FX取引を実際に始める前に決めておきたいのが、どのトレードスタイルを基本戦略とするかということ。どのくらい利益を得たいのか、どのくらいの資金で、どのくらい時間を費やせるのかによっても変わってくる。ここではFXの基本トレードスタイル5種類を紹介していくので、投資を始める参考にしてもらいたい。
1,FXのトレードスタイル5種類を比較
FX(外国為替証拠金取引)のトレードスタイルには大きく分けて5種類ある。それぞれの特徴は下表の通りだ。
取引時間 | 必要資金 | 利益の上げ方 | 向いている人 | |
長期トレード | 数ヵ月~数年 | 大 | スワップポイント | ・サラリーマンなど 本業がある人 |
スイングトレード | 数日~数ヵ月 | 中~大 | 為替差益 | ・サラリーマンなど 本業がある人 ・学生 |
デイトレード | 数分~数時間 | 少~中 | 為替差益 | ・初心者 ・サラリーマンなど 本業がある人 ・専業トレーダー |
スキャルピング | 数秒~数分 | 少 | 為替差益 | ・専業トレーダー |
システムトレード (自動売買) |
放置 | 少~中 | 為替差益 | ・サラリーマンなど 本業がある人 ・専業トレーダー |
上表の5つの手法は、取引時間順に並んでおり、取引間隔が一番長いのが「長期トレード」で最も頻繁に取引を行うのが「スキャルピング」だ。「システムトレード」のように、原則放置で、設定したルールによって自動売買が可能なトレードスタイルもある。
各トレードスタイルは、必要資金や投資経験などによって向き不向きがある。下記以降で、詳細を解説していく。
2,長期トレードとは?
まずは長期トレードの特徴を詳しく見ていこう。
特徴,相場に左右されずに安定運用ができる
長期トレードは、長い年月をかけてポジションを保有するスタイルで、「ポジショントレード」とも呼ばれている。利益が確定するまで数ヵ月から数年は持ち続けて売買のポイントを探っていく必要があるが、相場の変動に左右されることは少なく、売買回数が少ないため手数料を抑えることもできるので、総合的に見て勝率が高い方法といえる。明確なトレンドがあるときにエントリーや決済をすることで効果が得られることもある。
また、高金利通貨のペアを活かせば、毎日のスワップポイント(金利差調整分。2国間の金利差から生まれる利益のこと)の変動でもコツコツと利益を得られる可能性がある。安定して資産を増やすことができる上に、資産運用としても有用な方法といえるだろう。
注意点,ファンダメンタルズ分析も必須
基本的に放っておいても利益が得られる長期トレードだが、きちんと戦略を立ててからスタートする必要がある。放置しておいてもいいとはいえ、うっかりすると資産が目減りする可能性があるため、あらかじめ比較的大きな資産を持ってスタートさせ、資金管理もしっかりと行うようにしよう。
また、政治動向や金融政策などで急激に相場が変動したときに対応する必要があるので、テクニカル分析だけではなく、詳細なファンダメンタルズ分析も重要になってくる。
スワップポイントの変動でも利益を得られるため、通貨ペアの選び方が重要といえる。メキシコペソや南アフリカランド、ロシアルーブルなどは高金利通貨として知られている。しかし、これらの通貨はすべて新興国の通貨となるため、主要国通貨に比べて為替相場が動きやすくなっていることは念頭に入れておきたい。
向いている人,まとまった資金があるサラリーマン
長期トレードは、ポジションさえ保有してしまえばあとは放っておくことで利益を生むため、忙しくて時間のとりにくいサラリーマンなどに向いている。ある程度まとまった資金が必要になるので、資金力に乏しい学生や主婦では少々厳しいかもしれない。
また、長期トレードは長くポジションを保ち続けることで利益が得られるため、忍耐力があってメンタルの強い人が向いている。どんなに市場が動きを見せても、ドンと構えていられるかどうかが鍵になる。もちろん、市場の変化に合わせて柔軟に対応していくことも大切だが、忍耐力がない人やメンタルの弱い人は少しでも値動きが不利な方向に動いてしまったときに不安などから誤った売買に走ってしまいがちなので注意が必要だ。
長期トレードにおすすめのFX会社,LIGHT FX、みんなのFX、GMOクリック証券など
長期トレードで利益を得るためには、スワップポイントの水準が高いことが重要なポイントとなる。長期的なポジション保有による利益も重要だが、世界情勢の変化などで急激に損をする可能性も高いため、高水準のスワップポイントで 「日々コツコツと利益を得ることが大切だからだ 。高水準のスワップポイントで「日々コツコツと利益を得ることが大切だからだ。
