auカブコム証券は、auと三菱UFJグループによるネット証券会社である。さまざまな割引をはじめ、安い手数料や高性能なツールなどが用意されていることが特徴だ。ここでは、これから証券口座の開設を考えている投資初心者に向けて、auカブコム証券を利用するメリット、注意点などを解説しよう。
1,auカブコム証券の3つの特徴は?
auカブコム証券の主な特徴は、以下の3点が挙げられる。
特徴1,システム開発に注力している
auカブコム証券の特徴として、各種ツールなどシステム開発力の強みが挙げられる。勘定系を含めた全ての取引システムを自社で開発・運営している(くりっく365を除く)。
システム基盤を「営業マンそのもの」と捉えており、他社との最大の差別化要因として重視。例えば、取引ツールの「kabuステーション」についてネットの投稿を見ると、高機能でカスタマイズもしやすいなど高く評価する声も多数寄せられている。
その他にも最大で180銘柄を登録して株価を一覧で表示できる「カブボード」、200以上の詳細な条件で銘柄の絞り込みができる「カブナビ」などを用意。各種分析ツールが充実している。
特徴2,財務基盤の強い
auカブコム証券は、KDDIグループと三菱UFJグループ(MUFGグループ)が共同出資するネット証券会社だ。通信・金融の大手企業によるサービスであり、財務基盤は安定性がある。設立は1999年であり、ネット黎明期からノウハウを積み重ねてきた実績も備える。
日本格付研究所では「A+」と評価され、見通しも安定的とされている(2020年10月23日時点)。財務上の数字やネット証券会社としての実績が高く評価されていることが分かる。
特徴3,カスタマーサポートが充実している
投資の初心者をサポートするサービスも多数用意されているのも同社の特徴だ。投資を一から学べる「投資まるわかり入門ガイド」は、投資商品ごとに基礎的な情報がまとまっており、まったく経験のない人でも分かりやすい。
「お取引活用ガイド」は、取引ツールの画面操作から一歩進んだ投資テクニックまで、幅広い領域をカバー。現物・信用取引の方法、銘柄の選び方など多くのマニュアルが用意されている。
パソコン操作が苦手な人でもオペレーターがパソコン画面を遠隔操作しながら、電話でレクチャーしてくれるオンラインサービスも提供されている。
この他にもオンラインセミナー、対面セミナー、動画コンテンツなども用意され、情報提供量が多いのもメリットだ。投資の上級者だけでなく、初心者にも優しいネット証券会社といえる。
2,auカブコム証券の基本情報
主に上記のような特徴のあるauカブコム証券だが、会社情報や取扱商品などの基本スペックを、以下に整理しておこう。
auカブコム証券のサービス基本情報一覧(2020年12月1日現在)
会社情報 | 会社名 | auカブコム証券株式会社 |
設立 | 1999年11月19日 | |
資本金 | 71億9,600万円 | |
自己資本規制比率 | 353.4% (2020年9月末) | |
口座開設数 | 120万口座(2020年10月) | |
口座 | 口座開設手数料 | 無料 |
口座管理手数料 | 無料 | |
入出金・振替 | 入金方法 | 日本円 |
リアルタイム口座振替 | 無料(会社負担) | |
出金日数 | 即日 | |
出金手数料 | 110円 ただし、指定預貯金口座が 以下の場合は無料 ・三菱UFJ銀行 ・池田泉州銀行 ・中京銀行 ・イオン銀行 ・auじぶん銀行 |
|
リアルタイム入金 提携金融機関数 |
4の金融機関 | |
ツール・サービス | PC版取引ツール | ・kabuステーション |
スマートフォン版 取引ツール |
・スマートフォン専用サイト (iPhone・Android) |
|
現物株注文方法 | ・成行 ・指値 |
|
執行条件付き注文 | ・寄付成行 ・引け成行 ・寄付指値 ・引け指値 ・不出来引け成行 ・IOC成行 ・IOC指値 |
|
自動売買発注方式 | ・逆指値注文 ・W指値注文 ・±指値注文 ・リレー注文 ・Uターン注文 ・トレーリングストップ注文 ・時間指定注文 |
|
取扱商品 | 株式 | ・現物株取引 ・制度信用取引 ・一般信用取引 ・IPO ・単元未満株(プチ株) |
