木の性質を熟知し、木を愛し、木の美しさを家具に仕立てる日本の家具メーカー、それが「マルニ木工」です。
ここではこのマルニ木工を取り上げて、その歴史やマルニ木工と関わりの深いデザイナー、そしてオークションなどで高値で取引されるマルニ木工のシリーズについて解説していきます。
(TOP画像引用:マルニ木工オンラインショップ)
マルニ木工とは
マルニ木工とは、日本の広島で誕生した家具ブランドです。木の伝統工芸品に感動した創始者によって作り上げられたこのマルニ木工は、その創始者の愛情と志を受け継ぎ、「木」の扱いにたけたブランドへと成長してきました。
「工芸品を、工業化すること」を理念に掲げ、各工程を分業化、それによってかつては一部の特権階級しか手に入れられなかった美しい家具を一般市場にリリースしたことでも知られています。
創業95年の長い歴史
マルニ木工は、1928年に「昭和曲木工場」として設立しました。当時の社名でもある「曲木(まげき)」とは、高温の蒸気などを利用して木を曲げていく技術を指します。
マルニ木工の代名詞ともいえるこの「曲木技術」ですが、マルニ木工のすばらしさはその技術を「職人だけのもの」に留めるのではなく、工業化したという実績があります。
彼らは95年の歴史のなかで、時に戦争を経験し、時に激しい経済市場の変化に直面します。しかしそのなかでも彼らは、「日本生まれの、美しい洋家具を」という理念を忘れることなく、多くの人に愛される家具を次々とリリースしていきます。
海外戦略事業に特化したブランドの確立
「Apple Park」
引用元:マルニ木工オンラインショップ
長い歴史を持つ老舗家具ブランドであるマルニ木工ですが、彼らの「新しいものへの追求」は今もなお続いています。そのなかでも象徴的といえるのが、2018年に立ち上げられた「マルニグローバルブランディング」でしょう。
これはマルニ木工の子会社のうちのひとつであり、文字通り、海外戦略を中心とした事業です。マルニ木工の海外輸出のための部門自体は2009年にはすでに挙げられましたが、海外での売り上げが伸びるうちに、やがて1部門だけではその事業を扱いきれなくなり、この子会社が立ち上げられたのです。
もともと海外で高い評価を得ていたマルニ木工ですから、マルニグローバルブランディングが成立したその年には、押しも押されもせぬ大企業であるアップル(アメリカ)に数千脚もの椅子を納入しました。また、輸出事業において住商インテリアと提携、今後も「日本発の洋家具ブランド」として海外での浸透を狙っています。
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マルニ木工の製品を手がけたデザイナー
マルニ木工はその長い歴史のなかで、数多くのデザイナーと契約を結んでいます。なおマルニ木工自体は日本のファニチャーブランドではありますが、提携するデザイナーは日本人に限りません。
ここからはそんなデザイナーのなかから、特に有名な人をピックアップして紹介していきます。
深澤直人
マルニ木工のデザイナーのなかで、特に知名度が高いのはやはり深澤直人氏でしょう。彼は、前述した「アップルに納品した椅子『HIROSHIMA』」を手掛けたデザイナーでもあります。
「HIROSHIMA」
引用元:マルニ木工オンラインショップ
彼の手掛けるデザインは、常に物静かでありながらも力強く、他には類を見ないほどの造形美を誇っています。
また彼は、現在のマルニ木工の考えの基本である「世界の定番たる家具」の作成を呼び掛けた人物でもあります。
佐藤オオキ
弱冠29歳で「世界の尊敬する日本人100人」に選ばれた佐藤オオキ氏は、早稲田大学理工学部建築学科を卒業した人物です。家具のみならず建築やグラッフィックのデザイナーとしても活躍する人物であり、彼の作り出した作品は各国の美術館に多数置かれています。
マルニ木工では、「円錐形で、ヘラの部分と台座の部分が斜めにくっついている」という、一見しただけでは靴ベラとはまったく分からないユニークな作品を手掛けています。
ジャスパー・モリソン
1959年にロンドンで生を受けたジャスパー・モリソン氏は、家具や照明といった「暮らすための道具」ばかりではなく、靴や時計といった「身にまとう道具」のデザインまでをも手掛けているデザイナーです。
非常に幅広い範囲で活躍する氏は、マルニ木工においては、主にスツール・チェア・テーブルのデザインを手掛けています。シンプルでありながらも温かみを感じるデザインを得意とする彼のデザインは、場所を選ばずに使えるものとしてよく取り上げられています。
マルニ木工は中古市場で価値がある?
