株主優待は、個人投資家にとって株式投資の大きな魅力だ。今回は大手回転寿司チェーン「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」の4社の特徴と優待内容を比較し、紹介する。銘柄を選ぶ際のポイントや注意点もあわせて確認しておこう。

1,大手回転寿司チェーンの株主優待の特徴

大手回転寿司チェーン4社の株主優待「配当+優待利回り」ランキング!くら寿司、スシロー…最もお得なのはどこ?
(画像=哲 菊地/stock.adobe.com)

まずは株主優待の仕組みやメリット、大手回転寿司チェーンの株主優待の特徴を簡単にまとめておこう。

株主優待とは?仕組みやメリット

株主優待とは、企業が株主に対し自社の製品やサービス、その他地産品や金券類などを贈る制度のこと。株主還元の一環として行われている、日本独自の制度だ。

個人投資家からの人気は高く、約1,500社が導入している(2021年4月時点)。

株主優待の対象は、「権利確定日時点で株主名簿に記載されている株主」であり、株主優待の権利を獲得するには、各企業の「権利確定日」の2営業日前にあたる「権利付き最終日」までに株を購入する必要がある。

優待の内容は、保有株数や保有期間によって変わる銘柄も多く、保有株数が増えると優待内容もアップする。ただし、株数が2倍になれば優待金額が2倍になるわけではないので注意したい。

一般的には、優待獲得に必要な最低株数を保有したときに、優待利回り(投資金額に対する優待金額の割合)が最も高くなる。そのため同じ銘柄の株数を増やすよりも、優待獲得に必要な最低株数で、複数の銘柄に投資したほうが効率よく優待を獲得できる。

大手回転寿司チェーンの株主優待は食事券や優待ポイント

大手回転寿司チェーン4社では、自社店舗での飲食代金の支払いに利用できる優待食事券や、優待ポイントを株主優待としている。

2,大手回転寿司チェーン4社の「配当+優待利回り」ランキング

次の表は、優待獲得に最低限必要な100株を保有した場合の「配当+優待利回り」が高い順に、4社をランキングしたものだ(以下、2021年4月9日時点の情報に基づく内容)。

銘柄名
(コード)
株価
2021/4/9終値
権利 確定月 優待内容
(100株以上
保有株主)
予想配当
利回り
配当+優待
利回り
優待獲得
最低投資額
(必要株数)
優待
利回り
(年間)
【かっぱ寿司】
カッパ・クリエイト
(7421)
1,501円 3月
9月
株主優待ポイント
・3,000円分
0.00% 4.00%
15万100円
(100株)
4.00%
【はま寿司】
ゼンショーHD
(7550)
2,941円 3月
9月
優待割引券
・1,000円分
0.68% 1.36%
29万4,100円
(100株)
0.68%
【くら寿司】
くら寿司
(2695)
8,290円 4月 優待食事券
・5,000円分
※株式分割後(200株)
の優待内容
0.48% 1.08%
82万9,000円
(100株)
0.60%
【スシロー】
FOOD &
LIFE COMPANIES
(3563)
5,340円 3月
9月
優待割引券
・1,000円分
0.42% 0.79%
53万4,000円
(100株)
0.37%
※各社IR情報等をもとに筆者作成

優待利回りは、カッパ・クリエイト(かっぱ寿司)の4%が突出している。そのほかの3社の優待利回りは年0.5%前後、配当利回りとあわせて年1%前後である。

くら寿司では、2021年5月1日を基準として、1株を2株に分割されることが決まっており、2021年4月末分から優待内容が変更になる(後述)。

3,大手回転寿司チェーン銘柄の特徴と優待内容を解説

大手回転寿司チェーン銘柄について、それぞれの特徴と優待内容を詳しくみていこう。

1位,カッパ・クリエイト(7421)……グループ内の店舗で優待を共通利用可能

カッパ・クリエイトは、回転寿司チェーン「かっぱ寿司」を運営する会社だ。

かつては業界トップに君臨していた「かっぱ寿司」だが、2011年に「スシロー」にその座を奪われ、現在は業界4位に低迷している。安さを追求し、原材料費削減を進めたことで品質が低下し、「安かろう悪かろう」のイメージがつき、客離れを招いた。その後は、品質の向上に舵を切ったことで、徐々にではあるが持ち直しの兆しが見えつつある。

