将来のために、余裕資金100万円で資産形成する場合、どのような方法が考えられるのか。その投資方法のメリット・デメリットは何か。さまざまな資産運用方法のリスクとリターンの兼ね合いを考慮しながら、100万円で資産運用する際のポイントを解説する。

1,資産運用のリターンとリスクの関係性

初心者向け!100万円から始めるおすすめ投資・資産運用5選 メリット・デメリットも紹介
(画像=tamayura39/stock.adobe.com)

資産運用方法を決める際に重要になるのは、「リスク」と「リターン」の兼ね合いである。

リスクとリターンは常に相関関係にあり、あらゆる金融商品において、「リスクが小さければリターンも小さい」、「リスクが大きければリターンも大きい」という傾向が見られる。資産運用方法を決める際には、自分のリスク許容度と、リターンの期待値が合致する金融商品を選ぶことが基本原則だ。

金融商品ごとのリスクとリターンの関係は下の図の通りである。

リターンとは?

「リターン」は、投資の結果、得られる収益の大きさを指す。

資産運用方法を語る上で問われるリターンには、投資家が求める収益の期待値という意味も含まれる。

金融商品を投資する相場環境によっては、リターンが収益になる場合と、損失になる場合がある。収益が得られる場合でも、金融商品の商品性によって、収益が小さな商品から、大きな収益を得られる商品まで幅広い。

実際のリターンの大きさは、預貯金や公社債であれば年利率を見ればリターンを知ることができる。

外貨預金や外貨建MMFでは為替取引が発生するので、年利率から為替手数料や予想される為替差益または為替差損を加味しておおまかに判断する。

投資信託やREIT(不動産投資信託)なら、トータルリターン(一定期間の値上がり益と分配金を合算して、費用を差し引いた収益率)を見るとリターンの実績を知ることができる。

相場が変動する、もしくは銘柄ごとに値動きがある国内株式や外国株式、先物取引・オプション取引、FX、仮想通貨などは、商品や銘柄、期間などによってリターンが大きく異なる。そのため、過去の収益率を参考にして、将来的なリターンを予測するのがよいだろう。

リスクとは?

「リスク」とは、投資によって得られる収益の振り幅のことであり、投資運用にはさまざまなリスクがともなう。

リスクの大きさは投資家本人が許容できるリスクの大きさ(リスク許容度)や、金融商品自体の商品性に関わるリスク(リスクの種類)がある。

これらのリスクを包括的に考慮してリスクの大きさを測り、そのリスク水準に適した商品を選択する必要がある。

・さまざまな視点から見た金融商品のリスク許容度
リスク許容度は、証券会社やFX会社などで、新規に口座開設申込をする際に、あるいは信用取引口座や外国株式取引口座などを開設する際に問われる内容である。

投資家本人のリスク許容度によって、投資できる金融商品が異なるため、証券会社やFX会社では口座開設審査時点で投資基準をクリアしているかを判断している。年齢、投資期間など、主な8つの視点における、リスク許容度の考え方の例は以下の通りである。

<年齢>
・年齢が若い→リスク許容度大
・50歳代以上→リスク許容度小

<投資期間>
・短期→リスク許容度小
・長期→リスク許容度大

<資金が必要になる時期>
・持ち家購入までの10年間→リスク許容度中
・退職までの20年→リスク許容度大

<家族構成>
・家族が多い→リスク許容度小
・独身→リスク許容度中〜大

<資産>
・金融資産を含めた余裕資金が多い→リスク許容度大
・余裕資金が少ない→リスク許容度小

<年収>
・年収が多い→リスク許容度中
・年収が少ない→リスク許容度小

<性格>
・慎重→リスク許容度小
・積極的→リスク許容度大

<投資経験>
・投資経験なし→リスク許容度小
・投資経験あり→リスク許容度中~大

・金融商品の商品性にともなうリスクの種類
資産運用におけるリスクとは、損失が出ることだけを意味するのではなく、利益が不確定であることや、価格の変動幅の大きさもリスクとして位置付けられている。

金融商品にはさまざまな潜在的リスクがあり、主に下記6種類のリスクを考慮した上で、商品を選択しなければならない。

<価格変動リスク>
リスク内容:金融商品の価格の変動幅(ボラティリティ)が大きく変動すること
主な商品:株式、不動産、先物OP、FX、仮想通貨

<信用リスク>
リスク内容:
【株式】投資先の企業が将来存続する、または倒産して株式が無価値になるリスク
【債券】投資債券の元本または利子が予定通り支払われる、あるいは経営の悪化や国の財政破綻で支払われないリスク 主な商品:株式、債券

<為替変動リスク>
リスク内容:外国為替レートの変動により、投資した時点より、売却または満期時の商品価値が上がる、もしくは下がるリスク
主な商品:外貨預金、外貨建MMF、外貨建債券、外国株式、FX

<カントリーリスク>
リスク内容:金融商品の投資対象国に起こる政情不安や経済危機、社会情勢の変化など
主な商品:外貨預金、外貨建MMF、外貨建債券、外国株式、FX

<流動性リスク>
リスク内容:市場規模が小さい、もしくは取引量が少ないことで発生する、取引が成立しないリスク、または希望通りの条件で約定できないリスク
主な商品:株式、投資信託、債券

