日本銀行の黒田東彦総裁は、13日の参議院財政金融委員会で音喜多駿議員(日本維新の会)の質問に答え、「課題はあるものの、ステーブルコインは便利な決済手段になる」という考えを示した。
黒田総裁はステーブルコインについて、法的確実性、健全なガバナンス、オペレーションの頑健性、サイバー耐性などがしっかり確保されれば、多くの人が利用し得る便利な決済手段になると評価する姿勢を示した。
しかしステーブルコインの発行については、マネーロンダリング、データプライバシー、消費者や投資家の保護など、様々な課題があることも言及。日本のみならず海外でも、決済手段としてのステーブルコインは普及していないことを付け加えた。
これを受けて音喜多議員は、黒田総裁に「(日本円と連動した)JPYCなどのステーブルコインは、ますます決済手段として存在感が大きくなる」と指摘し「ブロックチェーンを使用したフィンテック技術がますます発達していく中で、民間デジタルマネーを規制するばかりではなく促進する取り組みが必要なのではないか?」と提案した。
これに対し、黒田総裁は「暗号資産(仮想通貨)については、背景となる裏付け資産がなく、非常に投機的な取引が行なわれていることを各国の中央銀行は懸念している。ただ一方で、ステーブルコインは資産の裏付けがある」と答弁し、法整備が整い課題が解決すれば、多くの人にとって決済手段としての機能を果たすだろうという見解を示した。
その上で黒田総裁は、民間でステーブルコインを発行する場合、競争だけでなく協調を促進する触媒機能を日銀は果たさないといけないという持論を展開し、「日銀としては、(ステーブルコインの)決済システムの改善や高度化に向けて幅広い関係者との議論を進めている」ことを明かした。また「日銀としては、民間が発行するステーブルコインの取り組みをしっかりと後押ししていきたい」と述べた。
これに対し音喜多議員は、「ステーブルコインを発行する民間事業者の中には、日本の法的な定義が見えづらい、規制の方向もどのような方向に進むのかわからないと困惑する声がある。世界の潮流に取り残されないよう、日銀として後押ししてもらいたい」と要望した。
音喜多議員は質疑後、自身のTwitterで、「日銀・黒田総裁よりステーブルコインについて想定以上に前向きな答弁があった」と評価。来週は麻生大臣にも再び暗号資産について質問することを予告した。(提供:月刊暗号資産)