両親が亡くなるなどして遺産相続が発生した場合、自分で使用する予定のない品物を売却、あるいは処分することを「遺品整理」と言います。しかし、遺品整理は品物を売却した際に、その額によっては課税対象となるケースもあります。

本稿では、遺品整理における課税の仕組みや進め方について解説しますので、ぜひお役立てください。

遺品整理とは?

遺品
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

遺品整理とは、前述の通り亡くなった人物の残した所有物や家財などを整理することを指し、家財処分や遺品処分とも呼ばれます。

遺品整理で処分するのは個人が残した資産の中でも動産と呼ばれるもので、宝石や美術品など価値のあるものは売却し、値段のつかないものは処分することになります。

特に「テーブルや椅子などの家具」「テレビや洗濯機などの家電」「衣類」などは「生活用動産」と呼ばれ、基本的に非課税で、売却をして金銭を受け取った場合でも課税の対象とはならない場合もあります。

遺品整理が発生するタイミングと手続き方法

遺品整理を行うタイミングに関しては必ずしも人が亡くなった直後に行う必要はなく、特に法的な決まりは設けられていません。一般的に遺品整理を行うタイミングとしては以下の通りです。

  • 四十九日の後
  • 葬儀の直後
  • 各種手続きの後

基本的に、遺品整理のタイミングについては厳格な取り決めがある訳ではありませんが、個人が住んでいたのが賃貸であった場合、早急に遺品整理を行う必要が生じるケースもあります。

遺品整理を行う際には、遺言書などを元に自分が相続する品物について確認し「形見として残しておく」「売却や捨てるなどして処分する」「寄付する」などの手段で、それぞれ整理していきます。

遺品の売却で課税対象となる品物

前述の通り遺品整理においては、普通の生活用動産に関しては課税がなされません。遺品整理で課税対象となりやすい品物は以下のようになります。

  • 高級な生活用動産
  • 宝石骨董品などの娯楽品
  • 株などの証券

生活用動産に対して課せられる税金に関して、国税庁は以下のように定めています。

『家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。しかし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個又は1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は課税されます。』

そして、上記の基準に該当する品物を遺品整理で売却した際、その金額が30万円を超えると課税対象となります。課税額に関しては、遺品を売却した際の総額ではなく、品物それぞれの売却額をもとに計算されます。

  • 指輪を売却した際の金額が25万円…非課税
  • 骨董品を売却した際の金額が40万円…課税対象
  • 高級家具2点がそれぞれ各10万円、計20万円で売れた…非課税

また、遺品の中でも、以下のようないわゆる「地金」と呼ばれる加工前の貴金属は、売却額が30万円以内でも課税の対象となります。

  • 金地金
  • 金の延べ棒
  • 金貨

ただし、金の指輪や金のネックレスなどは宝飾品として扱われ、上記の課税の対象とはならないケースもあり、扱いが異なります。

遺品整理の特別控除額とは?

遺品整理の売却時に課せられる税金については、「特別控除額」が設けられています。遺品整理において、税金の支払いが免除される控除額の上限は50万円と設定されており、これは良い品を売却した際の合計額から差し引かれます。

例えば、遺品の中にある美術品と宝飾品が、それぞれ40万円と50万円で売れたとします。

前述のように、遺品整理で売却した金額は30万円まではそれぐらいの品物ごとに非課税となりますので、課税される金額はそれぞれ10万円と20万円になります

<売却額>

  • 美術品…40万円
  • 宝飾品…50万円

<課税額>

  • 美術品…10万円
  • 宝飾品…20万円

上記のケースの場合、課税対象は計30万円ということになり、税率20%であれば「30万円×0.2=6万円」が課税の対象となります。しかしここに特別控除が適用されれば、50万円までは非課税として扱われますので、納税する金額は0円ということになります。

上記のように遺品整理における特別控除というのは、最終的な課税額に対し50万円までは納税を免除するというシステムです。

株式などの証券に関しても相続したのみでは相続税は発生せず、売却することで初めて課税対象となるのですが、控除額の計算方法が異なり「3,000万円+600万円×法的相続人の人数」までの金額が課税を免除されます。

遺品整理を進める上で大切なポイント

以下の項目より、遺品整理を行うにあたり注意すべき事柄について解説します。遺品整理で検討すべきポイントは、大きく分けて3種類あります。

相続するまで遺品を処分しない

課税対象になるかどうかに関わらず、相続前の遺品は法的には自分の所有物としては扱われません。特に、遺言書などで被相続人が事前に財産の分配方法を決めていなかった場合は、相続権がある者たちの間で「遺産分割協議」を行い財産の取り分を決める必要があります。

また、自分が相続することが確定している資産であったとしても、遺品の処分方法については慎重に進めましょう。

例えば、生前の被相続人の思い出の品物などを処分しようとすると、親族間でのトラブルに発展するケースもありますので、事前によく話し合いをして遺産整理の方法について事前によく話し合っておく必要があります。

相続放棄を検討する

相続放棄は、自分が相続することになる財産全ての継承権を手放すことです。当然、遺品を売却することもできなくなりますが、負債などのマイナスの資産も相続せずに済むメリットがあります。

相続放棄を決めることができる期間は、原則として「被相続人が亡くなってから3ヶ月以内」となっていますので、相続財産については早いタイミングで把握しておく方が賢明です。

しかしながら、相続放棄を行ったとしても、被相続人が所有していた賃貸や遺品を次の管理者が見つかるまで管理する義務が残ることが、民法940条で定められています。

家庭裁判所に申し立てを行えば、相続財産管理人を選定し、賃貸などの管理を一任することができますが、その場合は20〜100万円の予納金を納めなければなりません。

場合によっては業者に遺品整理の依頼をする

遺品整理では「遺品の点数が多過ぎる」「個人の住んでいた物件に対し特殊清掃が必要」などの理由から、業者に対し依頼するケースも考えられます。

業者に依頼すれば「遺品整理をスムーズに終わらすことができる」「遺品をそのまま買い取ってくれるサービスがある」「遺品捜索も行ってくれる」などのメリットがあります。

また、遺品を売却する場合も、いきなり売るのではなく、鑑定人に査定を依頼する方法もあります。専門家の立場から売却時の適性価格をアドバイスしてもらっておくと、売却時に相場よりも低い値段で買い叩かれるリスクを減らすことが可能です。

まとめ

遺品整理は、ただ遺品を捨てるのではなく売却してお金に変えることも可能です。売却した遺品も、30万円は課税の対象にならず、総額50万円までは特別控除が適用されます。

個人が賃貸に住んでいた場合、遺品整理をスピーディに行うことを求められる場面も出てきますが、遺品の中には思い出の品もあると思われますので、後悔のない遺品整理を行えるよう、早い段階から備えておきましょう。(提供:YANUSY

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