<金利変動リスク>
リスク内容:金利と価格の変動によるリスク(金利上昇→価格下落、金利下落→価格上昇)
主な商品:債券

初心者は「ハイリスク・ハイリターン商品を避ける」

投資初心者が金融商品を選ぶ場合、年齢や投資可能期間、資産などの条件からリスク許容度が高い人であっても、ハイリスク・ハイリターンの金融商品を避けることが鉄則だ。

投資運用でより大きな利益を獲得するためには、収益化のポイントを頭で理解するだけでは不十分だ。経験を積み重ねて身に付けた相場観、利益確定や損切りのタイミングを冷静に判断できる客観性、投資家心理を読んで流れに乗るといった心理的な要素も必要になる。

投資技術を向上させながら相場観を養うには、何度もトライ&エラーを繰り返して、値動きを体感する実戦経験が不可欠だ。

投資初心者が、こうした経験を積まないうちに、最初からハイリスク・ハイリターンの商品に投資すると、一度に多額の資金を失って全財産を失う危険性もある。

もしもの場合の損失額を最小限に抑えて、投資経験を継続するには、結果的に得られる利益が少額であったとしても、やはりローリスク・ローリターンの金融商品から始めることが肝要だ。

一方で、投資知識やリスク情報を十分理解できている、もしくは資産分散が可能であれば、ミドルリスク・ミドルリターンの商品を選択することも可能だろう。

2,おすすめの投資先① 国内株の株式投資

ここでは、次の条件を想定して、数種類の投資方法を提案する。

<前提条件>
・投資初心者
・基本的な投資知識がある
・資産運用に回せる余裕資産が100万円程度
・資金が必要な時期まで約5年

最初におすすめするのは、近年、幅広い年代に身近な投資方法として認知されてきた国内株式の「株式投資」である。

株式投資では、投資家は、上場企業が発行する株式を単元株(100株)単位で購入する。株式を購入した株主に対しては、企業は議決権や配当などの株主の権利を付与する。株主優待制度のある企業では、自社のオリジナル商品やサービス、金券などの株主優待も提供する。

投資対象の上場株式は株式市場で売買されているため、常に株価が変動している。そのため、株式の購入時と売却時の株価が同じとは限らない。買付時より高く売却できれば値上がり益を得られるが、買付時より低い株価で売却すると、値下がり損(損失)が出る。

投資初心者向けの国内株投資の投資事例とトータルリターン

投資初心者の場合、株式投資の中でも比較的ローリスク・ローリターンに位置付けられる、長期保有を前提とした配当目的の株式投資がおすすめだ。

リスク分散のため、配当利回りの高い、以下の5銘柄を単元株ずつ購入してポートフォリオを組み、5年間保有した後に、売却・現金化すると仮定して、トータルリターン(累積投資収益率)を検証する。

リターンの算出には1株あたり配当金や購入価格、売却価格が必要になる。今後5年間の予想値を取得できないため、インカムリターンとトータルリターンは、便宜上、直近5年間の1株あたり配当金や特定日の株価をもとに算出する。

※ここでは、おおまかなトータルリターンをつかむことが目的なので、取引手数料や所得税等については考慮しないものとする

<取引金額とプライスリターン>

会社名
<銘柄コード>
買付時株価
2016/3/31終値
(初期投資額)
売却時株価
2021/3/31終値
(売却額)
プライスリターン

(値上がり益)
長谷工コーポレーション
<1808>
1,048円
(10万4,800円)
1,549円
(15万4,900円)
47.81%
(+5万100円)
熊谷組
<1861>
2,860円
(28万6,000円)
3,005円
(30万500円)
5.07%
(+1万4,500円)
住友商事
<8053>
1,118.5円
(11万1,850円)
1,577円
(15万7,700円)
40.99%
(+4万5,850円)
MrMax
ホールディングス
<8203>
283円
(2万8,300円)
719円
(7万1,900円)
154.06%
(+4万3,600円)
三井住友
フィナンシャルグループ
<8316>
3,412円
(34万1,200円)
4,007円
(40万700円)
17.44%
(+5万9,500円)
総額 87万2,150円 108万5,700円 24.49%
(+21万3,550円)
※プライスリターン(値上がり率)=(売却額-初期投資額)÷初期投資額×100

<直近5年間のインカムリターンと売却時のトータルリターン>

会社名
<銘柄コード>
配当金によるインカムリターン 売却時の累積
トータルリターン※2
(概算収益額※3)
1年間
(1株あたり配当)
5年間
(累積1株あたり配当)
長谷工コーポレーション
<1808>
2.86%
(30.00円)
28.63%
(300.00円)
76.44%
(+8万100円)
熊谷組
<1861>
2.45%
(70.00円)
17.48%
(500.00円)
22.55%
(6万4,500円)
住友商事
<8053>
4.47%
(50.00円)
30.13%
(337.00円)
71.12%
(+7万9,550円)
MrMaxホールディングス
<8203>
4.95%
(14.00円)
33.57%
(95.00円)
187.63%
(+5万3,100円)
三井住友
フィナンシャルグループ
<8316>
4.40%
(150.00円)
25.79%
(880.00円)
43.23%
(+14万7,500円)
総額 3.60%
3万1,400円
24.22%
21万1,200円
51.65%
(+42万4,750円)
※1,インカムリターン=配当総額÷初期投資額×100
※2,トータルリターン=累積インカムリターン+プライスリターン(値上がり率)
※3,「初期投資額×トータルリターン(%)」と「概算収益額」が異なるのは、
小数点第3位の値を四捨五入してトータルリターン(%)を算出したためである

