2020年12月下旬、中国最大のモバイル決済サービス「アリペイ」の親会社で、アリババ傘下のアント・グループに対して、中国人民銀行は事業を見直して決済サービス会社に戻ることを要請しました。なぜこのようなことが起こっているのでしょうか。アントのいく先に暗雲が広がり始めています。
アント・グループがピンチ?
アント・グループが行うはずだった新規株式公開(IPO)が延期されたのは、記憶に新しい2020年11月のことです。上海と香港の2つの取引所に上場の予定でしたが、当局によって突然延期を言い渡されてしまいました。
さらにはアリババ・グループを独占的行為の疑いで調査する、アント・グループに対しては抜本的な事業再編が必要だと指摘されるなど、政府に行く手を阻まれているような状態が続いています。
多額の資金調達の予定が白紙に
アント・グループは、上海と香港2つの証券取引所への上場で合計3兆6,000億円の資金を調達する予定でした。またこのIPOによって、アント・グループのサービスを国内だけでなく、海外でも充実させる計画を進めていました。
成功すればアント・グループのグローバル化が急速に進んだであろうIPOは、なぜ延期になったのでしょうか。人民銀行は「アントの企業統治が不健全で、当局の要請を軽視し同業他社を排除したこと」など、アントの問題点を延期決定の前日のアント幹部との会合で指摘したとしています。
さらに、規制当局はアントに対して与信、保険、資産運用などの金融業務における規制違反を正すこと、それには抜本的な事業再編が必要であると会見で語りました。これを受けて、アント側は規制要件を満たすよう努めると声明を発表しています。
IPOまで2週間を切った段階でジャック・マー氏が語った本音
アリババとアントの創業者、ジャック・マー氏は、中国金融40フォーラムにて「中国の金融はまだ若く成熟しておらず、健全な金融システムが欠如している」「改革が必要」とスピーチしています。
中国のフィンテック企業が急速に成長できたのは、フィンテックは従来の金融業に比べて自由な規制環境にあったからです。しかし、最近ではさまざまな規制が設けられ、既存の金融システムと同様の規制が敷かれています。
アント側の最悪のシナリオは、アント・グループの事業が分割され、IPOがこのまま中止に追い込まれることです。アントが分割されることになれば、出資者たちも黙ってはいないでしょう。規制の増加に資金の減少となれば、事業拡大どころか縮小を余儀なくされる可能性もあります。
中国を代表するフィンテック企業も未来は暗い?
延期されているIPOがいつ実現するのかは依然不透明なばかりか、中止の可能性も浮かび上がっている現在、アント・グループの今後は前途多難な道のりとなりそうです。(提供:YANUSY)
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