シンカー: 新型コロナウィルス問題による経済活動の停滞で、需要が大きく減少し、物価には強い下落圧力がかかっても不思議ではないが、加速度的な下落にはなっていないようだ。自粛ムードが続く中では、値下げに対して消費者が強く反応することは期待できない。更に、一定量の需要が確保できているのであれば、価格を引き下げず、売上高を維持しようと企業は考えるだろう。需要の大きな減少は物価下落圧力だが、需要の価格弾力性が大きく低下していることが逆に物価を支える方向に作用しているとみられる。7月のコアコア消費者物価指数は102.0となり、4月(101.7)までの下落の後、1月の水準(102.1)までほぼ戻している。原油価格の再度の下落と新型コロナウィルス問題による需要の大幅な減少で、現在の物価上昇率はトレンドを大きく下回っている。今後は、新型コロナウィルス問題が終息の方向性が見えてくれば、需要は通常の生活を取り戻す中で、雇用・所得が維持されていることにも支えられ、しっかり回復していくとみられる。需要の回復とともに、供給対比での需要の強さが生まれ、物価動向はデフレよりもインフレへの方向性も持つ可能性がある。新型コロナウィルス問題に対処するため、各国は巨額の財政拡大に踏み切った。財政拡大により、米国では国際経常収支赤字額の拡大によるグローバルに向けてのドル供給の追加、欧州では国際経常収支黒字額の減少によるグローバルに向けての需要の追加、そして、日本ではネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)の復活により家計への資金の流れの目詰まりが解消する可能性がある。これらのグローバルにマネーが拡大する要因は、資産価格の上昇、そしてこれまでのグローバルなデフレ基調がインフレ基調へ変化していくきっかけになるかもしれない。原油価格下落の影響を含め、今年の物価が弱ければ弱いほど、先行きの需要下支え効果と前年同月比の裏が出て、来年の物価上昇率は高くなりやすい。来年後半には日本のコアコア消費者物価指数の前年同月比はこれまでのトレンドラインに回帰し、来年末には1%程度まで上昇幅が拡大している可能性があろう。そして、その時までには、コロナショックによるデフレ現象が一時的であったことが分かるだろう。
7月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比0.0%と、6月から変化はなかった。
7月のコアコア消費者物価指数(除く生鮮食品とエネルギー)も前年同月比+0.4%と、6月から変化はなかった。
コアが前月比では2か月連続、コアコアが3か月連続での上昇となった。
新型コロナウィルス問題による経済活動の停滞で、需要が大きく減少し、物価には強い下落圧力がかかっても不思議ではないが、加速度的な下落にはなっていないようだ。
自粛ムードが続く中では、値下げに対して消費者が強く反応することは期待できない。
更に、一定量の需要が確保できているのであれば、価格を引き下げず、売上高を維持しようと企業は考えるだろう。
需要の大きな減少は物価下落圧力だが、需要の価格弾力性が大きく低下していることが逆に物価を支える方向に作用しているとみられる。
7月のコアコア消費者物価指数は102.0となり、4月(101.7)までの下落の後、1月の水準(102.1)までほぼ戻している。
原油価格の急落の影響があった2015・16年の後、2017年以降のコアコアCPI前年同月比のトレンドをみると、しっかりと上昇幅が拡大していたことが確認できる。
一方、原油価格の再度の下落と新型コロナウィルス問題による需要の大幅な減少で、現在の物価上昇率はトレンドを大きく下回っている。
今後は、新型コロナウィルス問題が終息の方向性が見えてくれば、需要は通常の生活を取り戻す中で、雇用・所得が維持されていることにも支えられ、しっかり回復していくとみられる。
グローバル生産体制のリスクの見直しと改変が進行する可能性がある。
更に、危機管理の在庫手当てを含め、安定した供給体制に対するプレミアムが上昇するだろう。
ソーシャルディスタンシングへの意識も、サービス業を中心に供給を制約することになるだろう。
企業は販売数やシェアより利益率を重要視するようになり、一時的な需要の弱さによる値下げに踏み切るハードルを上げ、価格弾力性を考慮した価格戦略が広がるとみられる。
需要の回復とともに、供給対比での需要の強さが生まれ、物価動向はデフレよりもインフレへの方向性も持つ可能性がある。
新型コロナウィルス問題に対処するため、各国は巨額の財政拡大に踏み切った。
財政拡大により、米国では国際経常収支赤字額の拡大によるグローバルに向けてのドル供給の追加、欧州では国際経常収支黒字額の減少によるグローバルに向けての需要の追加、そして、日本ではネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)の復活により家計への資金の流れの目詰まりが解消する可能性がある。
これらのグローバルにマネーが拡大する要因は、資産価格の上昇、そしてこれまでのグローバルなデフレ基調がインフレ基調へ変化していくきっかけになるかもしれない。
原油価格下落の影響を含め、今年の物価が弱ければ弱いほど、先行きの需要下支え効果と前年同月比の裏が出て、来年の物価上昇率は高くなりやすい。
来年後半には日本のコアコア消費者物価指数の前年同月比はこれまでのトレンドラインに回帰し、来年末には1%程度まで上昇幅が拡大している可能性があろう。
そして、その時までには、コロナショックによるデフレ現象が一時的であったことが分かるだろう。
図)コアコアCPIとトレンド
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司