先物・オプション | ・日経225先物 ・TOPIX先物 ・日経平均VI先物 ・日経225mini先物 ・ミニTOPIX先物 ・JPX日経インデックス400先物 ・東証REIT指数先物 ・TOPIX Core30先物 ・東証マザーズ指数先物 ・NYダウ先物 ・日経225オプション |
|
外国株 | ― | |
その他 | ・FX ・CFD ・投資信託 |
|
株式取扱銘柄 | ・東京証券取引所上場株式 (マザーズ、JASDAQ、外国株を含む) ・名古屋証券取引所上場株式 (セントレックスを含む) ・福岡証券取引所上場株式 (Qボードを含む) ・札幌証券取引所上場株式 (アンビシャスを含む) |
3,auカブコム証券の手数料は?割引が豊富
auカブコム証券は口座開設手数料・維持費が無料で、気軽に口座開設ができる。ここからは各種手数料を紹介しよう。
現物株取引の手数料
ネットでの現物株式取引の手数料は、下記の通りだ。
約定代金 | 手数料(税込) |
10万円以下 | 99円 |
20万円以下 | 198円 |
50万円以下 | 275円 |
50万円超 | 約定金額×0.099%+99円 (上限4,059円) |
50万円までの小口取引の手数料に関してはリーズナブルな水準といえる。少額から始めることが多い初心者にも魅力的だ。
単元未満株取引の手数料
auカブコム証券では、プチ株という単元未満株取引サービスも用意されている。ネットでの取引では約定代金の0.5%、最低手数料が52円(税込)という設定となる。
5つの割引サービス
さらにauカブコム証券では、下記の通り手数料の割引オプションも充実している。
割引種類 | 内容 |
シニア割引 | 50歳以上は、現物株式の売買手数料が2%~4%割引 |
NISA割 | NISA口座、つみたてNISA、ジュニアNISAの口座を auカブコム証券に保有する人を対象に、現物株式の 売買手数料を最大5%割引 |
株主推進割引 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ、KDDI、 中京銀行、ジャックス、池田泉州HDの株式買付手数料が 最大10%割引 |
auで株式割 | auユーザーがau IDを登録すると、 現物株式の売買手数料が1%割引 |
KDDI株保有割 | KDDI株式をauカブコム証券で保有すると、 現物株式取引手数料が保有株数に応じて最大15%割引 |
特にNISAやつみたてNISA口座で取引するだけで割引になることは、初心者にはうれしい。
またKDDI株を保有することで、最大15%もの割引になる。auカブコム証券で口座開設した際は、KDDI株を購入するタイミングをこまめにチェックしておきたい。
4,auカブコム証券の5つのメリット
これまでauカブコム証券の基本情報や手数料について説明してきたが、実際に口座を開設した場合にどのようなメリットを享受できるのか見ていこう。
メリット1, 投資関連の情報提供が充実している
auカブコム証券は、MUFGグループが参画していることもあり、金融関連の情報提供に強みがある。「マーケット情報」では、会社四季報の東洋経済新報社やauカブコム証券のオリジナル情報を組み合わせ、投資家目線での情報を提供している。
「投資情報室」ではマーケットアナリスト、投資ストラテジストによる解説を見ることが可能だ。投資手法から金融最新情報までカバーし、分かりやすく解説している。auカブコム証券のストラテジストは、ラジオNIKKEIの「コチカブ」、日本テレビの「日テレNEWS24」といった番組に出演している。これらの番組で情報をチェックするのも良いだろう。
会場セミナーやオンラインセミナー、個人投資家向け企業IRセミナーも開催されており、情報を入手できる機会が豊富に用意されている。
メリット2,高性能なツールを利用できる
auカブコム証券の大きな特徴として、ほぼ全てのシステムを自社開発している点は先ほど紹介した通りである。システムに関する人材・ノウハウが豊富であり、提供されているツールも高性能だ。
高性能というと、使いこなせるか心配な人もいるだろう。しかしツールを活用するためのマニュアル資料やオンラインサポートサービスなど、初心者をサポートする体制も整っている。
メリット3,単元未満株の取引ができる
auカブコム証券は、単元未満株(プチ株)にも対応している。株式投資は通常100株の単元株での取引が求められるが、単元未満株は1株から売買が可能だ。
参考までにKDDI<9433>を購入するために必要な資金を見てみよう。2020年12月9日の終値は2,935円となる。
