青色申告という制度を知っているだろうか。確定申告をする習慣のある人ならなじみの深い用語であるが、そうでない人にとっては、なじみのない言葉だろう。青色申告をすれば、無条件で節税になるお得な制度と捉えている人も多いだろう。この記事では、青色申告について、徹底的に解説していきたい。
青色申告制度はいつから始まったのですか?
A1.1949年の日本税制報告書、いわゆるシャウプ勧告を受け、法人税と所得税の確定申告において、1950年から導入された。当時は、申告納税制度が始まったばかりで、納税者の帳簿に対する知識不足や脱税の多発などにより、税務署の事務に多くの負担がかかっていた。そのため、適正な帳簿づけを行っている個人・法人への恩典として青色申告制度が開始された。
A1.1949年の日本税制報告書、いわゆるシャウプ勧告を受け、法人税と所得税の確定申告において、1950年から導入された。当時は、申告納税制度が始まったばかりで、納税者の帳簿に対する知識不足や脱税の多発などにより、税務署の事務に多くの負担がかかっていた。そのため、適正な帳簿づけを行っている個人・法人への恩典として青色申告制度が開始された。
青色申告承認申請書はずっと有効ですか?
A2.青色申告承認申請書は、税務署から青色申告の承認の取り消しをされた場合や、青色申告の取りやめの届出書を提出した場合を除いて、ずっと有効である。逆にいえば、税務調査で多額の指摘がされた場合や、無申告や期限後申告などにより、青色申告が取り消されてしまう場合もあることに留意すべきである。
A2.青色申告承認申請書は、税務署から青色申告の承認の取り消しをされた場合や、青色申告の取りやめの届出書を提出した場合を除いて、ずっと有効である。逆にいえば、税務調査で多額の指摘がされた場合や、無申告や期限後申告などにより、青色申告が取り消されてしまう場合もあることに留意すべきである。
青色申告承認申請書はどこで手に入りますか?
青色申告承認申請書は、税務署で入手できる。国税庁のサイトからダウンロードすることも可能だ。会計システムのなかには、記入されたものをダウンロードできるものもある。
青色申告承認申請書は、税務署で入手できる。国税庁のサイトからダウンロードすることも可能だ。会計システムのなかには、記入されたものをダウンロードできるものもある。
青色申告制度の歴史
青色申告は、戦後始まった制度である。きっかけは、1949年に発表された日本税制報告書、いわゆるシャウプ勧告だ。シャウプ勧告は、コロンビア大学教授を務めていたカール・シャウプを中心とした使節団が日本国内を数ヵ月間視察して税制改革についてまとめ上げたものである。
ちなみに、青色申告が「青」になった理由は、シャウプが日本人に青色について尋ねたところ、「青空のように気持ちが良い」という答えが返ってきたことに由来する。
青色申告は戦前、戦中の租税制度の問題点を、GHQによって作られた使節団が分析を行ったうえで、新たに作り上げたものだと言える。戦中戦後の日本の租税制度には、直接税中心の税制や戦中体制重視の多くの間接税といった、不公平で複雑な問題点が指摘されていた。
青色申告制度が導入されるころには、1947年に導入された申告納税制度の影響もあり、税務行政は大きく混乱していた。おびただしい更正決定と異議申し立てが行われており、納税者からの自主的な適正申告を促す必要性が生じていたのである。
個人における青色申告のメリット
・青色申告特別控除
青色申告には、数多くの特典があるが、代表的なものが、青色申告特別控除である。青色申告特別控除は、所得から最高65万円をさし引けるという制度である。
まず、青色申告特別控除の原則である55万円の控除から説明しよう。この控除を適用するためには、以下の要件がある。
(1) 不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること
(2) これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること
(3) (2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること
さらに、10万円追加の65万円の青色申告特別控除を受けるための要件は、次のようになっている。
上述の55万円の青色申告特別控除の要件に加え、その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること、またはその年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うことが必要だ。
これらの要件は、いずれか片方を満たしていればいい。55万円の青色申告特別控除の(2)(3)の要件を満たしていない場合でも、10万円の青色申告特別控除を受けることができる。
・青色事業専従者給与
生計を一にしている配偶者その他の親族が納税者の経営する事業に従事している場合、納税者がこれらの人に給与を支払うことがある。これらの給与は原則として必要経費にはならない。自由に必要経費計上を認めてしまえば、所得を操作することが可能になってしまうからである。
