概要:株は大幅上昇、為替はドル安が進む

金融緩和
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11月に世界各国(1)で実施された金融政策および、株価・為替の動きは以下の通り。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

【11月の株価・対ドル為替レートの動き】
・大統領選による不透明感の解消、ワクチン開発期待などにより大幅に上昇した(図表1)
・ワクチン開発期待でのリスクオン姿勢の高まりなどを背景にドル安が進んだ(図表2)

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

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(1)本稿では金融政策はG20について確認する。また、株価・為替についてはMSCI ACWIの指数を構成する49か国・地域について確認する。中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除く。また、香港等の地域も含めて「国」と記載する。

金融政策:緩和策を拡充する国が目立つ、トルコは利上げと透明性向上へ

11月の各国金融政策では、金融緩和策を拡充する国が目立った。

まず、英国(イングランド銀行)およびスウェーデン(リクスバンク)で資産購入枠を増額、いずれの国でも2021年末まで量的緩和を実施することを決定している。ECBも12月の政策理事会で追加緩和を実施する見通しであるが、それに先立って追加緩和を決定した。

オーストラリア準備銀行では政策金利をさらに引き下げた。具体的には短期のキャッシュレート(無担保翌日物金利)および、3年物国債の金利目標(イールドカーブ目標)をいずれも0.25%から0.10%まで引き下げることを決定している。また、イールドカーブ目標の達成のために(受動的に)3年物国債を購入することに加えて、積極的に残存年数が5-10年程度の国債を購入する量的緩和策(1000億豪ドル規模で6か月間)を導入し、これまでより踏み込んだ決定も行っている。新興国では、インドネシアも政策金利を0.25%引き下げ、最低水準の3.75%とした。

いずれの国でも、新型コロナウイルスが収束していない状況下で、金融緩和策を継続・拡充することによる景気下支えを狙っていると見られる。

一方、トルコおよびアルゼンチンでは通貨安が進んでいることを背景に政策金利が引き上げられた。トルコでは11月初めにエルドアン大統領がウイサル中銀総裁を大統領令で解任しており、後任のアーバル新総裁体制での会合となった。トルコは政策金利(1週間物レポ金利)を10.25%から15.0%まで数値上は大幅に引き上げたが、これまで補助金利(後期流動性ファシリティ金利)を操作することで市場金利を誘導しており、この補助金利はこれまで14.75%に設定されていたことから、実質的な利上げ幅は0.25%程度にとどまると考えられる。一方、今回の会合では主要な資金供給策を(補助金利を用いない)1週間物のレポにすることを合わせて決定しており、アーバル総裁の体制下では、金融政策運営の透明性が向上することも期待される。

金融市場:株は大幅上昇、ドルは全面安

MSCI ACWIにおける月間騰落率を見ると、全体では前月比+12.2%、先進国が前月比+12.7%、新興国が前月比+9.2%となり、先進国・新興国ともに10月までは軟調だったが、11月に入ると大幅に上昇、全体の指数では昨年末と比べても10%近く高い水準まで上昇した。大統領選挙による不透明感が解消されたことに加え、新型コロナウイルスに対する有効性の高いワクチンが開発されたとの期待によって株価指数が押し上げられたと見られる(前掲図表1)。

国別の株価の動きを見ると、今月は対象国49か国すべての株価指数が前月比で上昇している(図表3)。前年比でも、15か国が年末の水準を上回った。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

いずれの国でもワクチン開発によるウイルス収束への期待が高まっていると見られるが、11月は特にこれまで何兆だった欧州(ギリシャ、スペイン、イタリア、オーストリアなど)での株価上昇が目立つ形となった(図表4)。一方で、これまで好調だった中国については、11月は伸び悩んだ。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

通貨の騰落率を見ると、対ドルの27カ国の貿易ウエイトで加重平均した実効為替レート(Narrow)が前月比+1.4%、60カ国の貿易ウエイトで加重平均した実効為替レート(Broad)が前月比2.1%となり、10月に続きドル安が進行した(2)(前掲図表2)。

11月は多くの通貨に対してドル全となった。MSCI ACWIの構成通貨別に見ると、35通貨が対ドルで上昇(ドル安方向)しており、ドルに対して下落が進んだ通貨はアルゼンチンペソのみとなった(3)(図表5)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

通貨別に見ると(図表6)、今年大きく下落していた通貨(ブラジルレアル、ロシアルーブル、トルコリラ)も11月は上昇している。ワクチン開発期待によるリスクオン姿勢の高まりや新興国への資金流入観測のほか、トルコリラでは利上げ、メキシコペソは利下げ見送といった金融政策も自国通貨高の材料になったと見られる。

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(2)名目実効為替レートは10月24日の前月末比で算出。 (3)図表5では新興国通貨の3通貨が前月比対ドルで下落となっているが、アルゼンチンペソを除くとカタールリヤルとサウジアラビアリヤルでこれらはドルペッグ通貨であり、実質的には変動していないと言える(図表6も参照)。

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高山武士(たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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