100年近くの歴史を持つマルニ木工は、非常に多くの商品をリリースしてきました。多くの商品がリリースされれば、当然なかにはそれを手放す人も出てきます。しかしマルニ木工の家具は「長く使い続けること」を前提としたものですから、中古市場に流されても、その魅力も価値も下がることはありません。
また、マルニ木工は2022年、伊勢丹新宿店との共同企画として、ヴィンテージ家具のポップアップイベントなども開催してきました。
デルタチェア
マルニ木工の「デルタチェア」は、語るべき歴史を持つイスです。現在となっては「レトロな」と表現されるようになったチェアですが、これはマルニ木工が生み出した初めての量産家具なのです。
食堂などで使われることを目的として1960年ごろに市場に登場した作品ですが、現在でもそのデザインは多くの人に愛されています。値段は状態によって異なりますが、50000円を超えることも珍しくありません。
ちなみに「オールドマルニ」に分類されるこのデルタチェアは、アパレルブランド「ノンネイティブ」の藤井隆行氏の監修により、リノベーション家具というかたちでも前述の伊勢丹新宿店で販売されました。価格は11万円~。
ショパン ロッキングチェア
繊細な美しさと、体重を支えられるだけの頑健さ…その2つを併せ持つのが、「ショパンロッキングチェア」です。いわゆる「ゆり椅子」であり、これもオールドマルニに分類されています。
ショパン ロッキングチェアに使われている木材は、現在では入手困難となったカリン材です。そのため、現在の技術をもってしても、「完全なる再現」は不可能だとされています。その姿はオークションでもほとんどみられることがなく、非常に稀少な家具といえそうです。
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マルニ木工の中でも価値の高い製品
マルニ木工では数多くのシリーズを展開しています。そのなかでも特に有名で、かつその価値が高く評価されているものとして、
・マルニコレクションtakoシリーズ
・HIROSIMAシリーズ
・地中海ロイヤルシリーズ
が挙げられます。このなかから、それぞれテーブル・ソファ・リビングボードを取り上げ、その特徴について解説していきます。
マルニコレクション テーブル Table tako
「柔らかく、美しく、なめらかな線を描くテーブル」といえば、マルニ木工のマルニコレクションtakoのテーブルです。2023年1月現在展開しているtakoのテーブルは3種類ありますが、いずれの作品もこの「柔らかな線」「柔らかなフォルム」を誇っています。
マルニ木工の代表的なデザイナーである深澤直人氏によって作られたこのシリーズのテーブルは、「素材の組み合わせの違い」によってその表情を大きく変えます。このため購入する際には、「どの素材のものが自分の好みに合うか」を考えるとよいでしょう。価格は48万円~。
HIROSIMAシリーズ ワイドスリーシーターソファ
マルニ木工のHIROSIMAシリーズが世界にその名前を響かせていることはすでに述べた通りですが、それはHIROSIMAシリーズの持つ「汎用性の高さ」ゆえでもあります。
HIROSIMAシリーズは、マルニ木工のなかでも、「シンプルで、心地よく、木のぬくもりを感じられるデザインに」という理念のもとで作られています。このため、シーンやシチュエーションを問わず、どのような空間でもよくマッチします。
ECサイトにおいてワイドスリーシーターソファが140万円近くで販売されているなど、なかなか高額なシリーズですが、一度買えば一生物の家具となるでしょう。
なお三越伊勢丹オンラインストアでは、定期的にHIROSIMAのアームチェアが販売されています(直近は2023年1月21日~)。
地中海ロイヤル リビングボード
フランス革命後期の装飾デザインを現在に落とし込んで作られた「地中海ロイヤルシリーズ」は、トラディッショナルなデザインでありながらも、現在の暮らしによくなじむようにカスタマイズされたデザインを誇る名品です。
堂々とした風格と、時代を超えてなお愛されるアンティーク家具としての趣を持つ地中海ロイヤルシリーズは、ECサイトが取り扱うマルニ木工のシリーズのなかでも特に高値が提示されています。リビングボードは117万円~。
まとめ
マルニ木工は、その卓抜した技術を工業化することで大きく発展してきた日本の老舗家具ブランドです。現在は海外展開も積極的にしており、アップルなどの大手企業にもその家具が採用されています。
数多くの提携デザイナーのデザインと豊富なシリーズ展開を見せる製品は、今も昔も多くの人を引き付けています。
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