しかし、青色申告では、特別な取り扱いが認められており、支払った金額を必要経費に算入することができる。
(1) 青色事業専従者に支払われた給与であること
(2) 「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること
(3) 届出書に記載されている方法により支払われ、しかもその記載されている金額の範囲内で支払われたものであること
(4) 青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること
上述のとおり、青色申告承認申請書に加えて、青色事業専従者給与に関する届出書を提出する必要がある。
白色申告の場合は、必要経費の算入はできないが、事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者1人につき50万円の白色事業専従者控除が認められている。
・純損失の繰越しと繰戻し
青色申告のもう1つのメリットは、純損失の繰越しと繰戻しである。
純損失の繰越控除とは、確定申告の際に、事業所得や不動産所得などが赤字になった際、他の所得と相殺しても相殺しきれなかった所得がある場合、損失を翌年以降3年間にわたって引き継ぐことができる制度である(もちろん3年経って控除しきれなければ消滅する)。
白色申告の場合は、変動所得という特殊な所得の人だけが損失を繰り越すことができるのに対し、青色申告をしている事業者においては、事業所得と不動産所得で生じた赤字を無条件で3年間引き継げるという大きな特典がある。
・その他のさまざまな恩典
このほかにも、青色申告にはさまざまなメリットがある。
まずは、「少額減価償却資産の特例」である。30万円未満の固定資産を取得した場合、全額をその年の経費として計上できるというもので、白色申告では、この特例を利用できない。
小規模事業者においては、通常の固定資産の計上基準である10万円を超えて固定資産を購入する場合、30万円までに収まることが多いだろう。事務用パソコンを購入した場合などがあてはまる。このような場合に、すべてを経費で落とすことができるのか、固定資産計上をしなければならないのかというところで、影響はかなり大きい。
なお、「少額減価償却資産の特例」の限度額は、年間で合計300万円(会計年度が1年未満なら月割の金額)までで、限度額を超えると、その分は通常の方法で減価償却をすることになる。
また、一括評価での貸倒引当金を計上できるのもメリットである。白色申告でも一定の要件を満たせば計上できる(個別評価)が、要件はかなり厳しい。貸倒引当金とは、取引先から回収できる可能性が低い売掛金や貸付金などの一部を、あらかじめ負債として見積もっておく金額のことで、回収できないと見込まれる金額を貸倒引当金に計上し、経費に計上できる。
法人における青色申告のメリット
・欠損金の繰越控除・繰戻還付
法人の各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、繰り越して翌年以降の損金に算入することができる。
欠損金の繰越控除ができる法人は、欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出している法人である。
欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出していれば、その後の事業年度について提出した確定申告書が白色申告書でも、繰越控除の規定が適用される。ただし、M&Aをしたなど一定の場合は、欠損金の繰越控除が制限されることがある。
中小企業においては、繰り越している欠損金がゼロになるまで、控除をすることが可能だが、中小法人等以外の法人の場合は、制限がある。控除限度額は、繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得の金額に対して100分の50を乗じた金額とされている。
また、欠損金の繰戻還付という制度もある。青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合において、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻して法人税額の還付を請求できるというものだ。(ただし、この制度は原則として中小企業しか利用できない)。
・その他のさまざまな恩典
ほかにも、「少額減価償却資産の特例」も個人と同じように認められるし、青色申告を前提とした特別償却・即時償却制度や特別控除制度が多々あるため、そのような政策的な観点からの特別な減税措置については、基本的には青色申告をしていない法人については受けることができない。
個人における青色申告承認申請書の書き方
・青色申告承認申請書の雛形
所得税の青色申告承認申請書の雛形は以下のとおりである。
