「引っ越しって何にいくらかかるの?」「引っ越しでローンを使ってもいい?」、この問いに、銀行員がズバリお答えします。
引っ越しにローンを使っても良いんです。引っ越しのローンを利用したことがない人、そもそも借金した経験がない人など、すべての人に分かりやすく、ローンを提供する側の銀行員が説明します。
文・加藤隆二(銀行員ライター)
地方銀行に30年間勤務する銀行員ライター。2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級、個人資産相談)、生保損保代理店資格、その他銀行業務検定資格複数保有。事業資金から、住宅ローンやカードローンなど借入全般の相談を数多く対応。返済が困難なお客様の、いろいろな相談を聞き、一緒に考え解決してきた一方、倒産、自己破産や一家離散、あるいはもっと不幸なケースにも関わって、お金の素晴らしさと怖さを、イヤと言うほど知っています。こうした経験を活かし、読者の役に立つ文章を書いていきたいと思います。
引っ越し費用は何にいくらかかるの?
まず引っ越しには何に(費用の種類)、いくら(平均額)を調べてみました。
<主な引っ越し費用>
- 引っ越し輸送費
- 新居に必要なお金
- その他の出費(業者へのお礼、近所への挨拶、転居挨拶状など)
1. 引っ越し輸送費
転居に必要なお金は、いわゆる引っ越し代(ここでは引っ越し輸送費とします)とそれ以外の費用です。なかでも、もっとも大きいのが引っ越し輸送費です。
近畿運輸局公式サイトによると、4トン車1台、2トン車1台を使って平日日中に大阪から京都に引っ越した場合、輸送費が14万9,500円、大阪から東京に引っ越した場合で30万4,500円となっています。このサイトには家族構成に関する記載はありませんが、作業員5人という前提ですから、単身者というよりは家族連れの引っ越しだと考えられます。
引っ越し輸送費は基準が上記水準で、これに付帯サービスが加わります。代表的なものを「近畿運輸局HP/引っ越し料金の仕組み」から引用します。
・冷暖房取り付け:1万~1万5,000円
・冷暖房取り外し:5,000~1万円
・オーディオ設置:3,000~5,000円
・家具処分:3,000~3万円
・ハウスクリーニング:7,000~5万8,000円
転居するときに必要なこうした手間とお金を、引っ越し輸送の付帯サービスとして一緒に支払うものです。
2.新居に必要なお金とは?
新居に必要なお金は下記のとおりです。この項は金額の平均値がつかみにくいので、費用の説明のみにします。
<新居に必要なお金 主な費用>
・初期費用(敷金、礼金、仲介手数料など)
・光熱機器の開通費用(電気、ガス、水道、固定電話の移設など)
・新聞、牛乳、生協などの新規申し込み
・インターネットの開通費(新規契約や移設費用)
・子供の学校関連費、塾の費用など
・駐車場費用(備え付けがない場合)
3.その他の出費
こちらも人により違いますが、考えるといくつも出てきます。
<その他の出費>
・近所への挨拶(入退去)
・引っ越しの挨拶状(入退去)
・ブログの閉鎖や新ブログ開設(必要な場合)
・習い事、サークルに関する費用(会費や精算など)
このように、挙げ始めるときりがありません。
引っ越し費用の総額は?
ここまで1.転居に必要なお金(引っ越し輸送費)、2.新居に必要なお金、3.その他の出費と説明しました。総計がいくらかは人により違いますが、引っ越し輸送費だけでも30万円前後なので、その他の費用を合計すると50万円以上の出費が必要になると考えるべきでしょう。
引っ越し費用をローンで賢く準備する方法
1つの仮定ではありますが、引っ越し費用に50万円が必要になったあなたは、どうやってその費用を準備しますか? 銀行員はこう考えます。引っ越し費用はローンで借りてもいいのです。必要な金額を必要な期間だけ借りて、落ち着いたら返せばいいのです。
引っ越しに対応したローンについて内容、融資スピード、メリット・デメリットという3点で解説します。
<引っ越しに使えるローン>
- 目的限定ローンやフリーローン
- カードローン(銀行系、消費者金融系)
1.目的限定ローン、フリーローンとは?
