長期にコツコツ資産形成するには、つみたてNISA、学資保険、外貨建て保険、変額保険などの方法があるが、どの投資法が良いのだろうか。つみたてNISAを軸に、各種保険の特性や優位性、デメリットについて比較検討し、向いている人の特徴についてまとめた。

1,つみたてNISA(積立NISA)の特徴

つみたてNISA(積立NISA)と各種保険を徹底比較!長期間コツコツ積み立てる最強の投資法は?
(画像=umaruchan4678/stock.adobe.com)

つみたてNISAの仕組みとメリット、よく比較される商品は次のようになっている。

つみたてNISA(積立NISA)の非課税投資枠は最大800万円

つみたてNISAとは、個人が運用から得た利益に対する税が免除される少額投資非課税制度だ。一般NISAに続いて2018年1月から実施されている。毎年40万円までの新規投資が可能で、買い付けをしてから20年間非課税期間が継続する。非課税で投資できる金額は20年間で最大800万円だ。投資方法は積立に限られ、対象商品は金融庁が長期分散投資に適していると判断した193本の投資信託のみだ(2020年12月23日時点)。

つみたてNISA(積立NISA)のメリットは税制優遇と手間の少なさ

つみたてNISAの良さは何といっても分配金や値上がりによる譲渡益に税金がかからないことだ。本来なら利益に対して20.315%の課税があるところが非課税になるのだから、個人投資家としてはありがたい。さらに、つみたてNISAの制度を使えば初心者や多忙な人でも自動的に少額で長期分散投資ができる仕組みになっている。対象商品の数が絞られているのも、銘柄検討の手間と時間を省けるのでメリットと言える。

つみたてNISA(積立NISA)とよく比較される金融商品

つみたてNISAとよく比べられる金融商品としては、学資保険、外貨建て保険、変額保険が挙げられる。毎月定期的に掛け金を拠出し、長期的に資産形成をするところが似ているためだ。他にもiDeCo(個人型確定拠出年金)とも比較されることが多いが、本記事ではつみたてNISAと各種保険の比較検証を取り上げてみたい。

2,つみたてNISA(積立NISA)と学資保険の比較

まずはつみたてNISAと学資保険(こども保険)について比較する。

学資保険は子供の学費を貯めるための貯蓄性商品

学資保険とは、決められた保険料を払えば満期に子供の入学や進学に合わせて祝金や満期保険金が受け取れる貯蓄性の保険だ。将来の子供の教育資金の積み立てに役立つ。万が一、契約期間中に契約者である親が死亡した場合、それ以降の保険料の支払いは免除された上で満期保険金は満額受け取れる。

また、満期保険金以外にも、育英年金(親が死亡した際、学資保険が満期を迎えるまで所定の年金が受け取れる保険)や、子供の死亡保障が付いた学資保険もある。ただし保障が充実している学資保険は受け取れる満期保険金と祝金の総額が支払保険料を下回ることもあるので注意したい。

つみたてNISA(積立NISA)と学資保険の相違点

つみたてNISAと学資保険は、毎月一定額ずつ積み立てをおこない、10年20年といった長い時間をかけて資産作りをする点ではこの2つはよく似ている。また種類は違うがどちらも節税効果がある。つみたてNISAは利益に対する税金が非課税になるが、学資保険は一般生命保険料控除の対象となり所得税が軽減される。

しかし両者には決定的な違いが2つある。1つはつみたてNISAは運用の成果によって資産が増減するのに対し、学資保険はあらかじめ契約時に受取金額が決められている点だ。返礼率が100%を超える商品であれば基本的に元本保証であると考えてよい。ただし医療保障や死亡保障の手厚いものや、子供や契約者の年齢が高い場合は元本割れもあり得る。

2つ目はつみたてNISAがいつでも売却・引き出し可能なのに対し、学資保険は原則として満期まで解約できない点である。もし途中解約すると支払った保険料のうち一部しか戻って来ないので、最後まで継続可能かしっかり検証してから契約することが大切だ。

3,つみたてNISA(積立NISA)と外貨建て保険の比較

次に、外貨建て保険とつみたてNISAについて比べてみる。

外貨建て保険は外貨で払い込み・受け取りを行う投資性の高い商品

外貨建て保険は、保険料の払い込みや保険金の受け取りを日本円以外の外貨(主に米ドル)でおこなう保険商品を指す。

日本円より高い利率の通貨で運用するため、低金利商品に不満のある層から人気がある。為替レートの変動により受け取る保険金額が円換算後に契約時を上回る、または下回る可能性がある。死亡保障や三大疾病保障などが付く保険商品ではあるが、実質的には資産運用商品と考えるのが妥当だ。運用がうまくいけば予定よりも多くの保険金が受け取れるが、為替市場の動向によっては元本割れのリスクがある。