・青色申告承認申請書の書き方
青色申告承認申請書を書く際は、下の項目を埋めていくことになる。
税務署名……納税地を管轄する税務署名を記載する
提出日……青色申告承認申請書を提出する日を記載する
納税地……原則は住所(国内に住所のほかに居所がある人、国内に住所がない人は、住所地に代えて居所地を納税地とすることができる。国内に住所または居所のいずれかがある人が、住所または居所のほかに事業所などがある場合には、住所地などに代えてその事業所などの所在地を納税地にすることができる。)
氏名……氏名を記載する
生年月日……生年月日を記載する
職業……職業を記載する
屋号……屋号や雅号がある場合は、記載する
1.事務所又は所得の起因となる資産の名称及びその所在地
事業所得の場合は、事務所の場所や店舗の名称・場所などを、不動産所得や山林所得の場合は、物件の名称・所在地を記載する。
2.所得の種類
事業所得、不動産所得、山林所得のうち、該当するものにチェックをいれる。
3.いままでに青色申告承認の取り消しを受けたこと又は取りやめをしたことの有無
いままで事業をしていていったん廃業したり、税務調査などで青色申告を取り消されたりした場合は日付を記載する。わからない場合は、税務署に確認するとよい。初めて起業する場合は、「無」にチェックをいれる。
4.本年1月16日以後新たに業務を開始した場合、その開始した年月日
業務を開始した年月日を記入する。通常開業届に記入した開業年月日となる。
5.相続による事業承継の有無
相続によって、被相続人の行っていた事業を承継した場合には、相続開始の年月日(死亡日)と、その氏名を記入する。該当しない場合については、「無」にチェックを入れる。
6.その他参考事項
簿記方式については、該当する記帳方法を選択する。会計ソフトを利用する場合については、「複式簿記」となる。備付帳簿名は、作成する帳簿にチェックを入れる。複式簿記の場合、総勘定元帳と仕訳帳は必ず作成するので、それだけのチェックでもよいが、あとは必要に応じて追加すればよい。その他には、通常何も記入しない。
・青色申告承認申請書の提出期限について
青色申告承認申請書の提出期限は、原則として青色申告書による申告をしようとする年の3月15日である。ただし事業を開始した年については、その事業開始等の日から2ヵ月以内に提出する。提出期限が土日祝日に当たる場合は、の翌日が期限となる。
青色申告の承認を受けていた被相続人の事業を相続により承継した場合は、相続開始を知った日(死亡の日)の時期に応じて、それぞれ次の期間内に提出する必要がある。
・死亡の日がその年の1月1日から8月31日までの場合……死亡の日から4ヵ月以内
・死亡の日がその年の9月1日から10月31日までの場合……その年の12月31日まで
・死亡の日がその年の11月1日から12月31日までの場合……その年の翌年の2月15日まで
法人における青色申告承認申請書の書き方
・青色申告承認申請書の雛形
法人税の青色申告承認申請書の雛形は以下のとおりである。
・青色申告承認申請書の書き方
青色申告承認申請書を書く際は、下の項目を埋めていくことになる。所得税の青色申告承認申請書に比べると、いささか単純である。
税務署名……納税地を管轄する税務署名を記載する
提出日……青色申告承認申請書を提出する日を記載する
法人名称……法人の名称を記載する
納税地……通常、法人の本店所在地を記載する。ただし、本店が形式的な場合など、他の
主たる事務所の所在地を納税地とする場合もある。
代表者氏名……代表者の氏名を記載する
代表者住所……代表者の住所を記載する
事業種目……法人の業種(本業)を記載する
資本金又は出資金額……株式会社の場合、資本金を記載する
自平成 年 月 日~至平成 年 月 日……青色申告を開始する事業年度を記載する。
1.この申請書が次に該当するときには、それぞれ~……会社設立1期目から青色申告を行う場合は、上から2つ目の「この申請後、青色申告書を最初に提出しようとする事業年度が設立第一期等に該当する場合には~」の□にチェックを入れる。日付には履歴事項全部証明書の「会社成立の年月日」の日付を記載する。その他の場合は、基本的に空欄になる。
2.参考事項 (1)帳簿組織の状況……伝票名または帳簿名は、最低限、仕訳帳と総勘定元帳を記載する。他の帳簿があれば、それを記載する。会計ソフトを使っているなら、「会計ソフト」と記載すればよい。記帳の時期は、現金出納帳なら「毎日」、仕訳帳は「毎月」、総勘定元帳は「半年毎」「随時」などと記載する。
3.参考事項 (2)特別な記帳方法の有無……基本的には会計ソフトを使って会計帳簿を作成することになるので、会計ソフトを使う場合は、電子計算機利用のロに○をつける。
4.参考事項 (3)税理士が関与している場合におけるその関与度合い……税務署に「法人設立届出書」を提出する段階で、関与税理士、顧問税理士が決まっている場合は、税理士に記載する内容を確認し、記載する。関与税理士がいない場合は、空欄でよい。
