この記事は2022年8月19日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「消費者物価(全国22年7月)-上昇品目の割合は7割を超える」を一部編集し、転載したものです。

消費者物価
(画像=nitikornfotolia/stock.adobe.com)

目次

  1. コアCPI上昇率は4ヵ月連続の2%台
  2. 物価上昇品目の割合は7割を超える
  3. コアCPI上昇率は3%近くまで高まる見込み

コアCPI上昇率は4ヵ月連続の2%台

総務省が8月19日に公表した消費者物価指数によると、22年7月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.4%(6月:同2.2%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:2.4%、当社予想も2.4%)通りの結果であった。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

食料(生鮮食品を除く)の伸びが高まったことに加え、携帯電話機の値上げがコアCPIを押し上げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比1.2%(6月:同1.0%)、生鮮食品が前年比8.3%と高めの伸びが続いていることから、総合は前年比2.6%(6月:同2.4%)と、コアCPIを上回る伸びが続いている。

コアCPIの内訳をみると、電気代(6月:前年比18.0%→7月:同19.6%)、ガス代(6月:前年比17.1%→7月:同18.8%)は前月から伸びを高めたが、ガソリン(6月:前年比12.2%→7月:同8.3%)、灯油(6月:前年比23.4%→7月:同19.6%)の伸びが鈍化したことから、エネルギー価格の上昇率は6月の前年比16.5%から同16.2%へと若干鈍化した。ガソリン、灯油は物価高対策として実施されている燃料油価格激変措置(石油元売り会社への補助金)で価格が抑制されている。

食料(生鮮食品を除く)は前年比3.7%(6月:同3.2%)となり、上昇率は前月から0.5ポイント拡大した。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

原材料価格の高騰を受けて、食用油(前年比40.3%)、マヨネーズ(同15.3%)、パン(同11.2%)、麺類(同10.7%)などが前年比二桁の高い伸びとなっているほか、菓子類(6月:前年比4.0%→7月:同4.8%)、調理食品(6月:前年比4.3%→7月:同4.7%)なども前月から伸びを高めた。

さらに、一般外食は、食料工業製品に比べて人件費の影響を受けやすいこともあり、相対的に低い伸びが続いていたが、原材料費の大幅上昇を価格転嫁する動きが広がり、3月の前年比1.0%から7月には同3.4%とここにきて上昇ペースが急加速している。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが1.27%(6月:1.27%)、食料(生鮮食品を除く)が0.84%(6月:0.75%)、携帯電話通信料が▲0.38%(6月:同▲0.39%)、その他が0.67%(6月:0.58%)であった。

物価上昇品目の割合は7割を超える

消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、7月の上昇品目数は376品目(6月は365品目)、下落品目数は101品目(6月は115品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は72.0%(6月は69.9%)、下落品目数の割合は19.3%(6月は22.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は52.7%(6月は47.9%)であった。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

食料(生鮮食品を除く)の上昇品目割合は8割近くとなっている(5月:73.7%→6月:77.1%→7月:79.4%)。原材料価格の高騰を販売価格に転嫁する動きはさらに広がっている。

コアCPI上昇率は3%近くまで高まる見込み

これまでコアCPIを大きく押し上げてきたのは、原油高に伴うエネルギー価格の大幅上昇だったが、上昇ペース加速の主因は食料品(除く生鮮食品)へと移っている。

食料品(除く生鮮食品)の上昇率は直近2ヵ月で1.0ポイントの急拡大となり、7月には前年比3.7%となった。川上段階の物価は、輸入物価が前年比で30%程度、食料品の国内企業物価が前年比で5%台の高い伸びとなっている。川上段階の物価上昇を消費者向けの販売価格に転嫁する動きがさらに広がることにより、食料品(生鮮食品を除く)の物価上昇率は、8月には消費税率引き上げの影響を除くと、08年12月(4.0%)以来の4%台となる可能性が高い。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

一方、原油価格(ドバイ)は、世界経済の減速懸念の高まりなどから、1バレル=90ドル台まで低下したが、燃料油価格激変緩和措置(石油元売り会社への補助金)によってガソリン、灯油価格等が抑制されているため、市況の下落がエネルギー価格の低下に直結しない構造となっている。エネルギー価格は22年3月の前年比20.8%をピークに伸びは鈍化しているが、22年内は前年比で10%台の高い伸びが続くだろう。

コアCPIは、食料品の上昇ペースが一段と加速すること、円安に伴う輸入物価の上昇を受けて、日用品や衣料品など幅広い品目で価格転嫁の動きが広がることから、上昇率の拡大傾向が続く可能性が高い。現時点では、携帯電話通信料の値下げの影響一巡、火災・地震保険料の引き上げが見込まれる22年10月に2.9%まで上昇率が高まると予想している。


(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長

【関連記事 ニッセイ基礎研究所より】
2022・2023年度経済見通し(22年8月)
世帯属性別にみた物価高の負担と過剰貯蓄
貿易統計22年7月 ―― 輸出は中国向けが持ち直す一方、米国向けが低調
鉱工業生産22年6月 ―― 供給制約の影響で3四半期ぶりの減産
雇用関連統計22年6月 ―― 企業の人手不足感の高さを背景に、有効求人倍率の回復が鮮明に