業績がドン底状態にあった2014年に、外食大手「コロワイド(7616)」に買収されており、現在はコロワイドグループの一員となっている。

100株以上保有する株主には、年2回、かっぱ寿司をはじめ、コロワイドグループの店舗で支払いに利用できる「株主優待ポイント」が進呈される。ポイントは、和牛ステーキ肉など地産品との交換もできる。

<保有株数ごとの優待内容(3月・9月/年2回)>
・100株以上……3,000ポイント(3,000円相当)/回
・1,000株以上……6,000ポイント(6,000円相当)/回
・2,000株以上……1万2,000ポイント(1万2,000円相当)/回

他社に比べ優待金額が大きいことに加え、株価が低水準にあることで、100株保有時の優待利回りは突出して高い。

優待金額をアップするには、1,000株以上保有が必要となるためハードルは高い。優待狙いであれば100株保有がおすすめだ。

2位,ゼンショーホールディングス(7550)……優待は「すき家」「なか卯」などでも利用可能

ゼンショーホールディングスは、牛丼チェーン「すき家」、丼・うどん「なか卯」、ハンバーグ「ビッグボーイ」など多くの業態を展開する大手外食グループ。「はま寿司」はその中でも、すき家と並ぶグループの中心的ブランドだ。

回転寿司大手4社の中で、開業は最も遅い2002年ながら、急速に店舗を拡大した。2021年3末時点で全国に534店舗を展開している。国内店舗数ではくら寿司(国内484店舗)を抜き、トップのスシロー(国内583店舗)に次ぐ規模だ。

はま寿司は、平日1皿90円(税別)という低価格設定(一部店舗では未実施)、充実したサイドメニューなどに特徴がある。特に「寿司屋のラーメンとは思えない味」と評価されているラーメンは、2013年の登場以来、現在も続いている人気商品だ。

100株以上保有する株主には、保有株数に応じて年2回、はま寿司ほか、すき家などゼンショーグループ各店舗で利用できる食事優待券が進呈される。

<保有株数ごとの優待内容(3月・9月/年2回)>
・100株以上……1,000円分/回
・300株以上……3,000円分/回
・500株以上……6,000円分/回
・1,000株以上……1万2,000円分/回
・5,000株以上……3万円分/回

3,000円分以上の優待券は、「すき家 牛丼の具」などとの交換も選択できる。

3位,くら寿司(2695)……2021年5月の株式分割で優待金額が実質2倍に

くら寿司は、回転寿司チェーン「無添くら寿司」を運営する会社だ。「食の戦前回帰」を企業理念とし、すべての食材に化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料を一切使用しない「無添加」にこだわりがある。

くら寿司といえば、「ビッくらポン」も人気だ。ビッくらポンとは、テーブルに備え付けられた皿を回収するポケットに、皿を5枚入れるごとにゲームに挑戦でき、あたりが出るとオリジナルの景品がもらえるサービスのこと。エンタメ性を高め、来店頻度や客単価のアップに貢献している。

100株以上保有する株主には、保有株数に応じて年1回、「無添くら寿司」で利用できる優待割引券が進呈される。

<保有株数ごとの優待内容(4月/年1回)>

保有株数 優待内容
2021年4月30日
までの株数(株式分割前)
2021年5月1日
以降の株数(株式分割後)
100株以上 2,500円分の
優待割引券
100株以上 200株以上 5,000円分の
優待割引券
200株以上 400株以上 1万円分の
優待割引券
500株以上 1,000株以上 2万円分の
優待割引券
※筆者作成

「くら寿司」株は、2021年5月1日付で1株が2株に分割され、4月30日時点で100株を保有している場合、5月1日に保有株数は200株に増える。株価が2分の1になるため、保有金額自体は変わらない。

これにより、100株保有している株主は従来200株を保有する株主を対象とした優待を受け取れるようになり、実質的に優待金額が2倍となる。

執筆時点(2021年4月9日)では優待獲得に約80万円必要だが、株式分割後は約40万円程度で獲得できるようになり、投資しやすくなる。

4位, FOOD & LIFE COMPANIES(3563)……優待は「スシロー」や居酒屋で使える割引券

FOOD & LIFE COMPANIESは、回転寿司チェーン「スシロー」を運営する会社だ。2011年に業界トップになって以降、業績は右肩上がりの成長が続いている。コロナ禍の影響を受けた2020年9月期も連続増収を達成し、売上は過去最高を更新、減益とはなったものの黒字を確保した。