目的限定ローンとフリーローンは貸付形式が証書貸付(住宅ローンやマイカーローンと同じ)で共通するので、ここでは一緒に説明します。
目的限定ローンとは「引っ越しのローン」など、その目的を限定して銀行などから借りるもので、例えばマイカーローンがその代表格です。
フリーローンは目的限定ローンとカードローンの中間に位置します。カードローンのような当座貸越(限度内なら借り入れと返済が自由)ではなく、マイカーローンや目的型ローンと同じ証書貸付形式で、一度借りたら返していくだけ。しかし、使いみちはカードローンと同じように原則自由で、もちろん引っ越し費用にも使えます。
目的型ローンやフリーローンの融資スピード
目的型ローンは銀行が中心で、融資スピードも銀行ローンでは早く、平均で1週間(銀行営業日で5日)程度です。これはフリーローンも同じです。
目的限定ローンやフリーローンのメリット、デメリット
<メリット>金利が低い・借金がかさまない
金利は、目的型ローンがもっとも低水準で、次がフリーローンとなっています。例えば、目的型ローンですと金利は4%~10%程度の水準ですが、フリーローンですと6%~14%程度となっています。銀行やローン商品、また申し込む人により金利は変わりますので、必ずご自身で確認してください。
借りるだけ、あとは返すだけで、カードローンのように反復利用できないので、借金がかさむ心配がないのもメリットです。この点は融資する銀行も一緒で、融資したあと残高が定期的に減っていくので回収不能になるリスクが低く、カードローンより金利が低い要因になっています。
<デメリット>煩わしい手続きがある・来店が必要な場合も
申し込みのときに見積書を提出し、借りたあとで今度は領収書を提出しなければいけないローンもあります。また申し込みや契約のとき、銀行に来店が必要な場合もあります。
カードローンのように最初から最後までネット完結とはいかないところが煩わしいと感じる人もいます。
2.カードローン(銀行系、消費者金融系)とは?
カードローンも引っ越し費用でよく使われます。初めての借り入れが引っ越し費用でカードローンを利用、という人も結構いるようです。銀行系と消費者金融系に分かれますが、基本事項は共通しています。
カードローンとは、限度(貸越極度とも)内なら借り入れと返済が自由な当座貸越という融資形式です。借り入れ専用のローンカードを発行することからカードローンと呼ばれますが、最近ではカードレス、インターネットやスマートフォンで借り入れと返済ができるようになり、カードローンという名前本来の意味は薄れつつあります。
カードローン(銀行系、消費者金融系)の融資スピード
融資スピードは、消費者金融系では最短即日も可能。引っ越し前日の夕方に申し込みを完了しておけば、翌日の引っ越し当日に間に合う可能性もあります。
いっぽうの銀行系は、申し込み~融資までに1週間以上かかる場合もあります。銀行系を利用したくて、スピードだけを考えるなら目的型ローンやフリーローンのほうが早い場合もあります。
カードローン(銀行系、消費者金融系)のメリット、デメリット
金利は銀行系では低めです。ただし審査結果で金利は変わるので、一概に低いとも言い切れません。また同じ銀行系の目的限定ローンなどに比べると高金利なので、引っ越し費用以外に使わないなら目的限定ローンを利用したほうが賢明でしょう。
消費者金融系は総じて金利が高くなっています。これはスピード、利便性の裏返しともいえます。また銀行系、消費者金融系に共通して、反復利用できるので借金癖が付く恐れがあります。
引っ越し費用はメリット・デメリットを確認して賢くローン利用を!
ここまで引っ越しにかかる費用と相場を説明しました。自己都合や会社指示でも補助がない、あるいは一部だけの補助など、引っ越し費用は頭の痛い問題です。しかし、現在引っ越し費用を借りるのは普通のことになっています。
これまで借り入れ経験がなくて、引っ越し費用をきっかけに初めてローンを組む人などは不安もあるでしょう。しかしながら、必要なお金をローンで準備するのは悪いことではありません。
大事なのはローンの内容を知り、メリットやデメリットも理解したうえで、賢く引っ越し費用を準備することです。そして、最後に銀行員として、永遠に変わらない真理の言葉を贈ります。ご利用は計画的に。
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