初期投資額87万2,150円を、配当金を受け取りながら、5年後に売却した場合、理論上は42万4,750円増加し、総額129万6,900円になる計算だ。
※実際には、この金額から取引手数料と、所得税等および住民税が差し引かれる

ローリスク・ローリターンの配当目的の株式投資でも、好配当利回り銘柄を選び、5年~10年程度の長期運用をすると、配当金が積み上がる。リスク分散を兼ねて、数種類の銘柄に分散投資すれば、投資金額に応じて取得できる配当金総額も大きくなる。

売却額が購入額を下回って損失が出た銘柄があっても、リスク分散されているため、損失額もある程度相殺される。

100万円の余裕資金があれば、投資初心者でも、時間を味方に付けて、銀行の定期預金を大幅に上回るリターンを獲得することも可能なのだ。

なお、配当目的の株式投資といえども、銘柄の選び方によっては、業績悪化で配当金が減配、無配になることもある。上記のトータルリターン一覧は、参考程度に考えてほしい。

国内株の株式投資のメリット

・メリット1,相場環境が良ければ利益が大きくなる

上場株式には値動きがあるので、買付時の価格より高く売却できれば、大きな利益を出すことができる。

・メリット2,自分の投資スタイルに合った利益の出し方を選べる

株式投資にはさまざまな投資スタイルがある。値上がり益を目的とする投資、配当を目的とする投資、バリュー株投資、グロース株投資、テーマ株投資など、自分の投資方針に適した方法を選ぶことができる。

・メリット3,株主優待目的の投資もできる

近年は、株主優待を目的とした国内株式投資に注目が集まっている。

株主優待制度を設けている企業の株式を単元株保有しているだけで、株主だけの特典として、企業のオリジナル商品セットが贈呈されたり、グループ企業のサービスや商品をお得に利用できたりする。

国内株の株式投資のデメリット

・デメリット1,利益を出すまでにある程度の経験値が必要

株価は、企業の業績だけでなく、企業の好材料または悪材料のニュース発表や報道、銘柄に対する需要と供給など、さまざまな要因が相互作用して決まる。株式相場は常に動いており、投資上級者といえども、正確に予測することは難しい。

その上、初心者のうちは、売買の投資判断が感情に左右されやすく、適切なタイミングで客観的に取引を行って利益を出すことは難易度が高い。

株式投資を始めたばかりのうちは、大きな損失を出さないことを第一に考えて、小さな失敗を繰り返しながら、取引の経験値を上げていく姿勢が大切だ。

・デメリット2,なんとなく株式投資しても利益は出せない

人からすすめられるままに株式を購入したり、直感で銘柄を選んだり、もしくは適当なタイミングで売買したりしても、ビギナーズラック以外で利益が出ることはほぼありえない。

株式投資は、調査と分析、適切な投資判断があってはじめて利益を出せる投資方法だと心得ておく必要がある。

3,おすすめの投資先② 米国株の株式投資

為替取引が発生するものの、米国株投資も国内株式投資同様におすすめの投資方法である。米国株式市場には、世界的に有名な企業や成長力の高い新興企業が数多く上場している。銘柄の選び方次第では、国内株式以上に利益を獲得することもできる。

仕組みは国内株式投資と同じであるが、大きな違いは次のとおりである。

<米国株投資の特徴>
・外国株には為替取引にともなう為替手数料が発生する
・国内取引手数料が、国内株式の手数料より高い
・取引単位は1株単位
・値幅制限がない
・株主優待制度はない

米国株投資についても国内株投資と同様に、資金100万円、資産運用期間を5年として、リターンのシミュレーションをしてみよう(手数料、所得税等は考慮しないものとする)。

投資初心者向けの米国株投資の投資事例とトータルリターン

投資初心者が100万円の資金を米国株に投資する場合も、リスクを抑えた投資が基本になる。

ローリスク・ローリターンの投資手法として、米国内で浸透している「ダウの犬投資法」(NYダウ構成銘柄のうち、高配当の10銘柄に長期投資する投資手法)銘柄のトータルリターンを実際に算出する。

ダウの犬銘柄の選出には、簡易的にSBI証券の米国株スクリーニングを使用した。検索条件を「ダウ平均」採用銘柄と「実績配当利回り」に設定して、抽出された29銘柄を実績配当利回りが高い順に並べ替え、上位10銘柄に約10万円ずつ分散投資する。

