IT関連の記事で「DX」という言葉を目にする機会が増えましたが、その意味を漠然と捉えている人も多いのではないでしょうか。DXは、これから企業が時代の変化に対応し競争力を高めていくために必要な概念です。本記事では、DXの概要や課題、マンション経営での活用法について解説します。

そもそもDXとは何か?

話題のDXとは?政府が推進する理由とマンション経営での活用法
(画像=ocean_nikonos/stock.adobe.com)

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、トランスフォーメーションを和訳すると「変化・変質」という意味です。DXは、広義としてデジタル技術で生活などを便利に変化させることですが、ビジネス上では主に経済産業省が定義した以下の意味を持っています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
出典:「DX推進指標」とそのガイダンス(経済産業省)

「デジタル技術を使う」と聞くと、業務の利便性向上を想像するかもしれませんが、企業の持つ製品やサービス、ビジネスモデルの変革まで含めた広範囲な意味になっています。

DXに取り組むメリット

DXに取り組むことで企業にもたらされる代表的なメリットは以下の3つです。

業務の効率化によって生産性が向上

コロナウィルス感染拡大によって外出自粛が要請されながら「印鑑を押すためだけに出社する」という話題がありました。DXで電子印鑑サービスが普及すれば、実物の書類に捺印する時間や手間が効率化され、他の業務に時間を割けるようになります。他にも、オンライン会議の普及で移動時間や交通費の削減なども考えられるでしょう。

業務の効率化は、業務時間を短縮させて残業を減らし、社員のワークライフバランスを健全化するメリットも期待されます。DXによる業務の効率化は時間の創出やコスト削減だけでなく、子育てや身内の介護などが原因による人材の流出を防ぐことも可能です。

時代の変化や消費者のニーズに対応

DXに積極的に取り組むと、時代の変化や消費者のニーズへ柔軟に素早く対応できるようになります。例えば過去のデジタル技術による変革例として、音楽ソフトの提供方法の変化が挙げられます。かつてレコードからCDへ音楽を提供するフォーマットは大きく変わりました。さらに「CDからダウンロード販売」「ダウンロード販売からサブスクリプションサービス」などデジタル技術の発展とともに、次々と提供方法が変わっています。

DXに積極的に取り組むことで時代の変化や消費者ニーズに素早く対応し、激しい市場競争で生き残れる可能性が高まるでしょう。しかしDXに消極的な企業はそうした変化に乗り遅れ、競争から脱落してしまう恐れがあるのです。

BCP対策にもDXは有効

コロナウィルス感染拡大のような非常事態では「DXを推進している企業のほうが収益を下げにくい」と考えられます。例えばオフィスに出社できないと通常業務が止まってしまう企業は、災害などがあれば、売上が大きく減少してしまうでしょう。一方安全な場所からオンラインで中核業務を行えるように設備やシステムを準備している企業なら、収益を極端に落とさず事業を継続しやすくなります。

これは、中小企業庁も推進するBCP(事業継続計画)においてもDXが有効といえる部分です。BCPとは、自然災害や火災といった緊急事態でも被害を最小限に食い止め、中核事業の継続や早期復旧ができるようにする対策です。資金的な備えの弱い中小企業で特に必要とされ、この点でDXは大企業だけの課題ではないといえます。

経済産業省の取り組み

2018年の夏に経済産業省では、従来の行政手続き改革のため、デジタルトランスフォーメーションオフィスを設置しました。これまでの行政手続きは「大量の紙資料を使った窓口での対面手続き」「手続き完了まで長い時間がかかる」といった課題がありましたが、経済産業省ではデジタル技術による手続き業務最適化のため同部署を設置したのです。

これまでも行政で電子化は進められてきましたが、紙がPC画面に変わっただけで情報の整理や入力、確認などは従来とほとんど変わっていません。そのため手続きを申請する国民や企業、さらに受け取る職員にとっても大きな負担になっていました。今後は異なる手続きで同じ情報を何度も入力することなく一度で済むワンスオンリーや関連手続きを一括して行うワンストップを実現するとしています。

他にも民間サービスと連携して書類作成の手間を最小限にしたり、申請時の添付漏れや記載ミスを自動で検出するシステムを導入する予定です。これはもちろん経済産業省自身の改革の意味もあります。しかしこれから産業界は積極的にデジタル技術を取り入れてDXを進めなければ「グローバル化の中で取り残され日本企業の存続が危ぶまれる」という経済産業省の危機感の現れともいえるでしょう。

DXが日本の企業で進まない理由

経済産業省の「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開」では「日本企業ではある程度のDX投資はされるものの実際の変革につながっていない」と指摘しています。業務を改善し企業の競争力を高められるDXなのになぜでしょうか。同レポートによればその原因は既存のITシステムが「老朽化」「複雑化」「ブラックボックス化」しており新たなシステムに移行しにくい点にあります。

社内のデータや業務を管理するITシステムが古いうえ、部門ごとに追加や改変が加えられているため、簡単に新しいシステムへ移行できない状態なのです。背景には、企業がシステムを構築するベンダーにお任せで「自社内にシステムを理解している人間や部門がない」という問題点があります。また既存システムの維持や保守に資金や人材が割かれ、新たなデジタル技術を活用する投資へ資金投下できない事情もあります。

2025年の崖

今後は、こうした古いITシステムを担当していた人材が定年退職を迎えノウハウが失われることで、さらにITシステムのブラックボックス化が進む懸念があります。また古いシステムのサポート終了なども重なり、2025年以降はさらに企業の国際競争力が停滞する可能性があることも懸念材料です。これを前述のレポートでは「2025年の崖」と呼び警鐘を鳴らしています。

この課題が克服できない場合「2025年以降は毎年最大で12兆円の損失が生じる可能性がある」と指摘しています。しかし企業側は、ITシステムが古いことを自覚しながらも日常的な業務はこなせているため切迫してシステム改変の必要性を感じていないようです。経済産業省では、問題解決のため「経営側が現状を理解し資金を振り分け自社内でITエンジニア教育や確保すること」が喫緊の課題としています。

不動産投資で考えるDX

さまざまな業界で共通の課題とされるDXですが、マンション経営の立場で見るとどのような活用法が考えられるでしょうか。

オンライン相談や内見などの非対面化

今後普及してくると考えられるのが「オンラインによる入居希望者との相談や物件の内見」です。以前より仕事などで忙しい人は、相談や内見で足を運ぶ時間が取りにくかったのですが、昨今のコロナウィルス感染拡大もあり非対面の需要が高まっています。もちろん最終的には、対面で相談にのったり実際に物件を内見したりすることが必要です。

しかし初期段階にオンラインでできるようになれば、物件に関心を持ってもらいやすくなるでしょう。

重要事項説明など手続きも徐々にIT化

実際の業務上では、賃貸契約の重要事項説明がオンラインで行うことが可能です。2017年から入居者へ事前に書類を送り、宅建士による説明を聞いてもらったうえで署名し返送してもらう手続きが本格運用されています。さらに現在は、個人売買のIT重説や賃貸契約に関わる書類の電子書面交付が社会実験中です。法改正も必要なため実施には時間がかかるでしょう。

しかしこうした流れに積極的に取り組む仲介会社に協力してもらうことが、入居者を途絶えさせないマンション経営の条件になるかもしれません。(提供:Dear Reicious Online


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