2020年7月28日配信記事より
『世界を豊かにするコンテンツテクノロジーカンパニーになる』という世界を目指し、AIで簡単に動画を作成することが出来る「VIDEO BRAIN」を展開している株式会社オープンエイト。今回は、時代の先端を行くテック企業である同社の取締役CFOであり、コーポレート戦略室長の澤田裕貴氏にお話を伺いました。
学生時代のアルバイトで、自分の目指す姿が見えた
-澤田さんは新卒で大和証券に入られていますが、学生時代から金融・証券に興味があったのですか?
はい、学生時代から投資銀行とコンサルティングの業界に興味がありました。そして、就活の時は、その選択肢の中でご縁があった大和証券に決めました。
-投資銀行やコンサルティングに興味を持たれたきっかけは何があったのですか?
「社会を良く変える仕事」に興味があったんです。
そして、関わる人に対してアドバイス、提案をすることで良い影響を与えることに、面白さややりがいを感じていて。自らの提案、アドバイスが価値の源泉で、それによって社会が良く変わり得るところはどの業界だろうと考えたときに、おそらくコンサルティングや投資銀行が一番マッチしているだろうと思ったのが興味を持ったきっかけでした。
-「自らのアドバイスや提案が人に良い影響を与えることがやりがい」と仰っていましたが、当時既にその原体験があったのですか?
はい。学生時代で一番印象に残っていて、今の考え方にも影響を及ぼしているのが家庭教師のアルバイトです。最初は講師でしたが、後に営業担当になり、この家庭教師の営業が、すごく面白かったんですね。
家庭教師の講師側だと、1人の子供さんの家庭に深く関わることが出来るけれども、やはり関われる数に限りがあります。しかし営業側になると、もちろん1回にお話する時間は2時間とか3時間とか短い時間ですが、その中で、なぜ勉強するのか、勉強ができることで、どのように選択肢が広がるのか、などを自分が提案して、自分が関わったことで、その子の人生が若干でも良くなる可能性がある。そこにすごく面白さを感じました。
これが今の自分の軸となる考え方である、「人に良い影響を与える生き方をしたい」という考えが形成された出来事です。
就職活動の際に、社会人として働く際には、個人で人に良い影響を与えることを成し遂げるより、チームでより大きな価値を発揮できた方が楽しいなという思いに至り、先ほどのとおり、投資銀行やコンサルティングに関心を持つようになりました。
大企業でありながら、様々な業務を爆速で経験
-澤田さんご自身のフェーズによって、思いを実現する形は変化していっているのですね。卒業後、大和証券に入社されてから投資銀行やコンサルティングの世界に飛び込んで10年間程いらっしゃったと思いますが、その中で思っていた通りのお仕事は出来ましたか?
僕の場合は、幸いそうなりました。
入社した会社は、大和証券と三井住友銀行が合弁で作った会社だったのですが、入社して1年で、合弁契約を解消し、三井住友銀行にいた人が全員、銀行に戻ったんです。
しかも、僕は最初の配属が大阪だったのですが、大阪にはそもそも人が少なかったこともあり、僕の二回りぐらい上の年齢の上司と、2年目の僕と、1年目の人が2人の計4人でチームを運営していました。
-なかなか歴史的な時期に入社されたのですね。そうなると、当然仕事を任されるスピードは従来よりかなり早いですよね?
そうですね。人数が減っても案件の数や内容は変わりませんしね。
当時、在阪と在京の企業さんへM&Aや資金調達等の提案をすることが仕事でしたが、元々想定していたより早く、広い領域の仕事を、裁量をもってやらせて頂けたことはすごく良かったですね。
-その間に、特徴的な出来事はありましたか?印象に残っているような。
世間的に見ても、いくつか象徴的なM&A案件とかエクイティファイナンスの案件はありました。でも世の中に大きく報道された案件以上に、自分で主導的に提案したり、物事を進め、結果としてお客さんに喜んでもらえて、社会が少し良く変わるのではないかと感じた仕事が、すごく印象に残っていますね。
-規模や派手さではないのですね。
そうですね。規模が大きい案件で、関わる人数が増え過ぎると、案件を行う理由や、選択肢の選び方に、政治的なところが入りやすくなってしまうところもあったりして。規模の大きさやインパクトと、自分自身のやりがいは、僕の場合は必ずしも一致しないのだなと実感しました。
井の中の蛙にはなりたくない。さらなる成長を求めて転職を決意した
-大和証券には何年くらい在籍されたのですか?
3年半ぐらいですかね。
-なぜ3年半で転職に至ったのですか?
