三菱グループが正念場を迎えている。三菱商事は最終利益で業界トップから陥落し、三菱自動車は2期連続の赤字となった。三菱重工も、民間機事業で巨額の損失を計上している。日本を代表する巨大企業グループは、没落の道を歩み始めてしまったのだろうか。

三菱財閥の流れを汲む巨大企業グループ

三菱は没落してしまうのか?主力級企業が業績悪化、巨大企業グループの行く先は?
(画像=Satoshi/ stock.adobe.com)

商社、自動車、航空機、電機、金融・・・・・・。戦前の三菱財閥の流れを汲む三菱グループは、実にさまざまな分野で事業を展開している。グループに属する企業は4,000社を超えており、誰もが認める巨大企業グループといえるだろう。

かつて「三菱グループの企業に就職したら子どもの人生は安泰」と考える親は多かったが、特に2020年から2021年にかけて三菱グループの企業の経営悪化が目立ち、以前と比べると企業のブランド力が低くなったように思える。

三菱グループ4,000社における中核企業は?

ここで、三菱グループの主な企業を紹介しておこう。三菱グループの中核会社を列挙するとき、参考になるのが同グループの親睦会「三菱金曜会」のメンバーリストだ。

三菱商事、三菱電機、三菱重工業、三菱自動車、三菱地所、三菱ケミカルなど「三菱」を冠する企業のほか、キリンホールディングスやENEOSホールディングス、東京海上日動火災保険、ニコン、日本郵船などが三菱金曜会のメンバーに名を連ねている

中でもグループにおいて主力級の会社として位置付けられるのが、三菱商事、三菱自動車、三菱電機、三菱重工業などだ。しかし、最近の三菱商事、三菱自動車、三菱重工業の決算は、決して良いとはいえない。

ここからは、各社の最新決算の概要を紹介していこう。

三菱自動車:2期連続の赤字、赤字額は3,000億円超

まずは、三菱自動車から見ていこう。2021年3月期の連結業績(2020年4月〜2021年3月)は以下のとおりだ。

<2021年3月期の連結業績>

項目 2021年3月期 前期比
売上高 1兆4,554億7,600万円 ▲35.9%
営業利益 ▲953億2,100万円 -
経常利益 ▲1,052億300万円 -
最終損益 ▲3,123億1,700万円 -
出典:三菱自動車の決算資料

新型コロナウイルスの感染拡大によって車両の販売が落ち込み、赤字額は前期の257億7,900万円から3,123億1,700万円まで膨らんだ。

しかし、業績不振の要因はコロナだけではない。三菱自動車はコロナの影響をあまり受けていない2020年3月期(2019年4月〜2020年3月)も赤字だったからだ。

かつて三菱自動車はリコール問題で経営が悪化したが、現在は再び正念場を迎えているといえるだろう。

三菱重工業:純利益が前期の半分以下に

三菱重工業の業績を見てみよう。2021年3月期の連結業績は赤字転落こそ免れたものの、純利益は前期の半分以下になった。

<2021年3月期の連結業績>

項目 2021年3月期 前期比
売上高 3兆6,999億4,600万円 ▲8.4%
事業利益 540億8,100万円 -
税引前利益 493億5,500万円 -
最終損益 406億3,900万円 ▲53.4%
※出典:三菱重工業の決算資料

最終損益が大幅に減った主な要因は、子会社である三菱航空機が取り組んでいた「三菱スペースジェット」事業における損失の計上だ。開発が難航し、2020年10月に同事業の凍結が発表されている。損失額は実に1,162億円に上った。

エネルギー部門も減収減益となり、今後は新技術の開発に一層力を入れていくという。

三菱商事:業界トップの地位から陥落

最後に、三菱商事の決算を紹介しよう。最終損益は黒字をキープできたが、前期比67.8%減とかなり厳しい状況だ。

<2021年3月期の連結業績>

項目 2021年3月期 前期比
売上高 12兆8,845億2,100万円 ▲12.8%
税引前利益 2,535億2,700万円 ▲60.9%
当期利益 1,322億4,100万円 ▲77.7%
最終損益 1,725億5,000万円 ▲67.8%
※出典:三菱商事の決算資料

三菱商事は日本の「5大商社」の一角を成し、かつては利益面で他社を上回っていた。しかし2021年3月期の純利益は、5大商社の中で4位という結果となった。首位を伊藤忠商事に譲り、三井物産と丸紅にも追い抜かれてしまったわけだ。

同社が主力事業として展開している天然ガス事業や原料炭事業が振るわなかったことが主な要因だ。

注目される三菱グループ

三菱グループの主力級企業の最新決算を見ると、経営状況の厳しさがうかがえる。今期以降、V字回復を果たせるのか? それともこのまま没落していってしまうのか? 今後の三菱グループの動向から、目が離せない。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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