スワップポイントの水準が高いと評判なのはLIGHT FXだ。トレイダーズ証券が運営しており、スワップポイントの水準の高さは業界トップクラスとされている。トルコリラやメキシコペソなどの高金利通貨を運用していることも、注目の的となっているようだ。ほかにもみんなのFXやGMOクリック証券、SBI FXトレードなどがスワップポイントが高いことで知られている。
3,スイングトレードとは
次に、スイングトレードについて見ていこう。
特徴,トレンドをつかめば大きな利益が期待できる
長期トレードほどではないものの、ほかのトレードスタイルに比べて長めの、数日から数ヵ月ほどの間ポジションを保有するのがスイングトレードだ。トレンドをつかめば一度に大きな利益を得られる可能性が高いのが特徴だ。
1日1回チャートを見れば取引ができるため、本業が忙しいサラリーマンや学生でも利益を得やすいところがポイントといえる。一方で、資金効率は低いので、元手が少ないと少しずつしか増やせないというデメリットもある。
注意点,値幅観測理論の活用、低レバレッジ
ポジションを持つポイントや注文のタイミングが非常に重要になるため、スイングトレードでは長期トレードと同様に、テクニカル分析に加えて大きな流れを読むためのファンダメンタルズ分析が必要になってくる。テレビや新聞のニュースはもちろんのこと、要人のSNSでの発言にも気を配りたい。
加えて、過去の値動きから未来の値動きを予測する「値幅観測理論」の活用も必要だ。過去の値動きを分析しながら現在の市場をよく見て、効果的なポジションを決めていくことが利益を生む秘訣ともいえる。値幅観測理論を活用すれば、現在が上昇トレンドにあるのか下降トレンドにあるのかも判断できるようになる。値幅観測理論には、「V計算値」「N計算値」「E計算値」「NT計算値」などいくつかの計算方法があるので、相場の状況に合わせて活用するといいだろう。
また、レバレッジを低めに設定することも利益を上げるコツのひとつだろう。狙う利幅が広いスイングトレードでは、損切りの幅も深くとる傾向にある。その場合、価格が不利な方向に動くと強制ロスカットされてしまうリスクもあるが、資金に余裕を持たせてレバレッジを低めに設定すれば、中長期的にポジションを保有できて利益を得るチャンスも増えるだろう。
向いている人,本業のあるサラリーマンや学生
前述したように、チャートを見るのは1日1回で十分だ。取引自体は1週間に1~2回程度、もしくは1ヵ月に1回程度となるため、本業のあるサラリーマンや学生が副業としてスタートするのに向いている。
また、長期トレードと同様に一定の期間ポジションを保有しておける忍耐力の強い人は、スイングトレードに向いているといえるだろう。
スイングトレードにおすすめのFX会社,外貨ex byGMO、LIGHT FX、SBI FXトレード、みんなのFXなど
中長期的にポジションを保有する必要のあるスイングトレードは、長期トレードと同様に毎日変動のあるスワップポイントでも利益を得ることができる。そのため高水準のスワップポイントが特徴のFX会社を選ぶ点がポイントだ。
さらに、低レバレッジで取引をするには、資金にも余裕が欲しい。資金に余裕を持たせるために少しでもコストを抑えて取引することを考えると、外貨ex byGMO、LIGHT FX、SBI FXトレード、みんなのFX、外為どっとコムなどがおすすめだ。これらの会社は、スワップポイントを高水準に保ちつつ、業界最狭幅のスプレッド(取引コスト。売値と買値の価格差のこと)を誇る。
4,デイトレードとは
初心者にもおすすめといわれるトレードスタイルがデイトレードだ。
特徴,損失を抑えながら堅実に利益を積み重ねる
デイトレードとは、その名のとおり1日で取引が完了するトレードスタイルのことだ。利益も損失も1日の幅におさまるため大きく稼ぐことはできないものの、堅実に少しずつ利益を出せる可能性がある。長期トレードやスイングトレードに比べて回数をこなしやすいため、初心者が経験を積むのにも適しているといえるだろう。
その日のうちに取引が完了するため、日をまたぐタイミングで変動する相場の動きに神経を使わなくてもいいという点も大きなメリットだ。長くポジションを保有していると、平日の仕事中も休日も社会情勢などによる値動きが気になってしまう人もいる。デイトレードは1日数回チャートを確認して、利益が出せると思ったタイミングで売買すればいいので精神的な負担が軽減できる。
