近年、イオンの従業員の平均年収は右肩上がりだ。小売業界は給与が高いほうではないが、この調子でいけば「平均年収1,000万円企業」となる日が来るかもしれない。イオンの有価証券報告書から平均年収の推移を確認しつつ、同社の未来を考察する。
小売業界で新卒学生から断トツの人気
イオンは近年、小売業界への就職を目指す新卒学生に人気だ。就職情報サイト「マイナビ」と日本経済新聞による「2021年卒版就職企業人気ランキング」で、イオングループは「百貨店・スーパー・コンビニ」部門で1位に輝いた。
2021年卒版就職企業人気ランキング(「百貨店・スーパー・コンビニ」部門)
1位 | イオングループ |
2位 | 高島屋 |
3位 | 阪急阪神百貨店 |
4位 | 三越伊勢丹グループ |
5位 | セブン-イレブン・ジャパン |
小売業のイメージが強いが、イオンは金融業やサービス業、ディベロッパー業なども展開しており、グループ企業は300社を超える。
海外展開にも積極的だ。中国やASEAN(東南アジア諸国連合)地域でも小売・金融事業を展開しており、このような事業の多角化や国際化が学生の目には魅力的に映るのだろう。
イオンの平均年収の推移は?2020年2月期は864万5,087円
冒頭で触れたとおり、近年イオンの平均年収は右肩上がりで推移している。
上場企業の平均年収は、会計年度ごとに公表される「有価証券報告書」で確認できる。イオンの過去5年分の有価証券報告書から、平均年収の推移を紹介しよう。
イオンの従業員の平均年収の推移
会計年度 | 従業員の平均年収 |
2020年2月期 | 864万5,087円 |
2019年2月期 | 824万7,310円 |
2018年2月期 | 799万4,665円 |
2017年2月期 | 812万4,517円 |
2016年2月期 | 822万3,330円 |
上記からもわかるように、2018年2月期から2020年2月期にかけて、イオンの従業員の平均年収は右肩上がりだ。2019年2月期から2020年2月期にかけては、39万7,777円(約4.8%)も増えている。
このペースで平均年収が増えていけば3〜4年で、やや増加ペースが鈍っても5〜6年でイオンが「平均年収1,000万円企業」になる可能性がある。そうなればさらに新卒学生に注目され、優秀な人材を採用しやすくなるだろう。
純利益も右肩上がり、今後は総合金融事業が急成長!?
ちなみに純利益も以下の表のように右肩上がりであり、平均年収の増加は業績の好調ぶりを反映していることがわかる。
イオンの当期純利益の推移
会計年度 | 従業員の平均年収 |
2020年2月期 | 268億3,800万円 |
2019年2月期 | 236億3,700万円 |
2018年2月期 | 245億2,200万円 |
2017年2月期 | 112億5,500万円 |
2016年2月期 | 60億800万円 |
イオンが展開しているさまざまな事業において、今後はどのセグメントが伸びていくのだろうか。
2020年2月期のセグメント別の営業収益(売上高)と前年比は以下のとおりで、GMS(総合スーパー)事業とSM(スーパーマーケット)事業が稼ぎ頭。一方で大きく伸びているのは、「ヘルス&ウエルネス事業」と「総合金融事業」だ。
▽事業セグメント別の営業収益と増減率
事業セグメント | 営業収益 | 前年比 |
GMS(総合スーパー)事業 | 3兆705億円 | -0.3% |
SM(スーパーマーケット)事業 | 3兆2,243億円 | -0.3% |
ヘルス&ウエルネス事業 | 8,832億円 | +11.2% |
総合金融事業 | 4,847億円 | +11.0% |
ディベロッパー事業 | 3,791億円 | +3.2% |
サービス・専門店事業 | 7,395億円 | -3.8% |
国際事業 | 4,392億円 | +0.4% |
ヘルス&ウエルネス事業と総合金融事業の営業収益は、ともに2桁成長となっている。特にクレジットカードが柱の総合金融事業は、日本国内でもキャッシュレス化が進展しつつあることを追い風に、積極的なキャンペーンやアプリ機能の拡充などにより、多くの新規会員を獲得している。
年収1,000万円企業になる日は来るのか?
純利益が右肩上がりで、有望な事業セグメントを擁するイオン。成長ドメインを複数抱えていることを考えると、イオンが「平均年収1,000万円企業」になる日は遠くないように思える。
イオンは、毎年5月末頃に有価証券報告書を提出・公表する。2021年2月期の従業員の平均年収はどこまで伸びているのか、次の有価証券報告書の内容に注目したい。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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