スシローの魅力は、「うまさ」へのこだわり、業界最高水準のネタにある。店舗で提供されるネタは職人の目利きにより世界中から厳選されたもの。2017年には、水産物販売サービス「羽田市場(はねだいちば)」とタッグを組み、各地の漁業者から直接仕入れルートを確保。旬の国内産天然魚を全国の店舗で新鮮な状態で提供できる体制を整えている。

品質を追求すれば原価率は高くなるが、運営の効率化によってそのほかの経費を抑え、高い利益率を確保している。テイクアウト・デリバリーサービスをいち早く拡充し、持ち帰り専門店「スシローTo Go」の立ち上げなど、コロナ禍による新しい生活様式への対応も積極的に進めている。

100株保有する株主には、保有株数に応じて年2回、「スシロー」および大衆寿司居酒屋「鮨・酒・肴 杉玉」で利用できる優待割引券が進呈される。

<保有株数ごとの優待内容(3月・9月/年2回)>
・100株以上……1,000円分/回
・200株以上……1,500円分/回
・ 400株以上……2,000円分/回
・800株以上……4,000円分/回
・2,000株以上……1万円分/回

4,大手回転寿司チェーンの株主優待銘柄を選ぶときの注意点

大手回転寿司チェーン優待銘柄へ投資を検討する際には、次のような点に注意しておきたい。

大手回転寿司チェーンの中でも業績は各社異なる

下表は、大手回転寿司チェーン3社の2019年および2020年の売上、利益をまとめたものだ(はま寿司は単体での売上・利益を公開していないため除外)。

決算期 売上高 当期純利益
スシロー 2019年9月期(実績) 1,990.88億円 99.59億円
2020年9月期(実績) 2,049.57億円 64.57億円
2021年9月期(予想) 2,506.00億円 105.00億円
くら寿司 2019年10月期(実績) 1,361.34億円 37.66億円
2020年10月期(実績) 1,358.35億円 ▲2.62億円
2021年10月期(予想) 未定 未定
かっぱ寿司 2019年3月期(実績) 761.58億円 1.42億円
2020年3月期(実績) 748.14億円 ▲2.67億円
2021年3月期(予想) 647.17億円 ▲11.00億円
出所:各社有価証券報告書・決算短信より筆者作成(2021年4月9日現在)

コロナ禍にも対応し、従来の成長軌道へ回帰、過去最高売上更新を予想する「スシロー」。一定の底堅さがあり、アフターコロナへ向け国内外で出店を加速させる「くら寿司」。コロナ禍からの回復が遅れ、苦戦が続く「かっぱ寿司」。

回転寿司チェーンの中でも各社状況は異なり、業績には大きな差がある。この差は株価や配当に反映され、投資成果や優待利回りにも大きく影響する。

株価の低迷が要因で優待利回りが高い銘柄の場合、投資はより慎重に行うようにしたい。現時点で業績や株価が低迷していても、今後回復の見込みがあれば、逆に株を安く買えるチャンスともなる。

優待内容の改悪、株価下落リスク

配当や株主優待は「利益」を株主に還元するものであり、業績が悪化して利益が減少すれば、株価下落のほか、配当が減額されたりや優待内容が改悪されるおそれがある。

特に人気の優待銘柄は、優待の改悪によって株価の下落に拍車がかかるおそれがあり、注意が必要だ。

5,4社以外で株主優待を実施する回転寿司チェーンも要チェック

回転寿司チェーンを運営していて株主優待を実施している会社は他にもある。

・「魚べい」や「元気寿司」などを運営する「元気寿司(9828)」
・「すし銚子丸」を運営する「銚子丸(3075)」
・「にぎりの徳兵衛」や「海鮮アトム」を運営する「アトム(7412)」
・「にぎりの長次郎」を運営する「SRSホールディングス(8163)」

大手4社に比べて利用できる地域は限られるが、近くに店舗がある人は、これらの銘柄も要チェックだ。

執筆・竹国弘城(ファイナンシャルプランナー)
証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®︎

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