壽屋【7809・JQ】フィギュアなどホビー関連商品の製造・販売を展開 23年6月期の創立70周年に向け業績拡大の加速を目指す

 壽屋(7809)はフィギュアやプラモデルなどのホビー関連商品の企画と製造・販売を展開している。フィギュア原型やデザイン部署を社内に持ち「スター・ウォーズ」「新世紀エヴァンゲリオン」など映像、コミック作品の版権作品を多く手掛けながら、オリジナルコンテンツである「自社IP」の開発にも注力。23年6月期に迎える創立70周年に向け業務改革も加速化させるべく、舵取りを進めている、清水一行社長に話を聞いた。

板倉広高社長
プロフィール●しみず・かずゆき
1954年4月生まれ、東京都出身。78年4月、寿屋入社。86年6月、代表取締役社長に就任(現任)。

「鬼滅」以外でも増収増益
海外への販売と巣ごもり需要で好調

 昨年11月に発表された同社の2021年6月期第1四半期の業績は、売上高18億5400万円(前年同期比15.8%増)、営業利益は8100万円(前年同期は9700万円の赤字)と増収増益となった。同社は大ヒット中の「鬼滅の刃」関連フィギュアを手掛けており、販売が好調に推移している。これに自社IPである「メガミデバイス」関連プラモデルの販売拡大が加わったことで、売上高、収益性とともに向上している。

「『鬼滅』関連商品は当初の計画を上回る勢いで売上を伸ばしたが、黒字回復したのには他の要因も大きい。まず自社商品の海外への販売が伸びている。特に中国は、コロナ以前の需要が完全に回復している。また、3年前の新規上場時には5種だった自社IPコンテンツが現在は7種に増えており、海外でも好評を博しています」(清水一行社長)

 現在、製造委託している中国の工場がコロナの影響で1カ月半停止した影響で、当初の発売計画も変更を余儀なくされている。しかし海外卸売販売については、前期で注力したアジア地域での営業活動により新規顧客増加に成功し売上が増加。またコロナにより店舗売上は減少したものの、巣ごもり需要効果でECによる売上も拡大した。

企画・製造業務を大幅に改善
収益構造改革で利益率上昇

 好調の理由は他にもある。同社は前期に大幅な業務改善をスタートし、その成果が今期になって現れはじめているのだ。

 以前は売上の数字を上げるため、企画・製造する商品点数を増やすことを主眼としていたという。しかし中には製造したものの売れない商品もあり、それが利益の足を引っ張っていた。フィギュアの原型を作る「原型師」の人数に限りがある中、商品点数を増やしたことで納期に影響することもあった。

「売れない商品でも、作ってしまったら営業や宣伝の費用がかかる。それを避けようと、前期の後半くらいから商品の数を絞りました。原型まで作ったが生産直前に取りやめたものもあります。業務改善の取り組みによって前期から今期にかけて利益率が改善し、コロナの影響がありながらもなんとか業績を回復することができた」(同氏)

さらなる拡大には「横展開」が必要
自社IPのデジタルデータ活用に商機

 清水社長は創立70周年となる23年6月期に向けて業績拡大のスピードアップを目指していると話す。

「中国の売上の伸びが大きいことと、アメリカの需要の戻りを考えれば、既存の事業で社内目標額は達成できる。しかし、そこから先は商品ラインアップやカテゴリー、製造方法などを含め、どうやって横に広げていくかが課題です」(同氏)

 同社が今後に期待をかけるのが自社IPの拡大だ。昨年11月、同社は新たな事業領域として、自社IPのキャラクターデータを利用した「デジタル事業」の展開を発表した。パートナー企業との協業によるもので、これによってVR(仮想現実)やAR(拡張現実)空間にキャラクターを登場させたり、AI(人工知能)を使って会話したりする新たな遊び方が可能になる。

「使用する3Dデータは、実際にフィギュアの金型作りで使用したもの。これによってリアルとデジタルの両方のフィギュアで遊ぶことが普及すれば、大きな可能性がある。データは一度作ればいろいろな利用が可能。今後も他社との協業で自社IPの幅を大きく広げていきたい」(同氏)

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