購入株式数 | 必要資金 |
1株(単元未満株) | 2,935円 |
100株(単元株) | 29万3,500円 |
まとまった資金がない人にとって単元未満株は便利な仕組みだ。また、初心者はこの制度を利用すれば、各種ツールに習熟したり、取引に慣れたりするなど少額で経験を積むことができる。
メリット4,セキュリティや障害対策に優れている
auカブコム証券では、福岡県にシステムのバックアップ拠点である福岡システムセンターを設け、万が一の事態に備えている。通常サイトとは別の障害災害時用の専用サイトが存在し、システム障害や災害に遭った際に利用可能だ。
障害災害時用のサイトは、あらかじめブックマーク(お気に入りに追加)をしておくことが可能なので、忘れずに登録しておこう。
メリット5,自動売買を利用できる
auカブコム証券のコアコンピタンスの1つが「リスク管理追求型サービス」。逆指値をはじめとして、リスク管理の重要性を訴えてきたネット証券会社でもある。
そこから生まれたのが「自動売買」だ。自動売買とはある条件を事前に設定し、条件を満たした場合に売買する仕組みのことである。
auカブコム証券は逆指値、W指値、±指値といった注文方法で特許を取得するなど、自動売買に関するパイオニア。7種類の自動売買の注文方式に対応しており、主要なネット証券会社の中でNo.1となっている。
また、自動売買は現物取引だけでなく、信用取引や先物・オプション取引でも利用できる。
5,auカブコム証券の3つのデメリット
さまざまなメリットがあるauカブコム証券だが、口座開設にあたっては、デメリットもしっかりと把握しておきたい。
デメリット1,外国株の取り扱いはない
世界をけん引する米国株や、これから日本以上の経済成長が期待される新興国株式に投資をしたい人もいるだろう。しかし、auカブコム証券では外国株式を取り扱っていない。
国内株の取引に慣れてきて、米国株や中国株の取引をしたいと考えた場合は、別の証券会社で口座開設をする必要がある。
デメリット2,IPOの申し込みは2回必要で、当選後のキャンセルはできない
IPOとは、未上場の企業が新規で株式を発行し、投資家へ証券会社を経由して配分することである。投資した企業が大きく成長すれば、株価上昇によって大きな利益を得られる可能性があるのがIPO投資の魅力だ。
IPO投資は誰でもできるわけではなく、抽選に申し込んで当たる必要がある。
他社ではIPOの申し込みは1回だけで済むところもあるが、auカブコム証券は「需要申告」「最終申し込み」と2回の申し込みが求められる。手続きがやや煩雑になるので注意が必要だ。
また抽選が行われるのは最終申し込み後となるので、当選した後のキャンセルはできない。
デメリット3,約定金額50万円以上の取引手数料は高い
auカブコム証券は、現物取引の約定金額が50万円以上の場合、手数料は約定金額×0.099%+99円(上限4,059円)だ。例えば、約定金額が100万円の場合、1,089円(税込)となる。
この金額を他社と比較すると以下の通りだ。
・SBI証券:535円(スタンダードプラン)
・楽天証券:535円(超割コース)
・DMM株:374円
・GMOクリック証券:479円(1約定ごとプラン)
※全て約定金額が100万円の場合(全て税込)
auカブコム証券の手数料はやや高いといえるだろう。1回あたりの約定金額は高額の取引が多くなりそうな場合、他社の口座開設も視野に入れておきたいところだ。
6,auカブコム証券はどんな人におすすめ?
これまで解説した内容から、auカブコム証券は以下のような人が利用するのに向いている。
・高性能な取引ツール・分析ツールを利用したい人
・単元未満株(プチ株)など少額取引をしたい人
・セキュリティや障害対策など安全性を重視する人
自身のニーズと合致すると感じたら、auカブコム証券の口座開設を検討してみてはいかがだろうか。
監修者・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。
【関連記事 MONEY TIMES】
【初心者向け】ネット証券おすすめランキング
日本の証券会社ランキングTOP10 売上高1位は?
ネット証券会社比較 手数料の安い4社
楽天証券のメリットとデメリット SBI証券と比較
ネット証券会社のシェアランキング1位はSBI証券