注意点,スプレッドと取引時間帯を見極める
デイトレードで利益を上げるためには、取引コストであるスプレッドが狭い通貨ペアを選ぶのがポイントだ。どうしても利幅が小さくなりやすいデイトレードでは、スプレッドが広すぎると利益を出しにくい。その点、取引量の多い主要国の通貨はスプレッドが狭い上に、1日のうちに値動きもしやすいためおすすめだ。
また、相場が動きやすい時間帯に取引することもポイントといえるだろう。東京の市場がオープンする直前の8~8時55分の時間帯、欧州の市場がオープンする16~18時(日本時間)、米国の市場がオープンする21~24時(同)の3回が、トレーダーが活発に取引する時間帯だ。一方で、多数のトレーダーや金融機関が参入する時間帯であるため、初心者は慎重な取引を心がけよう。
向いている人,コツコツ稼ぎたいサラリーマンや投資初心者
1日で取引が完了するデイトレードは、専業トレーダーはもちろん、本業があって時間のとりにくいサラリーマンでも、すきま時間にチャートを見ることができれば取引が可能だ。
また、FX初心者もデイトレードに向いている。ほかのトレードスタイルにくらべて利益が少ないが、損失も少ない上に回数をこなすことができるため、FXを実践しながら学ぶことができるからだ。
中長期的にポジションを保有するほどメンタルの強さがない人、コツコツと確実に利益を積んでいきたいなど、安全圏でFX取引を進めたいという人は、デイトレードに向いているだろう。
デイトレードにおすすめのFX会社:LIGHT FX、みんなのFX、外為どっとコム
デイトレードでは、1日に何度も取引を重ねるのでコストをいかに抑えるかがポイントだ。そのためには、スプレッドの小さいFX会社を選ぶのがいいだろう。日々の取引をスムーズに進めるために、初心者でも扱えるような使いやすいツールが用意されていることも重要なポイントといえる。通貨も1,000通貨単位から選べるようなFX会社にしておけば、ポジションも調整しやすくなる。
それらの点を踏まえると、デイトレードにおすすめのFX会社はLIGHT FX、みんなのFX、外為どっとコムなどだ。これらの会社はスプレッドの小ささに定評があり、通貨も1,000通貨単位から柔軟に選択可能である。取引ツールもPC向けとスマホ向けのツールが用意されている。
5,スキャルピングとは
トレードスタイルの中でも、一番スピーディなトレードスタイルがスキャルピングだ。
特徴,取引間隔が短く、スピーディに利益を積み上げるスタイル
スキャルピングは、すべてのトレードスタイルの中で最も短期の投資スタイルだ。取引時間が短く、とにかく取引回数が多いため、利益を積み上げるスピードも早いのが特徴だ。1回あたりの利益は少なくなるが、損失を抑えやすいのも特徴のひとつである。
1日に何度も注文や売買が発生するため、的確なエントリーポイントを見つけるなど素早い判断が必要とされる。
注意点:スプレッドが狭く取引量が多い通貨ペアを選ぶ
スキャルピングで利益を上げるためには、適切な通貨ペアの選択が重要となる。特にスプレッドが狭く、取引量の多い通貨が適している。
また、値動きが出やすくなる時間帯を狙うのも効果的だ。特に欧州と米国、ロンドンの市場がオープンする15時~午前1時の時間帯は狙い目といえる。確実な利益を得るために、取引が活発な時間帯を選ぶようにしよう。
向いている人,専業トレーダー
スピード感が求められるスキャルピングは、市場の動きに集中できる専業トレーダー、本気でFXで稼ぎたいと考えている人に向いている。本業のあるサラリーマンがすきま時間にやるには負担が大きい。また、相場の読めない初心者が取り組むのにも不向きだ。
スキャルピングには瞬発力と判断力が求められる上に、毎日コツコツとチャートを見て売買のチャンスを探る忍耐力や根気も必要となる。これらの力が不足している人も不向きといえるだろう。
スキャルピングにおすすめのFX会社,ヒロセ通商、JFX、FXプライム byGMOなど
スキャルピングに必要とされるのは、スプレッドの小ささ、スピーディな売買に耐えうる約定率の高さだ。それに加えて、スキャルピングが公認か否かも確認しよう。両方を兼ね備えているが、ヒロセ通商、JFX、FXプライム byGMOなどだ。
ちなみに、スキャルピングを禁止しているFX会社もあるので注意しよう。メジャーなところではDMM FXやSBI FXトレードがスキャルピングを禁止している。これらの会社では、約款に「短期間での注文を繰り返し行う行為」を禁止事項として記載している。禁止しているFX会社でスキャルピングを行うと、口座を凍結されてしまう恐れがあるので、選ぶときには注意が必要だ。
