日銀の神山一成決済機構局長は15日、日本経済新聞のインタビューに対し、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)の実証実験について「2021年度中に第2段階に移行したい」との考えを明らかにした。
日銀は3段階の実験を計画しており、21年春にも第1段階を始める予定。先行する中国や米国の動向を意識しつつ「相応のスピード感を持ちつつ段階的・計画的に進める」とした。
また第1段の実証実験について、「すでに準備作業に取りかかっている」と語った。
決済機構局の職員10人程度とIT企業のエンジニアが参加し、システム上での金のやりとりの正確性を検証する。
第2段階では、保有金額への上限や通信できない環境など、複雑な条件下での検証を行うとのこと。
第3段階は、企業や消費者が参加する運用を見据えた「本格的な実験」を予定しているという。
同氏は、一部地域での実験を進めている中国の動向などを考慮し「地域を限定してやるのが1つの選択肢だ」との考えを示した。
CBDCの開発状況に関しては中国がデジタル人民元(DCEP)の実証実験を進め、大きくリードしている状況だ。
世界に先駆けて取り組む中国に対し、神山氏は「先行者優位」になる可能性が高いとの見解を示している。
さらに一部の有識者の間では、デジタル人民元が世界に及ぼすリスクを危惧する声が上がっている。神山氏は「それぞれの国が独自の決済システムの改善に注力している限り、1つのデジタル通貨だけでは世界を支配することはできない」と指摘した。
国内でもCBDCの発行に向けた機運が高まっているものの、現状として現金での決済比率が高く、不正対策などの諸問題への検討も不透明な点が多い。
神山氏は「将来、今までのように現金の利便性が高いということではなくなるかもしれないという認識は非常に強く持っている」と語った。
その上で、CDBC発行についての判断は最終的には国民の十分な理解を得られるどうかが重要になるとの認識を示した。
日銀や米欧の中銀と国際決済銀行(BIS)は9日、CBDCに関する基本的な原則と特性を公表している。
日米欧でまとめたこれらの成果を踏まえ、神山氏は「デジタル通貨のあり方を主要国にとどまらず各国中銀ともしっかり議論していきたい」と話した。(提供:月刊暗号資産)