投資信託には、信託期間が決まっているファンドと無期限のファンドがあります。しかし、信託期間に関わらず行われる可能性があるのが、「繰上償還」です。どのような運用状況になると、繰上償還が実施されるのでしょうか。
投資信託の信託期間
投資信託には、信託期間が決まっている銘柄と無期限の銘柄があります。金融情報サイト「モーニングスター」の調査による信託期間別本数比率は、5年未満34.1%、5年以上10年未満26.8%、10年以上2.0%、無期限37.1%(2019年8月末現在)です。
同じくモーニングスターの調査で、2015年12月末時点で運用されていたファンドのうち、繰上償還になった比率は6.1%でした。これは、決して低い数値とはいえません。
投資信託で資産運用を行う際、目的に沿って信託期間を選ぶことがあります。たとえば、子どもの大学入学資金を用意するために、信託期間10年の公募投資信託を購入するなどです。
目的に沿った資産運用をする場合、繰上償還されては困ります。10年間運用するつもりで購入した投資信託が7年で償還された場合、残りの期間は別の運用方法を考えなくてはなりません。このように、信託期間と繰上償還の有無は重要なのです。
繰上償還はなぜ起こるのか
信託期間が決まっているファンドに、なぜ繰上償還が起こるのでしょうか。実は、投資信託の目論見書には繰上償還に関する但し書きが記されています。たとえば「e-MAXIS Slim 米国株式(S&P500)」というファンドの但し書きは、以下のとおりです。
- 受益権の口数が10億口を下回ることとなった場合
- 対象インデックスが改廃されたとき
- ファンドを償還させることが受益者のために有利であると認めるとき
- やむを得ない事情が発生したとき
投資信託は、解約が増えて資産規模が小さくなると、効率的な分散投資を行えなくなります。当初予定していた運用が難しくなるため、設定されていた期限を前倒しして償還することになるのです。
繰上償還になるとどうなる?
繰上償還はいきなり行われるわけではなく、事前にファンド保有者に賛否を問います。「繰上償還(予定)のお知らせ」という通知が送付されたら、1ヵ月以内に異議申し立てをすることができます。3分の1以上の反対があった場合は、繰上償還は行われません。
繰上償還が行われると、信託期間は終了します。運用が終了すると、その時点の時価総額から諸費用を差し引いた残高が、保有口数に応じて分配されます。分配の結果損益が確定しますが、一般的には損失が出るケースが多いようです。利益が出ていた場合は、運用益に対して税金の支払いが生じます。
繰上償還しにくいファンドを選ぶには
繰上償還にならないファンドを選ぶには、どうすればよいのでしょうか。上記の繰上償還になる条件にあるように、一定の受益権口数を下回ると繰上償還になる可能性が高まります。繰上償還のリスクを抑えるためには、なるべく純資産規模の大きいファンドを選ぶべきです。
特定のテーマや業種に限定したファンドは市場動向に左右されやすいため、比較的リスクが高いといえます。テーマのブームが去ると運用成績が悪化し、残高が減少に転じるケースがあるのです。株価指数に連動するインデックスファンドなら、テーマや業種に偏ることはないので安全性が高いといえるでしょう。
投資信託のリスクの1つである繰上償還を避けるためには、既発債の場合は純資産残高のチェックが欠かせません。純資産残高は、証券会社Webサイトの投資信託個別銘柄画面で確認できます。目論見書の繰上償還条件と純資産残高を照らし合わせて、安全性の高いファンドを選ぶようにしましょう。
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