欧州連合(EU)の政策執行委員会である欧州委員会は、新型コロナウイルス感染拡大の事態収拾後を見据え、緊密な統合に向けたさらなる一歩として、EU全域の様々なサービスへのアクセスを提供するデジタルウォレットの導入を提案する予定であることがわかった。2日、Bloombergなど複数のメディアが報じた。
Bloombergが入手した提案の草稿によると、デジタルウォレットは「欧州デジタル・アイデンティティ・ウォレット」という仮称で、EU圏の住民は誰でも利用できるようになるという。
このデジタルウォレットは、EU加盟国27ヶ国全ての市民全員が、自分自身を単一のIDを使ってデジタルで識別し、ブロックチェーンを用いることで、運転免許証、医療用処方箋、教育資格などの公的文書の偽造を防ぐ仕組みのようだ。地方自治体のウェブサイトにログインしたり、公共料金を支払ったりできるようになる設計だと匿名の関係者は語った。
またデジタルウォレットは、最先端の技術を使って指紋や網膜のスキャンなどの方法でアクセスができるという。
EU共通のこのデジタルウォレットの使用は義務ではないが、登録することを選択した市民は、安全性の高いデジタルエコシステムの恩恵を受けられる上、既存のシステムと相互に作用しながら、EU全域で認められているサービスを容易に利用ができるメリットがある模様だ。
現在、EU本部のある仏ブリュッセルでは、約1年後に本格運用が予定されているデジタルウォレットの展開に必要な技術基準のガイドラインを提供するため、各加盟国との協議を進めている。
今回の欧州委員会の提案は、EU全体の既存の電子証明書の見直しの一環であり、デジタルウォレット導入の「推進要因と障壁」についての協議を受けて行われたものだ。
EU当局は、パンデミック時にデジタルリテラシーが向上し、デジタルツールの使用が増えることがデジタルウォレットの後押しになると期待している。(提供:月刊暗号資産)