この記事は2023年1月10日に「月刊暗号資産」で公開された「デジタル通貨フォーラム、ソフトバンクや東京都などが新たに参加」を一部編集し、転載したものです。
米SEC(証券取引委員会)は4日、大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)の米国法人であるバイナンスUS(Binance US)が破産した暗号資産レンディング企業ボイジャー・デジタル(Voyager Digital)を10億2200万ドル(約1,345億円)で買収することについて、「限定的異議」を申し立てると発表した。
限定的異議は、通常の異議と異なり、手続きの特定の部分のみ適用される。SECはバイナンスUSによる買収について情報が不足しているとした。
4日にSECが裁判所へ提出した書類によると、バイナンスUSは10億2200万ドルでボイジャーを買収する権利を得たが、この金額は債務者であるボイジャーが算定したものであると指摘。その上で、バイナンスUSがこの取引を完了できる能力を保持し、買収後も事業運営を行える資質があるかどうか明らかにする必要があるとしている。
また、SECはバイナンスUSがバイナンスグループから資金援助を受けなければ買収を行う余地はないのではないかとも述べている。加えて、債務者が顧客資産を保護する方法や、バイナンスUSおよびボイジャーの両者によるハッキング対策、そして暗号資産のポートフォリオをどのような再構築するのか等、十分な情報が開示されていないという。
さらに、今年4月18日までにバイナンスUSとの間で取引が完了しなかった場合に起こり得る事態についてもボイジャーに詳細を提供することを求めた。
提出書類の中でSECはボイジャーに懸念を伝えており、同社はこれを受けこの件に関する公聴会が開催される前に修正された開示声明を提出する予定とのことだ。
ボイジャーは昨年12月に総額10億2200万ドルでバイナンスUSの資産買収入札に同意したことを発表した。ボイジャーはプレスリリースで、入札は「資産に対する最高かつ最良の入札」であり「迅速な時間枠で」顧客と債権者に返される価値を最大化すると述べていた。
なお、昨年9月にボイジャーは暗号資産取引所FTX USが14億2200万ドル(約1,870億円)で落札したことを明らかにしている。バイナンスの落札額はこれを4億ドル(約525億円)下回った。
ボイジャーは1月5日の公聴会で、資産の売却について破産裁判所の証人を求める予定であった。また今回の限定的異議とは別に、テキサス州証券委員会とテキサス州銀行局はボイジャーとバイナンスUSが「テキサス州法を遵守しておらず、テキサス州で事業を行う権限がない」と主張し、売却に異議を申し立てていた。(提供:月刊暗号資産)