シンガポールを拠点とする東南アジア最大規模のDBS銀行が、同行初のSTO(セキュリティートークン・オファリング)を実施し、1500万シンガポールドル(約12億3,000万円)のデジタル債券を発行した。5月31日、同行がプレスリリースで発表した。

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(画像=月刊暗号資産)

今回のデジタル債券は、DBS銀行傘下のデジタル資産取引所であるDDEx(DBS Digital Exchange)を通じて発行され、有効期限は6ヶ月、年率0.6%で、同行の顧客である機関投資家や適格投資家向けに取引される。

DBS銀行は、このデジタル債券における単独ブックランナー(有価証券の募集・売り出しを行う引き受け業務で中心的な役割を果たす証券会社)として、私募債の形で発行した。このデジタル債券はシンガポールの債券法的枠組みに準拠しており、投資家に従来の債券と同様の法的確実性と権利保護を提供しているという。

DBS銀行の資本市場部門トップであるEng-Kwok Seat Moey氏は、「今回実施した初となるSTOで、案件の組成からトークン化、上場、取引、カストディまで、デジタル債券のバリューチェーン(価値連鎖)全体に渡って統合されたソリューションを提供するDBS銀行の能力を発揮できたことを踏まえると、これからDDExでのSTO実施の道が切り開かれていくことでしょう」と語った。

その上で「セキュリティートークンの発行による資産のデジタル化は、急成長するアジア太平洋地域において、民間の資本市場から資金を調達するために注目されています。DDExのような新しいプラットフォームを求める企業にとって、非常に大きなチャンスです」と指摘し、顧客が資本調達の一環としてSTO発行を採用することで、資産のトークン化がより主流になると予想しているという。

DBS銀行の債券部門の幹部であるClifford Lee氏は「これまでにアジアで発表された債券のトークン化は、従来の債券発行を再パッケージ化したものがほとんどでした」と語った上で、「しかし今回、発行した債券のトークン構造は、既存の法的・税務的なインフラ要件と、デジタル取引所の特徴を活かした小ロットでの直接発行を組み合わせたものです。今回の債券トークン構造は、シンガポールの法的・税務的インフラの整備が進んでいるからこそ可能になったもので、資本市場の拡大と深化のためにSTOの発行をさらに促進することができます」と説明した。

DDExは昨年12月、機関投資家向けに開設された暗号資産(仮想通貨)取引所だ。ビットコインやイーサリアムを含む4銘柄を取り扱っている。

ブロックチェーン技術を活用し、DBS銀行のデジタル資産エコシステムの一部として、民間市場から資金を調達する安全で透明性の高いプラットフォームを顧客に提供している。1日の取引量は開設当初から半年で10倍に増加し、120社以上の顧客を取り扱っていると明かしている。(提供:月刊暗号資産