作業服・作業用品チェーン店のワークマンは、同業他社と異なるマーケティングで右肩上がりに業績を伸ばす企業です。近年では作業服・作業用品の枠を超え、一般向けのカジュアル用品にも力を入れた結果、幅広い属性に存在感を示す企業に成長しました。ワークマンがことごとく成功させている新戦術の立役者とされているのが、同社専務取締役の土屋哲雄氏です。合理的かつ科学的な市場探索で「高機能・低価格」という4000億円の新しい市場を生み出し、ソフトバンクグループの孫正義氏やユニクロの柳井正氏も称賛しているといいます。

ワークマン式「しない経営」の著者で専務取締役の土屋氏

ワークマン,しない経営
(画像=think-b/stock.adobe.com)

ワークマン入社以前は、一流商社に30年間勤め、いくつもの製品を開発しヒット商品を生み出していたという土屋氏。2020年10月には「ワークマン式『しない経営』」をダイヤモンド社より出版し、その内容が話題となりました。

商社時代、常に時間に追われていたという土屋氏は、ワークマンに入社後の2年間、会社を改革するための準備に注力したといいます。

準備期間中、土屋氏は会社のデータを読み取るとともに、社員にヒアリングを行いました。その結果、ワークマンでは社員にストレスをかけない働き方を採用したといいます。それが短期目標やノルマ、期限を設けない、残業しない、頑張らないという「しない経営」です。

OECD(経済協力開発機構)加盟国で21位の日本

先進37ヵ国で構成されるOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、日本の労働生産性は21位(労働生産性の国際比較 2020)。かつては6位につけたこともある日本ですが、バブル崩壊後から徐々に低下し、2017年から3年連続で21位をキープしています。

日本の労働生産性の低さはどこから来ているのでしょうか。働きすぎのイメージが強い日本のビジネスパーソン。パートタイム労働者を除く一般労働者の総労働時間は1990年代とほとんど変わらず2,000時間を超えており、欧米諸国を大きく上回っています。さらに、前述の通り日本の労働生産性は他の先進国に比べて低い傾向にあることから、「生産性が低い状態で長時間働いている」のが日本の現状といえるでしょう。

長時間労働の是正等による生産性向上に早くから取り組んでいたワークマン

政府が進めている働き方改革は、このような日本の「長時間労働×低生産性」を改善し生産性を向上させる狙いがあります。

一人当たりの労働生産性が日本を大きく上回るドイツの総労働時間は、日本の約8割に相当する1,300時間です。頑張っているのに業績が上がらない、頑張っているのに給与が上がらない、ならばさらに頑張ろうと考えるのは間違いといわざるを得ません。

「しない経営」で役員も社員も余分なことを捨てて、重要な業務に注力した結果が今のワークマンの業績につながっているようです。

ワークマンは具体的に何を「しない」のか?

最後に、ワークマンが実践する「しない経営」の内容をご紹介します。

・短期目標、ノルマ、期限を設けない
・残業しない
・他社と競争しない
・値引きをしない
・顧客管理をしない
・取引先を変えない
・対面販売をしない
・レジを締めない
・社内行事をしない
・会議は極力しない
・頑張らない

これ以外にも、いくつか「しない」と定められたことがあり、これを社員だけでなく役員も心がけているそうです。することを決めるのではなく、しないことを決める。他にはない考え方で成功を収めているワークマン、その快進撃はこれからも続いていきそうです。(提供:YANUSY

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