ラーメンチェーン大手2社の業績に明暗がくっきりと現れた。ラーメン店「一風堂」を展開する力の源ホールディングス<3561>が60%を超える大幅な営業増益となるのに対し、ラーメン店「幸楽苑」を展開する幸楽苑ホールディングス<7554>は業績を下方修正し、15億円を超える営業赤字に陥る見通しだ。
売上高の40%強を占める海外事業が好調に推移している力の源HDに対し、国内事業中心の幸楽苑HDには原材料やエネルギー費、人件費の上昇などのコストアップ要因が重くのしかかった格好だ。両社の状況を見てみると。
海外利益が国内の2倍に
力の源は2023年2月14日に2023年3月期第3四半期決算を発表した。それによると売上高は前年同期比33.3%増加し、営業利益は同2.59倍に拡大した。
売上高の内訳は国内事業が7.1%の増収だったのに対し、海外事業は80%の増収に。セグメント利益は国内の18.7%の増益に対し、海外は4.92倍に急増した。金額では国内の4億9000万円に対し、海外は2倍近い9億5000万円を稼ぎ出した。
この結果、2023年3月期は売上高245億円(前年度比26.3%増)、営業利益17億1000万円(同62.8%増)を見込む。
一方の幸楽苑は2023年2月10日に通期の業績予想を下方修正するとともに2023年3月期第3四半期決算を発表した。それによると、同第3四半期は売上高が0.2%の増収となったものの営業損益は11億1900万円の赤字(前年同期は14億8800万円赤字)となった。
この結果、2023年3月期は売上高257億円(同2.7%増)、営業損益15億5500万円の赤字(前年度は20億4500万円の赤字)と3期連続の営業赤字に陥る見込みだ。
販売費や人件費などが利益を圧迫
両社の2023年3月期第3四半期の原価率と販売費および一般管理費(販管費)率を比べてみると、その違いがよく分かる。食材などの仕入れ費用などからなる原価が売上高に占める割合(原価率)は力の源の29.8%に対し、幸楽苑は27.3%で、仕入れなどにかかる費用は幸楽苑の方が低く、利益は出やすい状況にある。
一方、販売に伴う費用や人件費、家賃、水道光熱費などからなる販管費の売上高に占める割合(販管費率)は力の源の61.8%に対し、幸楽苑は78.4%に達している。
外食産業はコロナ禍による売り上げダウンに加え、原材料やエネルギー価格の高騰、人件費の上昇などの厳しい環境下に置かれている。このため両社ともに新メニューの投入や値上げなどによる収益の改善に取り組んだが、幸楽苑にコロナ禍や物価高の影響が色濃く現れた。
「ユニクロ」を展開するアパレル大手のファーストリテイリング<9983>の業績が好調なのも海外売り上げが半分以上を占めていることが一つの要因となっている。今後は海外比率の高い企業と国内中心の企業との業績格差が広がりそうだ。
文:M&A Online編集部