非課税制度であるNISAを利用するには、まず金融機関で口座を開設しなければならない。口座開設にはどのくらい時間がかかるのか、どのような書類や手続きが必要なのか確認しておこう。
1.NISA口座はどこで開設できる?
NISA口座は多くの金融機関で開設できるが、金融機関によって違いがある。
NISA口座は証券会社や銀行以外にもさまざまな金融機関で開設できる
NISA口座は証券会社や銀行のほか、投信会社や郵便局、農協などさまざまな金融機関で開設できる。NISA口座を開設できる主な金融機関を表にまとめた。
金融機関名 | 一般NISA | つみたて NISA |
ジュニア NISA |
|
証券会社 | 野村證券 | ○ | ○ | ○ |
大和証券 | ○ | ○ | ○ | |
SBI証券 | ○ | ○ | ○ | |
楽天証券 | ○ | ○ | ○ | |
銀行 | 三菱UFJ銀行 | ○ | ○ | ○ |
ゆうちょ銀行 | ○ | ○ | ○ | |
三井住友信託銀行 | ○ | ○ | ○ | |
楽天銀行 | × | × | × | |
ソニー銀行 | ○ | × | ○ | |
投信会社 | セゾン投信 | ○ | ○ | ○ |
レオス・キャピタルワークス | ○ | ○ | ○ | |
鎌倉投信 | ○ | ○ | ○ | |
郵便局(投資信託取扱郵便局・貯金窓口) | ○ | ○ | ○ | |
農協(JAバンク) | ○ | ○ | ||
信用金庫 | 京都中央信用金庫 | ○ | ○ | ○ |
城南信用金庫 | × | × | × | |
岡崎信用金庫 | ○ | ○ | ○ | |
信用組合 | 長野県信用組合 | ○ | ○ | ○ |
近畿産業信用組合 | ○ | ○ | ||
労働金庫 | 中央労働金庫 | ○ | ○ | ○ |
九州労働金庫 | ○ | ○ | ○ | |
生命保険会社 | 第一生命保険 | ○ | × | × |
NISAには「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」があり、金融機関によって開設できる口座が異なる。同じグループ内に証券会社がある楽天銀行や住信SBIネット銀行など、NISA自体を取り扱っていない金融機関もある。口座開設を希望する金融機関の最新の取扱状況については、HPなどで確認してほしい。
NISA口座を開設する金融機関の口座も必要になる
NISA口座を開設するには、証券会社であれば「証券総合口座」、銀行であれば「普通預金口座」や「投資信託口座」など、その金融機関の口座が必要になる。新たに口座開設が必要になる場合は、NISA口座と同時に申し込むこともできる。
取り扱うNISA商品の違いにも注意
金融機関によって、取り扱うNISA商品(NISA口座で投資できる商品)は違う。投資したい商品を取り扱っているかどうかは、金融機関を選ぶ際の重要なポイントだ。
以下の表に主な金融機関の取り扱い商品の違いをまとめた。
金融機関名 | 取扱商品 | ||||
一般NISA | つみたてNISA | ||||
投資信託 | 国内株式 | 外国株式 | 投資信託 | ||
対面型証券 | 野村證券 | 963本 | ○ | × | 7本 |
大和証券 | 363本 | ○ | ○ | 15本 | |
ネット証券 | SBI証券 | 2,587本 | ○ | ○ | 172本 |
楽天証券 | 2,617本 | ○ | ○ | 170本 | |
銀行 | 三菱UFJ銀行 | 475本 | × | × | 12本 |
ゆうちょ銀行 | 128本 | × | × | 9本 | |
イオン銀行 | 329本 | × | × | 20本 |
株式を取り扱えるのは証券会社に限られているため、NISAで株式に投資したい人は証券会社で口座を開設する必要がある。NISA口座で外国株式に投資できるかどうかは、証券会社によって異なる。
投資信託は証券会社を含むすべての金融機関のNISAで取り扱っているが、銘柄は金融機関ごとに違う。取り扱う投資信託の数は、ネット証券が対面型証券や銀行など他の金融機関を圧倒している。
2.NISA口座の開設手続きにかかる時間
