはあくまでも流通量の多い平常時の取引に限られる。

日々の為替相場でも、ニューヨーク市場が閉まってから(日本時間の朝6時以降)はマーケット参加者が少なくなり、各社ともスプレッドを広げる傾向がある。また、米国雇用統計や米国GDP、連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明発表、海外要人の発言などで相場が大きく変動する際も、スプレッド幅が拡大することが多い。

初心者は、このようなタイミングでのトレードは控えたほうがいいだろう。保有しているポジションも、マーケット参加者が減る早朝前や、重要経済指標発表前に決済してしまおう。

これで、少なくともコスト増加による資産減少は回避できるはずだ。

失敗4,マイナススワップが積み上がって、追証発生

「トルコリラ/円の通貨ペアを買いポジションで保有していたら、突然追証発生のアラートメールが届いた」という失敗も、初心者にはありがちだ。

この失敗の根本的な原因は、スワップポイントは日々変動するものであり、貯まるばかりではなく、支払うこともあることを認識していなかったことだ。

スワップポイントは、通貨発行国の政策金利が大幅に引き下げられた場合、あるいはトルコのような地政学的リスクの高い国の情勢が悪化した場合に大きく変動する。

買いと売りのプラススワップとマイナススワップが逆転してしまうと、レバレッジ倍率によっては、あっという間に支払額が受取額を上回ってしまう。これに為替相場の暴落が加わると、純資産が大幅に減少し追証が発生、最悪の場合はロスカットだ。

【解決策】買いスワップであることを定期的に確認する、世界経済に気を配るなど

せっかくためたスワップポイントを、マイナススワップに食い潰されないようにするには、FX会社選びの段階から気を付ける必要がる。

通常、買いと売りのどちらかのスワップはプラス(受取り)で、もう一方がマイナス(支払い)になる。スワップカレンダーを確認して、「受取スワップ>支払スワップ」になっているFX会社を選ぶこと。これなら、たとえ買いスワップがマイナスになることがあっても、一定の利益を確保できる。ポジションを保有するなら、通貨発行国の政策金利が変更されていないか、大幅な為替レートの変動がないか、定期的にチェックすることも必要だろう。

スワップポイントがマイナスになっていることに気付いたら、それが一時的なものか政策金利引き下げによるものかを確認して、恒久的な理由であれば、支払いが増えないうちに決済しよう。

失敗5,デモでは利益を出せたのに、本番は負け続き

FX会社の多くはデモトレード環境を用意しているが、本番前にデモでしっかり練習して良い成績が出せるようになったからといって、本番でも同じような利益が出せるとは限らない。

デモはデモだ。自分の財産を投資して、勝てば現金が手に入る本番環境とは、緊張感や本気度がまったく違う。実際の取引では、大なり小なり予想もしなかった事態も起こるものなので、デモと同じような結果は出ないと思っておいたほうがいいだろう。

【解決策】デモで慣れたら、次は少額投資で実践経験を

デモトレードができるなら、トライするべきだろう。どのFX会社でも、デモトレードに使う環境はツールを含め、本番と同じものが用意されている。デモトレードで慣れておけば、本番でツールの使い方や手順に戸惑うことはない。

デモトレードに慣れたら、次は1,000通貨単位(SBI FXトレードは1通貨単位から)の少額で、実際のFXトレードをするのがおすすめだ。米ドル/円、1米ドル=100円の場合、売買単位が1,000通貨単位なら、レバレッジ5倍で2万円程度の資金があればトレードできる。仮に2万円全額を失っても、悔しい思いこそすれ、生きていけないことはないだろう。

金額を問わず、誰でも自分の資金を失うことは避けたいと思うので、緊張感をもってトレードに臨めるはずだ。

失敗6,レバレッジを最大にしたら、即刻ロスカット退場

FX初心者は、「リスクはあるが、せっかくだからレバレッジ倍率を25倍にして最大限に儲けたい」と考えがちだ。レバレッジ倍率を自分で決められるのに、あえて25倍に設定してしまうと、状況に応じて臨機応変に判断ができない初心者には命取りだ。

例えば、米ドル/円の買いポジションを保有している初心者が急落に直面したとき、初心者は様子を見るべきか、早々に手仕舞いするべきか、迷ってしまうことが多い。

証拠金の評価額は25倍のスピードで減少していくので、初動が遅れれば追証どころか即刻ロスカットが発動される。

【解決策】低倍率のレバレッジからスタートする

FX初心者の鉄則は、レバレッジを低倍率にしてトレードをすることである。

初心者は、最初のうちはどうしても負けが続くものだ。せいぜい3~5倍程度のレバレッジで、できるだけ損失を限定できるようにしておこう。

レバレッジ25倍のトレードは、負けより勝ちの回数が上回るようになってから、あるいは確実な損切り方法を身に付けてからでも遅くはない。

失敗7,たくさんのテクニカル指標を使っても一向に勝てない

FXトレードには、チャート分析が有効だ。そのため、あらゆるテクニカル指標を一度に覚えて、実際のトレードにも活用しようと頑張る人がいる。しかし、この方法で初心者が勝てる確率は極めて低い。

いくつものテクニカル指標をじっくり分析している間も、状況は刻一刻と変化する。方針が決まった時には、すでに手遅れになっていることも珍しくない。

【解決策】初心者のうちは、使いやすいテクニカル指標だけで判断したほうが効率的

FXを始めたばかりであれば、あれもこれもと欲張らずに、自分にとってわかりやすい指標だけで投資判断を下したほうが無難だ。スピード勝負のFXの世界では、根拠のある迅速な判断は、勝てないまでも大きな損失を食い止めるのに大いに役に立つ。