<取引金額とプライスリターン>

会社名
<銘柄コード>
買付時
2016/3/31終値
(初期投資額 ※1)
売却時株価
2021/3/31終値
(売却額 ※2)
円換算による
プライスリターン ※3
(円換算値上がり益)
シェブロン
<CVX> 9株
95.400米ドル
(9万6,163円)
104.790米ドル
(10万3,742円)
7.88%
(+7,578円)
IBM
<IBM> 6株
151.450米ドル
(10万1,774円)
133.260米ドル
(8万7,951円)
-13.58%
(-1万3,822円)
ベライゾン・
コミュニケーションズ
<VZ>15株
54.080米ドル
(9万854円)
58.150米ドル
(9万5,947円)
5.61%
(+5,093円)
ウォルグリーン・ブーツ・
アライアンス <WBA>10株
84.240米ドル
(9万4,348円)
54.900米ドル
(6万390円)
-35.99%
(-3万3,958円)
メルク
<MRK>16株
52.910米ドル
(9万4,814円)
77.090米ドル
(13万5,678円)
43.10%
(+4万863円)
コカ・コーラ
<KO>18株
46.390米ドル
(9万3,522円)
52.710米ドル
(10万4,365円)
11.59%
(+1万843円)
スリー・エム
<MMM>5株
166.630米ドル
(9万3,312円)
192.680米ドル
(10万5,974円)
13.57%
(+1万2,661円)
シスコ・システムズ
<CSCO>31株
28.470米ドル
(9万8,847円)
51.710米ドル
(17万6,331円)
78.39%
(+7万7,483円)
アムジェン
<AMGN>6株
149.930米ドル
(10万752円)
248.810米ドル
(16万4,214円)
62.99%
(+6万3,461円)
ジョンソン・アンド・
ジョンソン<JNJ>8株
108.200米ドル
(9万6,947円)
164.350米ドル
(14万4,628円)
49.01%
(+4万7,680円)
総額(円換算) 8,583.38米ドル
(96万1,333円)
1万720.21米ドル
(117万9,054円)
22.66%
(+21万7,884円)
※1,初期投資額=2016/3/31の株価×為替レート(1米ドル=112円換算)×投資株数
※2,売却額=2021/3/31の株価×為替レート(1米ドル=110円換算)×投資株数
※3,プライスリターン(円換算による値上がり率)=(売却額-初期投資額)÷初期投資額×100

<直近5年間のインカムリターンと売却時のトータルリターン>

会社名
<銘柄コード>
配当金によるインカムリターン ※1 売却時の累積
トータルリターン※2
(円換算概算収益額※4)
1年間
(1株あたり配当)
5年間
(累積1株あたり配当)
シェブロン
<CVX>9株
4.50%
(4.29米ドル)
23.69%
(23.01米ドル)
31.57%
(+3万358円)
IBM
<IBM>6株
3.63%
(5.50米ドル)
19.81%
(30.55米ドル)
6.23%
(+6,340円)
ベライゾン・
コミュニケーションズ
<VZ>15株
4.23%
(2.29米ドル)
21.70%
(11.95米ドル)
27.31%
(+2万4,810円)
ウォルグリーン・ブーツ・
アライアンス <WBA>10株
1.73%
(1.46米ドル)
9.62%
(8.25米ドル)
-26.37%
(-2万4,883円)
メルク
<MRK> 16株
3.50%
(1.85米ドル)
19.43%
(10.47米ドル)
62.53%
(+5万9,290円)
コカ・コーラ
<KO> 18株
3.02%
(1.40米ドル)
15.62%
(7.38米ドル)
27.22%
(+2万5,455円)
スリー・エム
<MMM> 5株
2.66%
(4.44米ドル)
15.45%
(26.22米ドル)
29.02%
(+2万7,082円)
シスコ・システムズ
<CSCO> 31株
3.30%
(0.94米ドル)
20.91%
(6.06米ドル)
99.29%
(+9万8,147円)
アムジェン
<AMGN> 6株
2.67%
(4.00米ドル)
17.08%
(26.08米ドル)
80.07%
(+8万674円)
ジョンソン・アンド・
ジョンソン<JNJ> 8株
2.91%
(3.15米ドル)
16.10%
(17.74米ドル)
65.29%
(+6万3,292円)
総額 3.21%
275.90米ドル
3万900円 ※3
17.96%
1,569.86米ドル
17万2,684円 ※3
40.63%
(+39万569円)
※1,インカムリターン=配当総額÷初期投資額×100
※2,トータルリターン=累積インカムリターン+プライスリターン(値上がり率)
※3,1年目の配当総額を1米ドル=112円、5年間の配当総額を1米ドル=110円で円換算した上で、
インカムリターンおよびトータルリターンを算出した
※4,「初期投資額×トータルリターン(%)」と「円換算概算収益額」が異なるのは、
トータルリターン(%)は小数点第3位の値を四捨五入、円換算額は円未満を切り捨てて算出したためである

今回、ポートフォリオを組んだNYダウを構成する10銘柄は、好配当利回りでありながら、5年間で株価が大幅に上昇した銘柄も見られた。その結果、ポートフォリオのプライスリターン(22.66%)が、インカムリターン(17.96%)を上回った。

上記の米国株資産運用シミュレーション(5年間)では、プライスリターンとインカムリターンを合算したトータルリターンは40.63%であり、手数料や税金は加味されていないが、理論的にはおおむね好調であった。

株式投資は、初心者でも、投資手法や銘柄の選び方次第で、株価変動リスクを最小限に抑えながら、資産形成できることがわかるだろう。

米国株投資のメリット

・メリット1,大きく値上がりする銘柄がある

米国の新興上場企業の中には、株価が大幅に伸長する銘柄がある。フェイスブックやアマゾン・ドットコム、アルファベットなどは成長銘柄の典型である。

成長性の高い銘柄は、NYダウ平均やS&P500指数、ナスダック100など、米国を代表する株価指数の構成銘柄に採用されることが多い。株価指数構成銘柄の入れ替え情報には日頃から注目して、現在勢いがあり、将来的にも持続的に成長する銘柄への投資を目指したい。