当時2年目の社員だった僕がエクイティファイナンスとかM&Aの提案・実行をリードする中で、すごく井の中の蛙になるリスクがあるなと感じるようになったんです。社内ではこれで通っているけれども、業界全体で見たらその分野でずっとやっている方がいる中で、このままで良いのかなと。
-なるほど。ではその後に入られたコンサルティング会社や外資投資銀行では、しっかりとした経験をすること、今までと違う経験を積むのが目標だったのですね。
そうですね。大体が、これまでに仕事をしてきた上司や同僚の紹介が多かったですが。コンサルティングとM&Aの両方を提供している会社、外資系の人事コンサルにおけるM&A特化コンサル会社、そして外資投資銀行と、自分なりに、独自の強みを築くこと、しっかりと社会に価値を出せる力を付けられることを意識しながら、様々なキャリアを歩みました。
事業会社も経験。澤田さんが入社を決める「軸」とは
-投資銀行やコンサルティング業界で経験を積まれた後は、オープンエイトさんも含めて2社の事業会社を経験されていますね。事業内容が全く違う2社ですが、どういうところで入社を決めたのですか?
考え方の軸は、それこそ学生時代から変わっていないところがあって、やはり社会を良く変えたいというのがベースにあります。ただ、投資銀行やコンサルティング会社を経た上で、僕自身は、アドバイザーというよりも、自ら主体的に事業を運営して世の中を良く変えたいという意識が強くなったこと。また、世の中を良く変えるにあたり、感覚的に、何か表層的なものが変わるというより、社会や人間の本質的なものが良く変わり得る領域で仕事がしたいなという想いが強くなりました。
メドピアは「医療」、オープンエイトは「情報・コンテンツ」という領域ですが、それらが変わった時に、社会に対して、大きな良いインパクトを与えられそうな領域であること、また、それを変え得る独特の強みを持った会社であると感じたことが、経験した事業会社2社に関心を持ったポイントでした。
-初めての事業会社であるメドピアさんでは、入社時のミッションは何だったのですか?
アライアンスとファイナンスですね。
その後、経営企画部長という立場で、人事や広報など、いわゆるコーポレートの攻め側を全て見るという形に変わりました。この中で、僕がある意味一番面白かったのが実は人事だったんです。人事の仕事は僕の中ですごくファイナンスと近い感覚があって、ある意味自分の力が活かせるだろうと。オープンエイトに来てからもスタートは同じようにファイナンス、アライアンス、人事を担当しました。入社して1ヶ月位の時は、おそらく人事の仕事が占めている時間が6~7割だったのではないですかね。
-かなりの時間を占めていますね。ファイナンスと人事の共通点ってどんなところですか?
採用って、エージェントの方や候補者の方など色々な方とお会いさせていただいて、いま我々はこういうステージです、こういうことをしたいからあなたが必要です、というように我々の会社の状況や魅力を伝えて、良い人材に来て頂く仕事ですよね。
ファイナンスもある意味全く一緒だと思っていて、会社の魅力や可能性を伝えて、応援して頂く投資家の方の仲間集めをする仕事。そして、アライアンスも、自社が成し遂げたいこと、貢献できることを伝えて、一緒に社会を良くしていけそうなパートナーとの提携を推進する仕事。どれも、会社の魅力を伝えて、共感頂ける仲間を集める仕事だと思っていて、近いところがあると思っているんです。
CFOは財務中心に経営に携わる存在
今までと今とでは、CFOの概念も変わってきていると思いますよね。
今は、CFOだから財務面しか見ないっていうのは、特にスタートアップにはマッチしないと思っていて。会社にとって事業にとって、必要な役割を財務という専門性を核にしながら拡げていくっていうことがすごく大事だと思っています。
-オープンエイトさんにはどういう経緯で入社されたのですか?
執行役員の加嶋(=執行役員 兼 CPO 兼プロダクトマネジメント部長 加嶋雄一氏)の友人に、大和証券の時の友人とUBS証券の時の友人が2人いて。たまたまその2人の紹介で出会って話をしたのがきっかけでした。
-入社時は人事の仕事をする割合が多かったとのことでしたが、それまでのキャリアではM&Aのご経験が長いですよね。御社でもそのミッションはありますか?
そうですね。M&Aも担当しています。以前は、M&Aは大企業が用いる選択肢というイメージでしたが、最近はスタートアップでも積極的に戦略オプションとして考えるようになっています。それはここ最近の変化だと思いますね。
-御社でも、M&Aを積極的に戦略として用いられていますよね。それによって拡がりが出た実感はありますか?