6,システムトレードとは
「シストレ」の略称で呼ばれ、近年少しずつ注目を浴びてきているのがシステムトレードだ。
特徴,自動売買で機械的な取引が可能
システムトレードは「自動売買」とも呼ばれ、決められたルールに沿ってシステムが機械的に売買してくれるトレードスタイルをいう。決められた条件下で取引するように設定することができるため、トレーダーの感情が入り込む隙がない。通常の裁量取引(自分の判断で行う取引)では、市場の変化でトレーダーのメンタルが揺さぶられると誤った判断で取引をしてしまい損をするパターンもあるが、そうした事態を防ぐことができる。
また、自動で取引されるためトレーダー自身が画面に張り付いている必要がない。自由な時間をつくりながら24時間FXの取引ができ、設定しておけば細かな相場の動きにも自動で対応してくれるため利益を出しやすくなる。
システムトレードには、開発型システムトレードと選択型システムトレードの2種類がある。開発型システムトレードは、自分でプログラムを開発するか購入するかして、オリジナルの取引ルールを設定する必要があるため上級者向けといえるだろう。他方で選択型システムトレードは、既存の取引ルールを自分で選ぶタイプで、無料のものも多く展開されているため初心者向けといわれている。
注意点,複数の取引ルールを平行して稼働させる
システムトレードは、運用する上では便利なトレードスタイルではあるものの、大きな利益は上げづらいタイプといえる。市場の変動はシステムで予測できるものではなく、システムに任せきりにしていた結果大損をしたという事例も少なくない。
それでもシステムトレードで利益を上げるには、2つのシステムトレードを平行して稼働させるのがおすすめだ。異なる取引ルールのシステムを2つ動かすことで、どちらかが市場の変動で損をしたり強制ロスカットにあったとしても、もう片方のシステムが残って利益を生み出す可能性がある。長く運用しておけば、時間分散によってリスクも軽減することも可能だ。
また、完全にシステムに頼りきらず、多少なりとも自分で市場の勉強をしておくことが重要だ。
向いている人,FX経験者で成果が伸び悩んでいる人
システムさえ組むことができれば、あとは自動で売買してくれるため、専業トレーダーでも会社員が副業として行う場合でも向いている。しかし、最も向いているのは「自分の裁量で取引をしてもなかなかうまくいかない」「勝ちパターンが見つけられない」といったFX取引の成果に伸び悩んでいる人だ。
「今から専門的知識を身につけるのは面倒」「時間がないけれどまずはFXをはじめてみたい」という初心者にも向いているが、基本的なFXの取引感覚を持っている人が運用するのが理想的だ。
システムトレードにおすすめのFX会社,みんなのFX
ここでもほかのトレードスタイル同様、注目したいのはスプレッドの小ささだ。システムトレードは取引手数料が発生する場合もあり、スプレッドも裁量取引より広くなっているのが一般的である。少ない資金からスタートして稼げる人がいる一方で、大きな金額を費やしてようやく自分の勝ちパターンを見つけるという人もいる。すでに元手として大金を有している場合はともかく、可能な限りコストを抑えた運用ができたほうがいいだろう。コストを抑えるためには、システムトレード利用時のスプレッドが狭く、取引手数料が無料のFX会社を選ぶのがおすすめだ。
使いやすいシステムトレードを有する会社として評判が高いのが、みんなのFXだ。同社のサービス「みんなのシストレ」は、選択型のシステムトレードを採用している。これには機械による一定の自動取引と、実際にトレーダーが使うストラテジーを活用した自動取引の2種類がある。後者は自分のレベルに合わせて、自分に合ったストラテジーを選ぶことができるため、上級者はもちろん、初級者でもより使いやすいシステムトレードとなっている。
7,自分のライフスタイルに合わせたトレードスタイルを選ぼう
FXのトレードスタイルはそれぞれ特徴が異なり、得られる利益もどんな性格に合うかも異なってくる。ときには同じスタイルばかりではなく、市場の状況に合わせて使い分ける必要もあるだろう。自分に合ったトレードスタイルを見つけて、勝ちパターンをつくろう。
監修者・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。
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