NISA口座の開設にかかる時間は、手続き方法や金融機関によって変わる。
NISA口座を簡易開設ができるかどうか、すでに口座を持っているかどうかで変わる
NISA口座の開設までにかかる時間は、「簡易開設制度」を利用するか、NISA口座を開設する金融機関に口座があるか、どのような経路で申し込むかによって変わる。
20の金融機関でNISA口座の開設にかかる目安の時間をまとめたのが以下の表だ。
<NISA口座開設までにかかる時間(目安)>
金融機関名 | 通常開設 | 簡易開設制度 |
野村證券 | 3~4週間程度 | 取扱なし |
大和証券 | 2~3週間程度 | 取扱なし |
みずほ証券 | 2~3週間程度 | 取扱なし |
SMBC日興証券 | 2~3週間程度 | 取扱なし |
三菱UFJモルガン・ スタンレー証券 |
1ヵ月程度 | 取扱なし |
SBI証券 (原則簡易開設制度利用) |
2~3週間程度 | 【オンライン申込】 最短2営業日 【書面申込】 最短7営業日 |
楽天証券 (原則簡易開設制度利用) |
2~3週間程度 | 【オンライン申込】 最短2営業日 (総合取引口座がある場合、 最短即日) 【書面申込】 5営業日程度 |
松井証券 | 2~3週間程度 | 取扱なし |
マネックス証券 | 2~3週間程度 | 取扱なし |
auカブコム証券 | 【オンライン申込】 1~2週間程度 【書類申込】 2~3週間程度 |
auカブコム証券での 処理が終わり次第 |
三菱UFJ銀行 | 1ヵ月程度 | 取扱なし |
三井住友銀行 | 2週間~1ヵ月程度 | 即日(※1) |
みずほ銀行 | 1ヵ月程度 | 取扱なし |
りそな銀行 | 1ヵ月程度 | 取扱なし |
ゆうちょ銀行 | 1ヵ月程度 | 取扱なし |
横浜銀行 | 投資信託口座開設後 2~3週間程度 |
取扱なし |
イオン銀行 | 1~1ヵ月半程度 | 即日 (店舗申込のみ可) |
ジャパンネット銀行 | 投資信託口座開設後 2~3週間程度 |
取扱なし |
JAバンク | 3週間程度 | 即日 (JA窓口申込) |
セゾン投信 | 1ヵ月程度 | 取扱なし |
簡易開設制度とは「非課税口座簡易開設届出書」を使ってNISA口座開設を申し込む方法だ。この制度を使えば、税務署の審査・承認を待たずにNISA口座を開設できるため、口座開設までの時間が大幅に短縮される。
NISA口座を開設する金融機関に口座を持っておらず、同時に口座を開設する場合や、郵送で手続きをする場合などは、すでに口座を持っている場合やオンライン申し込みの場合に比べて時間がかかることが多い。
オンラインなら最短当日、窓口で当日にNISA口座を開設できる金融機関も
簡易開設制度を導入している金融機関では、比較的短期間でNISA口座開設が完了する。
楽天証券では、すでに証券口座を保有している人がオンラインで申込めば、最短で当日中にNISA口座の開設が完了し、その日から商品を購入できる。イオン銀行やJAバンクなど、店舗窓口で申し込めば、当日中にNISA口座開設が完了する金融機関もある。
NISA口座を開設に最長で1ヵ月以上かかるところも
簡易開設制度を導入している金融機関は少なく、通常の申し込みではNISA口座開設完了まで2〜3週間程度、中には1ヵ月以上かかる金融機関もある。
金融機関が提示している日数はあくまで目安であり、スムーズに手続きが進めばそれよりも早く口座開設が完了することもある。書類などに不備があれば通常よりも時間かかってしまうため正確に記入・入力して、時間に余裕を持って申し込むようにしたい。
3.NISA口座の開設手続きに必要な書類
NISA口座の開設には、以下のような書類が必要だ。
● NISA口座申込書類(「非課税口座開設届出書」または「非課税口座簡易開設届出書」)
● 本人確認書類(運転免許証・パスポート・個人番号カード・健康保険証など)
● マイナンバーカード(これまで口座を開設する金融機関に提出していない場合のみ)
書類でNISA口座を申し込む場合、通常であれば「非課税口座開設届出書」、簡易開設制度を利用するときは「非課税口座簡易開設届出書」に必要事項を記入し、本人確認書類の写しと併せて金融機関に提出する。オンラインでNISA口座を申し込む場合は、Web上で必要情報を入力し、本人確認書類はアップロードするか写しを郵送して提出する。