・青色申告承認申請書の提出期限について
青色申告承認申請書の提出期限は、青色申告によって申告書を提出しようとする事業年度開始の日の前日までだ。つまり適用される前の事業年度の最終日までに提出する必要がある。
ただし、設立事業年度の場合は、設立の日以後3ヵ月を経過した日と当該事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日までとなっている。ほかにも例外があるので、普通の株式会社や合同会社等でない場合や、青色申告の承認の取り消し等が行われた場合については、個別に提出期限をよく確認する必要がある。
青色申告の取り消し
・青色申告が取り消される場合とは
このようなメリットがある青色申告だが、青色申告は取り消されてしまう場合がある。
青色申告はそもそも、しっかりと帳簿を付けていて、適正な申告をしていることを前提に恩典が認められているため、趣旨に添わないような申告をするなどした場合は、取り消されてしまう。
国税庁は、どのような場合に取り消しが行われるかについて、個人法人それぞれに事務運営指針を公表している。個人の場合の青色申告の承認の取り消しは以下のとおりだ。
1 帳簿書類を提示しない場合
所得税法に規定する帳簿書類の備付け、記録又は保存とは、単に物理的に帳簿書類が存在することのみを意味するにとどまらず、税務職員に提示することも含まれる。
したがって、税務調査で帳簿書類の提示を再三にわたり求めたにもかかわらず調査対象者が正当な理由なく提示を拒否した場合は、同号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当することとなり、その提示がされなかった年分のうち最も古い年分以後の年分について、その承認を取り消す。
2 税務署長の指示に従わない場合
帳簿書類の備付け、記録又は保存について、税務署長の指示に従わない場合には取消事由に該当することとなるが、この場合、当該指示に係る年分以後の年分について、その承認を取り消す。指示に従わない場合には、青色申告の承認の取消事由に該当する旨を告げる。
3 隠ぺい、仮装等の場合
① 決定又は更正をした場合において、当該決定又は更正後の所得金額(以下「更正等に係る所得金額」という。)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額(以下「不正事実に係る所得金額」という。)が、当該更正等に係る所得金額の50%に相当する金額を超えるとき(当該不正事実に係る所得金額が 500万円に満たないときを除く。)
② 純損失の金額を減額する更正(所得金額があることとなる更正を含む。)をした場合において、当該更正により減少した部分の純損失の金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく金額(以下「不正事実に係る純損失の金額」という。)が、当初の申告に係る純損失の金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額。以下「申告に係る純損失の金額」という。)の50%に相当する金額を超えるとき(当該不正事実に係る純損失の金額が 500万円に満たないときを除く。)
③ 帳簿書類への記載等が不十分である等のため、推計によらなければ適正な所得金額の計算ができないと認められる状況にある場合
④ 期限後申告書又は修正申告書の提出があった場合において、これらの申告書の提出が、調査があったことにより決定又は更正がされるべきことを予知してされたものであるときは、それぞれその期限後申告又は修正申告後の所得金額又は純損失の金額につき決定又は更正があったものとして①~③の取扱いを適用する。
⑤ ①~③に該当する場合であっても、その年分前7年以内の各年分につき、次の要件のいずれをも満たし、かつ、今後適正な申告が期待できると認められるときは、青色申告の承認の取消しを見合わせる。
1 青色申告の承認の取消しを受けていないこと
2 既往の調査による不正事実に係る所得金額又は不正事実に係る純損失の金額(純損失が減少した部分の金額を含む。)が 500万円に満たないこと
その他、個別の事情を判断して税務署長が判断できるという規定となっている。
また、法人にも個人と同様の青色申告の承認の取消制度があり、要件は以下のようになっている。
1 帳簿書類を提示しない場合
2 隠ぺい、仮装等の場合
3 無申告又は期限後申告の場合
その他、個別の事情を判断して税務署長が判断できるという規定となっている。
青色申告制度はさまざまな恩典を享受できる納税者にとって非常にありがたい制度である。しかし、その利用はしっかりと帳簿をつけて、根拠に基づいた適正な申告を行うという条件の下で特別に認められているものであるから、誰もが利用できるというわけではない。
税務調査における多額の指摘など、無申告や期限後申告などが重なれば、容易に取り消されてしまうものだと認識したうえで、適時な帳簿づけを行っていくことが極めて重要である。