テクニカル指標はたくさんあるが、極論を言えば、どれも値動きのパターンを切り口を変えて分析したものに過ぎない。自分が自信を持って分析できる指標であれば、最もシンプルな移動平均線あるいはポリンジャーバンドだけでも十分だ。

多くのテクニカル指標を使って多面的に分析するのは、FXトレードに慣れて、相場環境を俯瞰して見られるようになるまで待とう。もちろん、それぞれのテクニカル指標の意味することを正しく理解できるようになってからだ。

失敗8,チャート分析のみ!ファンダメンタルズ分析はしたことがない

FXといえば、テクニカル指標を駆使したチャート分析が肝だと思い込んでいる人がいる。これは、FXの投資手法によっては正解だが、ポジションを数日間から数週間持ち越すスイングトレードの場合は不正解だ。

スイングトレードは中期トレードなので、短期トレードのスキャルピングやデイトレードに比べて利益幅が大きくなる。それにもかかわらず、ファンダメンタルズ分析をしないでスイングトレードをすると、中期的な値動きを正確に予測できないので、利益を出すことは難しい。

【解決策】重要経済指標の発表は注視する、あるいは短期トレード専門に

スイングトレードを主体としたトレードをしたいなら、利益を出すために、テクニカル分析とともにファンダメンタルズ分析も重要であると考えよう。

FXでのファンダメンタルズ分析とは、各国の経済成長率や物価上昇率、政策金利、雇用状況、要人の発表などをもとに値動きを予測することである。このような経済指標の発表前は、各証券会社やアナリストが必ず予想を出しており、実際の発表との乖離があるほど反動は大きく、為替のボラティリティも大きくなる。過去のチャートを参考にしながら投資判断を下し、トレードのタイミングを計るのが王道だ。

ファンダメンタルズ分析が面倒に感じるなら、スキャルピングやデイトレードのような、テクニカル分析が基本になる短期トレード専門トレーダーになる手もある。

失敗9,キャッシュバックキャンペーンに煽られて、キャッシュバック以上の損失を出す

どのFX会社でも、若干の違いはあるものの、キャッシュバックキャンペーンを実施している。多くのキャンペーンは、取引量に応じてキャッシュバック金額が増える仕組みになっている。

例えば「メキシコペソ/円の取引(1Lot=1万通貨単位)で、20~50Lot未満の新規注文でキャッシュバック500円、1万Lotの新規注文で最大10万円のキャッシュバック」というキャンペーンの場合を考えてみよう。最大10万円のキャッシュバックを受けるためには、1億通貨単位のトレードをする必要がある。

少額トレードが鉄則の初心者は、最低額のキャッシュバックを受け取れる20Lotの取引でもリスクが大きすぎる。20Lotの取引といえば、米ドル/円で1米ドルが108円の場合、取引額は2,160万円になる。掟破りのレバレッジ25倍でも、86万4,000円の証拠金が必要だ。

余力が豊富にあるならいざしらず、そうでない場合はかなりの高額となる。果敢にトライしても、損失はキャッシュバックの500円を即座に上回るのがオチだ。

【解決策】始めたばかりのときは、キャンペーンを無視する

「キャッシュバックキャンペーン」というコピーを見ると、「トレードをして現金を獲得しなければ」思いがちだ。しかし初心者のうちは、このようなキャンペーンは一切無視するほうがいいだろう。

キャッシュバックを受け取ることを考えるよりも、1日でも早くトレードそのもので損失より利益が上回るようになることを目指そう。堅実にトレードに向き合うほうが、FXで利益を出す技術が磨かれる。

一定期間のうちで、トレードによる損失額以上の利益を安定的に出せるようになったら、キャッシュバックキャンペーンなど目に入らないはずだ。

失敗10,米国の祝日に新規で買い建てたが流れが読めず、損失抱えたまま手仕舞い

原則的にFX市場は年中無休で、いつでも取引ができる。

米国の独立記念日(7月4日)や感謝祭(10月第2月曜日)、クリスマス(12月25日)でも注文は受け付けているので、新規注文を出してみた。ところが値動きが小さく不安定で、結局損失を出した状態で決済せざるをえなかったということも、初心者にはよくある話だ。

米国の祝日はマーケット参加者が少なく値動きが小さいため、チャートにもトレンドがはっきり表れず、誰が参加しても利益を出すのは難しい。経験の浅い初心者なら、なおさらだ。

【解決策】マーケット参加者が少ない時はトレードを控える

FX初心者は、実践を通して値動きを体感しながら、分析方法を習得する段階にある。

米国の祝日のように、マーケット参加者が少ない時はトレンドが出にくく、値動きが予測しにくい。このタイミングでエントリーしてもFXトレードの練習にはならず、損失も出やすいのでトレードを控えたほうがいい。

逆に、為替レートにインパクトを与える重要経済指標発表や、影響がより甚大なリーマンショックや新型コロナ級の世界的事象の際は、マーケット参加者が急増して値動きが激しくなる。

このような場合も、予測が外れると損失が大きくなるので、FXを始めたばかりの人はエントリーせず、静観するようにしたい。

FX初心者の心得――負けても損失限定、危ない橋を渡らず手痛い失敗を回避する

FXは、慣れてくれば少ない元手で大きな利益を出すことができる金融商品だ。その反面、損失額が大きくなるリスクもある。初心者のうちに大きな損を出せば恐怖心がネックになって、その後のFXトレードがうまくいかなくなるおそれがある。

FX初心者は、損失を出しても最小限に抑えること、そして多くの初心者にありがちな失敗を反面教師にして、できる限り失敗を回避することに集中しよう。

とにかく少額トレードを心がけて、地道に実践を重ねることが、息の長いFXトレーダーへの第一歩だ。

執筆・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。

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