つみたてNISA(積立NISA)と外貨建て保険の相違点

つみたてNISAは投資信託やETF(上場投資信託)、外貨建て保険は外国通貨に投資することでリターンを狙う。つみたてNISAは分配金や売買益が非課税となるが、外貨建て保険は日本円の生命保険と同様に掛け金が一般生命保険料控除の対象となる。どちらも投資により税優遇が受けられる制度だ。

大きな違いは為替の影響を受けるかどうかだ。つみたてNISAの対象商品には外国株式や債券に資金を投じる投資信託も多く含まれているため為替レートの影響を受けないわけではないが、取引は円で行われるため直接的ではない。

一方、外貨建て保険は為替の動向によって支払う保険料や受け取る保険金の金額が変動する。想定より高い保険料、安い保険金となってしまう可能性も十分にある。円と外貨を交換するたびに為替手数料が発生するので、払い込みと受け取りを円でしたい人には不利だ。

ただ、投資性が高いとはいえ保険なので、死亡や高度障害など、万が一の時の保証が受けられる。つみたてNISAには保険の機能はない。

4,つみたてNISA(積立NISA)と変額保険の比較

最後につみたてNISAと変額保険の特徴を比較する。

変額保険は運用によって将来の受取額が増減する商品

変額保険とは、保険会社が資産を株式や債券に投資し、運用成果によって加入者が受け取る保険金や年金、解約返戻金が増減する保険である。運用状況が良ければ受け取れる金額は増加するが、運用資産が値下がりした場合は受け取れる金額は減る。

死亡保険金500万円や入院給付金1日1万円のようにあらかじめ受け取り金額が決められている定額保険とは真逆だ。ただし死亡保険金には最低保証が付けられているので、万が一のとき最低限の保険金は受け取れる。

つみたてNISA(積立NISA)と変額保険の相違点

つみたてNISAも変額保険も、金融商品への運用成績によって受け取れる金額が変動する点は共通している。外貨建て保険と同じく変額保険も一般生命保険料控除の対象となる。

大きな違いは、変額保険は保険会社に運用を任せられるが、つみたてNISAは自分で銘柄を選んで運用する必要があることだ。その代わりつみたてNISAは発生した利益はすべて自分のものとなる。変額保険は保険会社を経由するのでどのくらい自分に還元されるかは不透明だ。

5,つみたてNISA(積立NISA)と各種保険、どんな人に向いている?

ここまでつみたてNISAと学資保険、外貨建て保険および変額保険について比較してきた。結局、長期的に積み立てながら資産形成するのはどの方法が最適なのだろうか?それぞれに向いている人の特性をまとめた。

つみたてNISA(積立NISA)に向いているのは計画的に投資ができる人

投資信託やETFへの投資に興味があり、非課税で運用したい人、手続方法などを自分で調べることを厭わない、計画性があり生活費と運用資金を分けられる人はつみたてNISAに向いている。手数料をあまりかけず、運用による利益を実感できる。

学資保険に向いているのは受取額に確実性を求める人

学資保険は元本保証で確実に教育資金を貯めたい人に向いている。途中解約は損をするようになっているので、強制的に満期まで積み立てができる。受取額があらかじめ決められているのは他の商品と比べても安心だ。大きなリターンは期待できないが、保険会社が貯蓄を管理してくれていると考えると利便性も高い。

外貨建て保険に向いているのは外貨投資に興味がある人

外貨を保有している、または留学や移住の予定があり外貨の資産を持ちたいと考えていて、外貨投資に興味がある人は一考に値するかもしれない。しかし為替手数料や解約返戻金など仕組みが複雑で分かりにくい点が多い商品であることには注意が必要だ。保障と運用を別と考えるなら、つみたてNISAと掛け捨ての保険を組みわせるなどの選択肢もある。

変額保険に向いているのは保険会社に運用を任せたい人

生命保険料控除を受けつつ運用もしたい、ただし自分で運用をするのは抵抗がある人には変額保険は有効だ。投資信託と生命保険の両方の機能を併せ持つ。ただしすでに死亡保障や高度障害保障の付いた保険に加入している場合は重複になるので変額保険は必要ない。保険会社を経由せず投資信託を購入すれば商品の選択肢も広く低コストで運用できる。

6,つみたてNISA(積立NISA)と保険を組み合わせる選択肢も

つみたてNISAとここで紹介した3つの保険は、ともに節税メリットが受けられる。つみたてNISAは、20年間で最大800万円まで非課税投資額が設けられている。保険商品は生命保険料控除が適用される。

つみたてNISAは利益が出るほど大きな節税効果が期待できる。半面、運用次第で元本割れする可能性があるのと自身で商品を選定しなければならないという点はデメリットと言えるだろう。保険商品は運用の手間は少ないものの、途中解約すると損をする可能性が高い(学資保険)、為替リスクや仕組みの煩雑さ(外貨建て保険)、保険会社の運用次第で元本割れ(変額保険)などのデメリットがある。

それぞれの制度や商品特性を理解したうえで、つみたてNISAと保険を組み合わせるなどの選択肢も検討して、将来のマネープランを設計しよう。

執筆・篠田わかな(ファイナンシャルプランナー)
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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