本記事は、野村絵理奈氏の著書『オンラインで伝える力』(ポプラ社)の中から一部を抜粋・編集しています

オンラインではテンション3倍を心がける

間取り
(画像=PIXTA)

ごく普通に話をしているつもりなのに、相手に何度も聞き返されてしまうといった悩みをよく聞きます。

このような悩みは、対面に比べて音声も聞き取りにくくなるというオンラインにおいては、さらに顕著になります。

つまりオンラインの場合、相手の立場に立ち、聞き取りやすさに配慮するなら、対面で話すとき以上にクリアに発音する必要があるのです。

ポイントは、対面の時よりも、口を大きく開けてゆっくり丁寧に発音することです。

「ボソボソ、モゴモゴ話す」という言葉があるように、口の動きが小さいと、音が口の中にこもってしまい聞き取りにくい発音になります。また、口の開きは、母音を決定するため、正しい口の形で発音しないと、違った音に聞こえたり、メリハリのない発音になってしまいます。反対に、口を大きく開けて発音すると、口の中に音がこもらずしっかりと外に音が出ていくため、聞き取りやすくメリハリがつくだけでなく、明るい印象の話し方になります。また、オンラインでは複数の相手に向かって話すことも多くなるため、一度で聞き取れるスピードで丁寧に話すことを心がけることも大切です。

次に声の出し方ですが、高すぎる声はマイクを通すとキンキンとうるさく聞こえるので注意しましょう。

対面の場合なら、明るい印象を与えるために、第一声は音階でいうところの〈ソ〉のトーンで話すことをおすすめしていますが、オンラインでは少し高すぎます。また高音で話すと自然に声も大きくなってしまうという人もいますので、オンライン上では少し高さを抑えた〈ファ〉くらいのトーンを意識すると良いでしょう。小声でそっと「♫ドレミファ」とうたってみれば、〈ファ〉のトーンは見つかります。

また、表情を伝えるのが難しいオンラインでは、やる気や熱意も伝わりにくく、自分では普通に話しているつもりでも、不機嫌な印象を与えてしまう危険性もあります。

私はアナウンサー1年目に、ニュースの中の生中継のコーナーを担当していました。毎週、中継現場から、季節の話題などその時の旬の話題を中継するのですが、最も苦労したのが、現場の感動をそのまま視聴者に伝えることでした。

例えば、桜の名所から桜の美しさを伝えるとき、家でテレビの前にいる視聴者が現地で実際に桜を目にしているかのように感じさせるのがアナウンサーの役割です。そのためには、映像にのせて自分が受けた感動を言葉で表現して伝えねばなりません。ところが、実際に中継のVTRを見返してみると、私が受けた感動はまるで表現できておらず、むしろ淡々と伝えているようにさえ見えました。

その後も同じようなことが続き、「一体、何が悪いのだろう」と悩んだ私は、中継の上手な先輩に相談してみることにしたのです。

「中継では、私がその場で感じた感動をそのまま表現しようと頑張っているんですが、どうもうまく表現できなくて……」

するとその先輩は、こうアドバイスしてくれました。

「そのまま表現するから伝わらないんだよ。カメラを通して、自分の感動をそのまま伝えるには、3倍くらいオーバーに表現しないと伝わらないよ」

その場にいるわけでもない、自宅で何気なくテレビを見ている人の心をつかみ、そのままの感動を伝えるためには、3倍増しの表現が必要だということに、私は初めて気が付いたのです。

ビジネスでのやる気や熱意をテンションと言い換えるなら、オンライン上では自分が表現したテンションのうちの3分の1くらいしか伝わらないと思ってください。だからこそ、自分の思いを温度差なく伝えようと思えば、「テンション3倍」を心がける必要があるのです。

オンラインで伝える力
野村絵理奈(のむら・えりな)
株式会社KEE’S代表取締役社長。兵庫県出身、同志社大学法学部卒。NHKキャスター、気象予報士を経て、2005年に株式会社KEE’S設立。

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