・メリット2,好配当利回りの銘柄が多い

ジョンソン・アンド・ジョンソンやコカ・コーラのような、企業としては成熟期にある米国のグローバル企業は、好配当利回りであることが多い。

このような優良企業は、業績や財務体質も健全で、信用力も高いので、配当を目的とした長期投資に適している。身の回りにある製品やサービスを提供している米国企業の中から、好配当銘柄を探してみるのもよいだろう。

米国株投資のデメリット

・デメリット1,為替リスクがある

米国株を売買すると、為替取引が必ず発生する。米ドル/円の為替レートは比較的安定しているものの、円高に振れたタイミングで、保有する米国株を売却すると、損失が出るリスクがある。

長期投資ではなく、短期投資によるキャピタルゲイン目的の投資では、株価だけでなく為替レートも監視する必要がある。株式投資に慣れるまで、あるいは中上級者になるまでは、短期投資は控えるか、できるだけ少額取引にとどめておいたほうがよいだろう。

・デメリット2,リアルタイムの米国株取引は日本時間の夜間のみ

日本と米国東部の時差は、標準時間が14時間、夏時間(3月第2日曜日~11月第1日曜日)だと13時間である。

リアルタイムで米国株投資をしたい場合は、日本時間の深夜の時間帯に取引しなければならない。とりわけ、標準時間の期間中は、日本時間の23時30分にニューヨーク株式市場がオープンするので、必然的に睡眠時間を削られてしまう。

米国株投資をする際には、事前に調査や分析、銘柄選びを完了し、緊急事態の対応なども考えた上で、取引時間が始まったら、速やかに発注できるように準備しておいたほうがよい。

・デメリット3,日本株より高めの取引手数料と為替スプレッドがかかる

米国株の取引手数料は安くなったが、依然として国内株式の取引手数料より高めの水準にとどまっている。それに加えて、米ドルと円の為替レートには、往復ともに為替スプレッドが加味される。

売買するたびに、取引手数料と為替スプレッドが発生するので、国内株式より高コストになりやすい。

安易に米国株投資を始めるのではなく、コストを吸収できるだけの利益を見込める取引を心掛けるか、それが難しいならば、バイ&ホールド(長期保有)で手数料や為替スプレッドを抑えた取引を選んだほうが無難だ。

4,おすすめの投資先③ 投資信託

近年では、初心者向け商品として紹介されることが多い投資信託。非課税口座のNISAや個人型確定拠出年金のiDeCoの対象商品として、さまざまな投資信託銘柄が提供されている。

上図のように、標準的な運用形態の投資信託は、運用目的に合った多数の株式や債券をファンドに組み入れている。

ファンドマネージャーがファンドの設定と運用・管理を行っているため、投資家は気に入ったファンドを1口単位で購入し、保有するだけでよい。

資産運用会社は、投資家から集めた資金を原資にファンドを運用する。運用で得られた利益は、分配金として投資家に還元されるか、ファンドに再投資される。一方、投資家は保有する投資信託をいつでも解約(売却)することができる。

上図のような運用形態のファンド以外にも、複数のファンドに分散投資する「ファンド・オブ・ファンズ」と呼ばれる運用形態のファンドもある。

投資信託は、1口単位でも多数の銘柄でポートフォリオが組まれているため、資金の少ない投資初心者が投資信託を1口だけ購入・保有しても、おのずとリスク分散したことになるのが大きな特徴だ。

投資初心者向けの投資信託の投資事例とトータルリターン

100万円程度の余裕資金を元手にして投資信託に投資する際には、少額投資とは若干趣の異なる銘柄選びも可能になる。

投資信託は、1口だけの少額投資でもリスク分散効果があるが、複数の投資信託でポートフォリオを組めば、より効果的な分散投資ができる。ハイリスクな投資運用には消極的な人でも、投資信託としてはリスクが高めのアクティブファンドや、買いにくさを感じる商品先物を対象としたファンドでも、自由にポートフォリオに組み込むこともできる。

元手100万円での投資例を紹介しながら、開示されている各銘柄のトータルリターン(実績)や、ポートフォリオとしてのトータルリターン(値上がり益+分配金)を確認していこう。

ポートフォリオに組み入れる銘柄は、SBI証券の投資信託パワーサーチで「信託報酬1.65%以下」、「トータルリターン20%以上」の条件で検索し、対象資産が重複せず、トータルリターンも高いファンドを抽出した。短期投資向きのブル・ベアファンドは除外している。

ポートフォリオの資産配分は、国全体など、対象範囲の広いファンドは15万円~20万円、対象範囲が狭いファンドは10万円程度を目安とした。

<投資信託のポートフォリオの一例と初期投資額>

ファンド名(愛称)
(設定年月日)
2021/4/16の
基準価額
口数
(初期投資額)
SBIバンガードS&P500
(2019/9/16)
1万4,385円 10口
(14万3,850円)
e-MAXIS
Slim全世界株式
(2018/10/31)
1万4,734円 10口
(14万7,340円)
ひふみプラス
(2012/05/28)
5万2,175円 3口
(15万6,525円)
ニッセイ日経225
インデックスファンド
(2004/01/28)
3万4,758円 6口
(20万8,548円)
One-厳選ジャパン
(2017/09/29)
2万439円 5口
(10万2,195円)
インベスコ世界
ブロックチェーン株式ファンド
(2019/7/11)
3万285円 3口
(9万855円)
ピクテ‐iTrustロボ
(2016/02/19)
3万4,243円 3口
(10万2,729円)
投資総額 95万2,042円