マイナンバーカード(通知カードまたは個人番号カード)は、過去に口座を開設する金融機関にマイナンバー(個人番号)を提出していない場合のみ必要になる。顔写真付きの個人番号カードのコピーを提出する場合は、個人番号カードが本人確認書類となるため、別途本人確認書類を提出する必要はない。
マイナンバーの提出が義務付けられたことで、かつてNISA口座の開設に必要だった住民票の写しの提出は不要になった。
金融機関を変更してNISA口座を開設する場合
すでにNISA口座を開設している人が、金融機関を変更して別の金融機関でNISA口座を開設する場合は、NISA口座申込書類と本人確認書類に加えて、変更(勘定廃止)手続き後に元の金融機関から発行される「勘定廃止通知書」も必要だ。
一度廃止したNISA口座を再び開設する場合
一度NISA口座を廃止した人が再度NISA口座を開設する場合、NISA口座申込書類と本人確認書類に加えて、「非課税口座廃止通知書(※2)」も必要になる。非課税口座廃止通知書は、廃止したNISA口座があった金融機関に請求すれば交付される。
(※2)1期勘定(2014〜2017年開設分)のみ開設していた場合、非課税口座廃止通知書は不要
必要書類は金融機関によって違うこともあるため、申し込む金融機関に確認して準備してほしい。
4.NISA口座を開設する場合の手続きの流れと日数(時間)の目安
NISA口座の開設から取引開始までの流れは、以下のとおりだ。
通常のNISA口座申込みの場合
- NISA口座を開設する金融機関を選ぶ
- 金融機関にNISA口座の開設を申し込む(証券口座などの開設が必要な場合は同時に申し込む)
↓【当日〜数日間】(申込むタイミング、郵送の有無・日数などにより変動) - 税務署による審査・承認
↓【2〜3週間程度】 - NISA口座開設完了・取引開始
税務署の審査では、他の金融機関で非課税口座(NISA口座・つみたてNISA口座)が開設されていないことなどの確認が行われ、問題がなければ承認されてNISA口座が開設される。他の金融機関ですでにNISA口座が開設されており、税務署の承認が得られなかった場合、NISA口座開設の申し込みは無効になる。
簡易開設制度を利用したNISA口座申し込みの場合
- 口座を開設する金融機関を選ぶ
↓ - 金融機関に口座開設を申し込む(証券口座などの開設が必要な場合は同時申込)
↓【当日〜数日間】(申込むタイミング、郵送の有無・日数などにより変動) - NISA口座開設完了(仮開設)・取引開始
↓【2〜3週間程度】 - 税務署による審査・承認(本開設)
簡易開設制度では、税務署による審査・承認を待たず、最短で申し込んだ当日に取引を開始できる。別の金融機関でNISA口座が開設されていることがわかれば、その申し込みは無効になる。それまでの間にNISA口座で商品を買い付けていた場合、その商品は買付日まで遡って一般口座に移管される。一般口座は、損益の計算や確定申告を自分で行わなければならないため、手間がかかる。
過去にNISA口座を開設していた人などは、現在NISA口座が開設されていないことを確認して申し込むようにしたい。NISA口座の有無を確認できない場合は、税務署の承認が得られるまでNISA口座での買い付けを行わないほうがよいだろう。
5.NISA口座を開設する金融機関選びは慎重に
NISA口座は申し込んだ日に開設できる場合もあれば、1ヵ月以上かかることもある。開設できるのは1人1口座であり、一度口座を開設すると、金融機関の変更や、一般NISAとつみたてNISAの変更は翌年までできない。
「投資したい商品を取り扱っているか」「一般NISAとつみたてNISAのどちらが自分の目的や投資スタイルに合っているか」などを考慮して、口座を開設してから後悔しないよう、金融機関はよく比較検討して慎重に選んでほしい。
執筆・竹国弘城(ファイナンシャルプランナー)
証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®︎
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