2019年4月にスタートした「NEXT Keywords for Biz. & Investment」も、本稿で156回を迎えた。連載当初は緊張のあまり、胃薬が手放せなかった記憶がある。いま、あらためて、この3年間を振り返ってみると様々な思い出が蘇る。文字通り、投資やビジネスの世界にとって激動の3年間であったようにも思う。個人的には住み慣れた英国を離れ、オランダで2年間を過ごすという貴重な経験をした。同じ欧州とはいえ、言葉や文化、価値観が異なる国で得た体験や人脈は、筆者にとってかけがえのない財産となった。
しかし、最大の出来事は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で生活様式や価値観が大きく変化したことだ。読者のみなさんも新型コロナ禍で生活が一変した人がおられるかもしれない。筆者の周りで将来への不安から資産運用への関心が高まったのもこの時期である。友人・知人の間では株式やコモディティ(国際商品)、投資信託、そして暗号資産(仮想通貨)などの話題で盛り上がった。しかしながら、近年投資の世界で存在感を増している暗号資産であるが、専門家のなかには投資対象として否定的な意見も聞かれる。
たとえば、筆者が尊敬するウォーレン・バフェット氏は暗号資産を投資ではなく「投機、ギャンブル」と見なし、その潜在的なリスクを指摘している。連載最終回となる本稿では、バフェット氏が暗号資産について否定的な立場をとる理由について考察したい。