<トータルリターンと概算収益額>

ファンド名
(設定年月日)
トータルリターン
( )は概算収益額 ※1
1年 5年 ※2 (参考)設定来
SBIバンガードS&P500
(2019/9/16)
55.34%
(+7万9,606円)
39.08%
(+5万6,216円)
e-MAXIS
Slim全世界株式
(2018/10/31)
56.46%
(+8万3,188円)
43.47%
(+6万4,048円)
ひふみプラス
(2012/05/28)
47.43%
(+7万4,239円)
13.32%
(+2万849円)
415.18%
(+64万9,860円)
ニッセイ日経225
インデックスファンド
(2004/01/28)
56.19%
(+11万7,183円)
13.60%
(+2万8,362円)
241.72%
(+50万4,102円)
One-厳選ジャパン
(2017/09/29)
144.82%
(+14万7,998円)
147.27%
(+15万502円)
インベスコ世界
ブロックチェーン株式ファンド
(2019/7/11)
226.79%
(+20万6,050円)
201.59%
(+18万3,154円)
ピクテ‐iTrustロボ
(2016/02/19)
87.83%
(+9万226円)
24.32%
(+2万4,983円)
223.42%
(+22万9,517円)
ポートフォリオの
トータルリターン
(概算収益額の総額)
83.87%
(+79万8,493円)
193.00%
(+183万7,402円)
※1,概算収益額は、仮に2021/4/16の基準価格で購入し、長期保有した場合を想定して算出した
※2,5年のトータルリターンは年率換算による指数である

直近1年間の運用期間は、2020年2月の新型コロナウイルス感染拡大による株式相場暴落の影響を受けてはいるが、結果的には非常に高いトータルリターンとなっていた。

どの銘柄の設定来トータルリターンも大幅な伸び率を記録しており、資産配分の優れたファンドであれば、相場の変動にかかわらず、長期運用することでトータルリターンが大きくなることが予想される。

投資信託のメリット

・メリット1,プロのポートフォリオで運用できる

投資信託の運用には、毎年信託報酬がコストとして発生する。その反面、プロがファンドを管理・運用し、リバランスも行っているため、個別銘柄や相場の下落局面においても、慌てて対応する必要がない。

コストさえ負担すれば、手間なしで運用できるので、投資初心者にとって最適だ。

・メリット2,1口でも分散投資できる

どのような運用形態や目的をもつファンドであっても、多数の銘柄を組み込んだポートフォリオであることは共通している。

そのため、ファンド設定当初から分散投資されており、自動的にリスク分散が可能になる。

リスク軽減のための分散投資は投資の基本。初めての投資商品として投資信託を選ぶことは、賢明な選択だといえる。

・メリット3,個別ではリスクが高く、投資が難しい銘柄にも投資できる

投資信託の投資対象はさまざま。リスクが高い、もしくは直接投資が困難な新興国の株式や債券、商品先物、特定の業種や特徴をもつ銘柄群など、自分では投資できない投資対象でも、投資信託なら、分散投資しながら簡単に投資できる。

投資信託のデメリット

・デメリット1,短期間では、株式投資ほどの値上がり益を期待できない

投資信託はポートフォリオを組んで運用されているため、組み込まれた特定の銘柄の株価が高騰しても、たいていの場合、利益は平準化されてしまう。

どれほど相場環境が良くても、株式投資のように短期的に大きな値上がり益を獲得できないことは、事前に承知しておかなければならない。

・デメリット2,分配金目的の投資には向いていない

投資信託では、一般的に分配金をあまり期待できない。ファンドに利益が出ても、投資家に分配金を支払うことなく、ファンドに再投資するケースも多い。

微々たる分配金に注目するより、ファンドの対象資産や資産配分、トータルリターンの実績にこだわって、将来的に値上がりする投資信託を探すほうが、利益獲得の近道になる。

・デメリット3,株式のように時価で取引できない

投資信託の基準価額の公表は、夜間の1日1回だけ。加えて、ファンドの資産運用会社が発表する1本値だ。

取引所の立会時間が終了してから、すべての計算が行われた後に、基準価額が確定する。

株式取引のように、発注後すぐに約定を確認したり、相場を見ながら指値注文を出したりできないので、希望通りの価格で約定できるとは考えないほうがよい。

5,おすすめの投資先④ 国内ETF

次に、おすすめするのは国内ETFだ。国内ETFとは上場投資信託、つまり、東京証券取引所に上場している投資信託のことである。

投資信託ではなく、国内ETFを選ぶ大きな理由には、「リアルタイムで時価取引ができる」、「投資信託に比べて、ETFの信託報酬のほうが安い」の2点が挙げられる。

投資信託と仕組みは同じでも、取引所に上場しているため、立会時間中ならいつでも取引可能で、通常の株式取引同様に、成行、指値、逆指値などの注文方法も利用できる。

ETFの信託報酬の安さは、ETFがインデックス型投資信託であることに起因する。

ETFは、特定の株価指数をベンチマークとして、パフォーマンスが連動するように計算・運用されている。個別銘柄の調査や分析、株式発行企業へのインタビューなどが不要なので、ファンドの設定・管理費用を大幅に軽減できるのだ。