そうですね。例えば弊社CTOの石橋(=執行役員 兼 CTO 兼テクノロジー開発部長 石橋尚武氏)は、2016年に彼らが運営していた会社を弊社が買収して、そのまま彼が弊社のCTOになったという形でジョインしています。今でももちろん開発の要です。
スタートアップにおいて、アクハイアリング、つまり買収に伴って人材採用をする、優秀なチームを招き入れるという観点で、M&Aを活用する例はこれから増えていくのではないかと思います。
-とても良いですね。一方で、人ごと迎え入れるというところではセンシティブな部分もありますよね。
そうだと思いますね。
-そこに対して意識していたり、気を付けていることはありますか?
ある意味採用と一緒だと思っているんですよね、アクハイアリングは買収とは言いながらも目的は採用なので。経営者同士の相性が合うかとか、M&A後にちゃんと事業運営上の大事な価値観がフィットするかとか、重視するところは採用をするときと変わらないです。
-なるほど。そういう価値観で見たらいいんですね。
そうだと思いますね。アクハイアリングの例でいくならば、これを、買収ストラクチャー、バリュエーション、契約交渉などの財務的な観点だけ重視して進めると、恐らく失敗します。そういう意味でも、CFOは財務に詳しいだけでなく、採用、事業などに幅広く理解を持っておくということは、特にスタートアップであればすごく大事だと思います。
オープンエイトに感じている可能性と、CFOになるためにすべきこと
オープンエイトは、「VIDEO BRAIN」という、AIを活用して誰でも動画を作ることができるクラウドサービスを展開しています。誰でも簡単に動画を作り、発信することができる。質の高い情報を、誰もが簡単に体験することが出来るというのは、日本でもそうですし、日本に限らず、世界にインパクトを与え得ることだと思っていて、そこにとても魅力を感じています。
-転職されてからもうすぐ1年程度ですが、事業も好調ですしお忙しいのではないですか?
毎日があっという間なんですよね。今年の1月からは経理、法務、総務といった経営管理領域も担当し、コーポレート領域全般を管掌していることもあり、日々何かしら想像していなかった何かが起こります(笑)。
-いま楽しいですか?
はい。とても楽しいです!それはすごくありがたいことですね。
-澤田さんが思うCFOに必要な要素や、CFOを目指す方へのアドバイスはありますか?
何度か触れましたが、僕がすごく意識しているのはCFOは“Financial”の専門家である以上に、“Chief”、マネジメントだということです。なので、経営目線をいかに持てるかというのが、特にスタートアップのCFOを目指す上で、とても大事な要素だと考えています。
スタートアップのCFOに合わないだろうなと思うのは、財務や経理、経営管理など、自分が得意な領域だけに閉じてしまい、あくまでも自分はこの専門領域のプロであって、会社全体の成長に対して責任は負わない、という考え方の方。
例えば株主と話すときも、あくまでも自分は財務の担当であって、経営戦略やプロダクト、営業のことはわかりません、それはそれぞれの担当に聞いてくださいというスタンスだと、全く株主の方に信頼されないだろうなと感じます。
僕が株主と話す時も、あなたは会社をどうしていきたいと思っていますか?今の会社の経営課題はなんですか?今後の中期的な会社の目指す姿は何ですか?などとよく聞かれます。
これって別に、財務的な観点に限って答えることではないですよね。会社としてのミッション、ビジョン、会社の目指す方向を語れないと難しいと思いますし、そもそもそういったことにどこまで深い関心を持ち、自分自身が門外漢なことにも突っ込んでいけるか。こういったことがとても大事だと思います。
-おっしゃる通りですね。最後に、澤田さんの個人的な今後の目標はありますか?
僕自身、初めに描いたキャリアパスからは結構外れているので、先が読めないなというのは正直思っています。未来はいかようにもなるし、絶対こうしたいとは思っていないですかね。ただ、結局変わらないのは、自分自身のアクションで会社や社会が良くなればいいなと。そこで何かしら良いインパクトを残せれば良いと思っているところです。
それを軸に、一番達成できそうなことをこれからもやり続ければブレないのかなと思っています。
-学生時代から軸にしている想いは変わらないのですね。ありがとうございました。
【プロフィール】
澤田 裕貴
株式会社オープンエイト 取締役 兼 CFO 兼 コーポレート戦略室長
2008年大和証券SMBC入社。以来、フロンティア・マネジメント、マーサージャパン、UBS証券など10年以上に亘り投資銀行業務に携わり、M&Aや資金調達、IPO業務などに従事。
2018年6月にメドピアに入社し、経営企画部長としてM&A/提携、資金調達、IR、人事、広報などを管轄。
2019年9月オープンエイト入社。経理・財務・法務・人事・総務を管掌。