その他の公正証書遺言のメリット

公正証書遺言については、公証役場に行けば遺言検索システムが利用できますので、遺言書が残されているかどうかについて相続人がチェックすることが可能です。そのため、自筆証書遺言のように遺言書が発見されないことがあるということが極めて少ないというメリットがあります。さらに、公正証書遺言は原本が、公証役場に20年または遺言者が100歳になるまでのいずれか長い方が保管されます。例えば90歳で遺言書を作成されれば110歳となられるまで保管されますこのように公証役場に長期間保管されるため紛失の危険性もありません。


デメリット:遺言無効確認の訴えとなりやすい~とくに公証人が「出張」の場合

このように信用性が高く数々のメリットもある公正証書遺言ですが、実はトラブルとなってしまった場合に非常に大きくもめてしまう可能性があるのが公正証書遺言でもあります。具体的には、公証人が「出張」して遺言書を作成してくれるケースでトラブルが生じる場合があります。

どういうことかといいますと、公正証書遺言は病気などで公証役場に行くことが困難な場合には、公証人が枕元に来て遺言者は頷くだけでも公正証書遺言は成立することになっています。すると、(ドラマのような例で恐縮ですがですが)、末期の状態の方の枕元に、「ずる賢い相続人」があらわれて、自分に都合が良いように首を縦に振らせて公正証書遺言を作成するというケースもありえます。

このような場合、公正証書遺言が真意によるものではないとして遺言内容に不服がある方が遺言無効確認の訴えに発展するケースがあります。(一例として名古屋高等裁判所平成14年12月11日判決・遺言能力を認めた第一審の認定に対し、遺言書作成当時に遺言者の痴呆は重度に近いものであって、遺言能力はなかったとした事例)

この場合、長い裁判とともに後日、遺言が無効となると裁判と並行して行っていたすべての手続きが無効となりやり直しとなるという莫大な手間や費用がかかってしまいます。(例えば、登記の抹消など)このようなケースが1パーセントの公正証書遺言の危険性です。しかし、実際に公正証書についての無効確認を訴える訴訟は少なくないようです。公正証書遺言は特に遺産が多い方などが利用されることが多いが、利用にあたっては必ずご健勝な間に、ご自身の明確な意思で公証役場を利用して作成されることが重要です。

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