ETFのリターンに対する考え方は投資信託と同じである。ファンドの値上がり益と分配金を総合的に加味したトータルリターンを重視しており、ETFに投資する投資家は、ETFのトータルリターンを投資指標として利用することが多い。

投資初心者向けの国内ETF投資事例とトータルリターン

国内ETF投資のための銘柄選びのポイントも、投資信託と大きく変わりはない。

ただし、信託報酬の安さがETFの大きな特長であることから、対象指標が同じETF同士で銘柄選びに迷ったら、信託報酬の安いほうのファンドを選ぶのがおすすめだ。

ETF投資事例の銘柄選びには、日本証券取引所グループの「東証マネ部 ETF銘柄リスト」を利用した。

詳細条件設定で、リスクの高い「レバレッジETF、インバースETF、エンハンスト型ETF、ボラティリティETF」を除外して検索し、信託報酬が低い順に並べ替え、純資産総額が大きな銘柄を上から順に抽出した。

抽出した銘柄のうち、対象指標が同じ銘柄については信託報酬が安い銘柄、次に純資産総額が多い銘柄を選択した。

<国内ETFのポートフォリオの一例と初期投資額>

ファンド名<コード>
(上場年月日)
2021/4/16の
終値
口数
(初期投資額)
信託報酬
(税込)
ダイワ上場投信-
日経225<1320>
(2001/07/13)
3万750円 5口
(15万3,750円)
0.176%
iシェアーズ・
コアTOPIX 上場投信<1475>
(2015/10/19)
2,016円 120口
(24万1,920円)
0.066%
NEXT FUNDS
NASDAQ-100連動型
上場投信<1545>
(2010/8/16)
1万5,420円 16口
(24万6,720円)
0.4950%
SPDR S&P500
ETF<1557>
(2011/03/24)
4万5,250円 5口
(22万6,250円)
0.0945%
MAXIS JPX日経
インデックス400ETF<1593>
(2014/2/6)
1万8,240円 7口
(12万7,680円)
0.0858%
初期投資総額 99万6,320円

<トータルリターンと概算収益額>

ファンド名<コード>
(上場年月日)
トータルリターンまたは騰落率(分配金は再投資)
( )は概算収益額 ※
1年 5年 (参考)上場来
ダイワ上場投信-
日経225<1320>
(2001/07/13)
19.27%
(+2万9,627円)
57.99%
(+8万9,159円)
iシェアーズ・
コアTOPIX ETF<1475>
(2015/10/19)
41.94%
(+10万1,461.25)
61.43%
(+14万8,611円)
46.00%
(11万1,283円)
NEXT FUNDS
NASDAQ-
100連動型上場投信<1545>
(2010/8/16)
66.5%
(+16万4,068円)
3年 106.1%
(+26万1,769円)
859.6%
(+212万805円)
SPDR S&P500 ETF<1557>
(2011/03/24)
8.94%
(+2万226円)
69.64%
(+15万7,560円)
MAXIS JPX
日経インデックス
400ETF<1593>
(2014/2/6)
9.31%
(+1万1,887円)
28.36%
(+3万6,210円)
ポートフォリオの
トータルリターン
(概算収益額の総額)
32.85%
(+32万7,271円)
69.59%
(+69万3,311円)
※概算収益額は、仮に2021/4/16の終値で購入して、長期保有した場合を想定して算出した

投資信託のポートフォリオのトータルリターンに比べると、国内ETFのポートフォリオで獲得できるトータルリターンあるいは騰落率(分配金を再投資したあとの収益率)は低めである。

これは、ETFがすべてインデックス型の投資信託であり、上述した投資信託のポートフォリオのように、トータルリターンの高さにこだわって銘柄選びをしていないためだと考えられる。

国内ETFのポートフォリオを構成する銘柄やトータルリターン(騰落率)全体のイメージとしては、手堅い印象を受ける。

国内ETF投資のメリット

・メリット1,堅実でミドルリスクの銘柄が多い

インデックス型上場投資信託である国内ETFの対象指標は、いずれも有名な株価指数がベンチマークとなっている。ある程度の価格変動はあるので、ローリスクとは言えないまでも、ミドルリスクで、比較的堅実な金融商品が主力だ。

ミドルリスクなので、必然的にミドルリターンにはなるが、多額の資金を集中投資するわけでなければ、国内ETF1本だけに投資しても、大きな損失を出すリスクは少ないだろう。

・メリット2,銘柄選びに手間がかからない

東証に上場するETFは270銘柄程度。数種類の投資条件で絞り込むと、抽出される銘柄はそれほど多くない。個々のETF銘柄に対する確認事項(対象指標、信託報酬、騰落率など)も多くない。

その上、インデックス型投資信託ということでリスクも抑えられるので、銘柄選びに時間と手間をかけられない多忙な人には、使い勝手の良い金融商品である。

国内ETF投資のデメリット

・デメリット1,取引手数料がかかる

近年、投資信託については、証券業界全体で取引手数料無料化が一般的になりつつある。それに対して、商品性が似ている国内ETFは上場株式の一種であるため、低額ながらも取引手数料が発生する。

