米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は19日、国際通貨基金(IMF)が開催した国際送金に関するディスカッションで、「1番に中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)を発行するという早さよりも、正しく対応して発行されるべき」と発言した。
パウエル議長が指す正しさとは、CBDCが持つメリットだけでなく、もっとリスクを考慮し、影響を十分見極めた上で発行すべきという考えのようだ。
考慮すべきリスクとしては、「CBDCに対するサイバー攻撃や詐欺」「金融政策とその安定性への影響」「プライバシーやセキュリティ保護」の3つを挙げた。
加えて、米国での現金使用率の高さにも触れ、これら諸問題に対処する必要があるとし、現状では米国でのCBDC発行に慎重な姿勢を見せた格好だ。
しかし同氏はCBDCのメリットについても言及し、決済面の改善を行うことができ、コストを抑えた上でより速く行うことができる可能性があると指摘した。
さらに、CBDCの発行に向けては官民一体となって進めていく必要があるとの認識を示し、特に技術面での協力関係に期待を寄せた。
また、パウエル議長は日銀や欧中銀(ECB)、国際決済銀行(BIS)などと進めているCBDCの共同研究にも触れ、「この連携は重要なもので、生産性が非常に高い」と評価している。
CBDCの発行に関する動きは急速的に広がり、デジタル人民元(CDEP)の開発を大幅に進めている中国を警戒した縮図が出来上がろうとしている。
中国ではすでに深センなどの大都市で大規模な実証実験が行われており、先日市民に対しデジタル人民元を配布する動きがあったばかりだ。
実証実験で配布されたデジタル人民元が非常に高い使用率を記録したことから、中国国内でも注目および期待度が高いことがうかがえる。
日本においては日銀が来年の早い段階でCBDCの概念実証フェーズ1に移行するとしており、諸外国においても発行に向けた検討および実証実験を行う流れが生まれているが、早さでは中国のリードを挽回することは厳しい状況だ。(提供:月刊暗号資産)