国内ETFには、同じ対象指標で運用されている投資信託が数多く存在する。ETFと投資信託で迷った場合に、取引手数料の有無が銘柄選びの分かれ道になるかもしれない。

・デメリット2,レバレッジ型やインバース型を除くと、大きなリターンは期待できない

国内ETFにも、投資信託同様、レバレッジ型あるいはインバース型のETFがある。リアルタイムで取引できることから、短期投資による値上がり益を目的とする投資家からの人気が高い。

ただし、価格変動リスクが大きく、あくまでも中上級者向きなので、初心者のうちはおすすめできない。

こうしたレバレッジ型、インバース型のETFを除くと、大半の国内ETF銘柄は、比較的リスクが低い反面、大幅なリターンも望めない。

6,おすすめの投資先⑤ 個人向け国債

資産運用で損失は出したくないが、銀行預金の金利では物足りないという人には、ローリスク投資商品の決定版である個人向け国債をおすすめしたい。

国債は元本割れのない安全資産として知られている。

個人向け国債も国が発行する債券であり、1年に2度の利子の支払いと元本の満期償還を国が保証しているため、損失が発生することがなく安心だ。

3種類の個人向け国債はどれも、発行から1年を過ぎれば、いつでも1万円から中途換金可能だ。

投資初心者向けの個人向け国債投資事例とリターン

個人向け国債には、「変動金利型10年満期」、「固定金利型5年満期」、そして「固定金利型3年満期」の3種類がある。

絶対減らしたくない100万円の資産を、3種類の個人向け国債に投資する事例を提案するとともに、個人向け国債投資のリターンを確認しておきたい。

<個人向け国債の種類と概要>

種類 金利設定
(最低金利 年率0.05%)
2021年5月発行国債の
適用年利率(税引前)
変動10年 基準金利×0.66% 0.08%
固定5年 基準金利-0.05% 0.05%
固定3年 基準金利-0.03% 0.05%
特徴 ・毎月発行(年12回) ・額面100円につき、100円の償還金額
・最低1万円以上、1万円単位で購入可能
・利子の支払いは1年に2回
・発行後1年を過ぎれば、いつでも中途換金可能 ※1
・発行後1年以内は中途換金禁止期間 ※2
※1,発行後1年以内に中途換金する場合の受取額は、
「額面金額+経過利子相当額-中途換金調整額(直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685)」
※2,中途換金禁止期間中でも、大規模災害被災者および保有者死亡による相続人の中途換金は可能

<個人向け国債の投資事例とリターン>

種類 投資額 満期償還までのリターン(税引前) ※
変動10年 50万円 適用利率確定1回目は197円
(適用利率は半年ごとに見直し)
固定5年 20万円 1回目49円+2~10回目@50円=499円
固定3年 30万円 1回目74円+2~6回目@75円=449円
※財務省「個人向け国債」ページの「受取利子シミュレーション」による

変動10年の適用利率は半年ごとに見直されるため、今後、適用利率の一層の引き下げ、または引き上げの可能性があるため(税引前最低金利は年利率0.05%)、リターンの算出は困難である。

個人向け国債のメリット

・メリット1,国による元本保証で安心安全

国債の性質上、元本保証されているため、とにかく投資で資産を減らしたくない人には最適な投資方法である。

・メリット2,年利率0.05%の最低金利保証なので、少ないながらも確実に増える

メガバンクに定期預金を預けても、年利率0.002%(税引前)にしかならない。対する個人向け国債の最低金利は0.05%(税引前)であるため、お得感がある。

変動10年は金利情勢次第で、適用金利のさらなる引き下げの可能性もあるが、0.05%より下がることはない。満期償還までの10年間に基準金利が上がれば、変動10年の適用金利も上がるので、将来の金利上昇に期待がもてる。

個人向け国債のデメリット

・デメリット1,資産が増える実感をもちにくい

個人向け国債には最低金利保証と元本保証があるもののリターンは大きくない。資産運用に対して、増える楽しみを感じたい人には、不満を感じる投資商品かもしれない。

・デメリット2,発行後1年間の中途換金禁止期間がある

発行から1年間は、原則中途換金はできない。

発行後1年以内に諸般の事情によりまとまった現金が必要になっても、相続あるいは大災害に被災した場合以外は現金化できないので、余裕資金をすべて個人向け国債の投資に充てるのは避けるべきだ。

7,100万円で初めての投資運用、ローリスクとリスク分散は基本中の基本

100万円といえば大金である。それだけの金額を効率的に投資に回せば、リターンも相応に大きくなり、資産が増える好循環が生まれる。

ただし、投資初心者の場合、資産運用で損失を出すリスクが高いため、100万円もの資金をハイリスク・ハイリターンの商品に安易に投資する、あるいは一極集中させることは厳禁だ。ミドルリスクの投資商品であったとしても、損失が出た際の損失額がローリスク商品より拡大してしまう。

投資初心者がミドルリスク・ミドルリターン、あるいはハイリスク・ハイリターンの金融商品にもチャレンジしたければ、少額ごとに資金を分散させて資産分散、同時にリスク分散することが何より重要だ。

投資に充てられる余裕資金がどれほどあろうとも、投資初心者のうちは、結果的にローリスクになる投資方法を選びながら、投資経験を積むことに注力してほしい。

執筆・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。

MONEY TIMES

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