コンビニやスーパーなどを運営するセブン&アイ・ホールディングス<3382>と、スーパー事業を主力とするイオン<8267>の事業規模に差がつき始めた。
2022年2月期は、ともに売上高は8兆7000億円台で拮抗していたが、2023年2月期はイオンの9兆2000億円(2023年2月期から会計基準を変更しており、新基準での売上高は9兆円)に対し、セブン&アイは12兆4980億円(2023年2月期から会計基準を変更しており、新基準での売上高は11兆8120億円)と一気に3兆3000億円ほどの差が付く見通しだ。
セブン&アイが2021年5月に買収した米国のコンビニSpeedwayが業績に大きく寄与するのが好調の要因で、同社ではこうした状況を踏まえ、これまでの総合小売業を目指す方針からコンビニ事業を中心に据えた戦略に転換することを決めた。
今後米国でさらなるコンビニ事業の買収を計画しており、両社の規模の差が一段と開くことも予想される。このまま一方的な差となってしまうのだろうか。
M&Aで一層の上振れも
セブン&アイは2023年1月に2023年2月期の業績予想を上方修正し、売上高を当初見込みより1330億円引き上げた。これによって2023年2月期は前年度より3兆7482億4700万円、42.8%の増収となる見込みだ。
この好調な業績を背景に2023年3月9日に中期経営計画の目標数字も引き上げた。EBITDA(営業利益に減価償却費とのれん償却費を加えた金額)を2026年2月期に1兆円以上としていたのを1兆1000億円以上に修正。このほかにもいくつかの財務指標の目標値を引き上げており、コンビニ事業を核に中期的な規模拡大を見込む。
さらに説明資料には、M&Aなどの影響は含めていない、とわざわざ明記しており、意欲を示している米国でのコンビニ買収が実現すれば、一層の上振れの可能性があることを示唆している。
一方のイオンは2023年2月期に5.6%の増収を見込む。2023年2月期第3四半期の時点では、主力の総合ス―パー事業は前年同期比98.4%で推移しているが、食品スーパーやディスカウントストアは103.8%、ヘルス&ウエルネス事業は111.8%と堅調で、2期連続の増収となる。ただ、伸び率を見るとほぼ横ばいの状況にあり、M&Aで大きく伸びたセブン&アイとの差が一気に広がった。
イオンは2021年に100円ショップ大手のキャンドゥをTOB(株式公開買い付け)などで子会社化したが、売上高を一気に跳ね上げるほどの影響はなかった。今後両社の国内流通トップの座をかけた競争にはM&Aが大きな要因となることは間違いなさそうだ。
【セブン&アイ・ホールディングスとイオンの売上高の推移】
文:M&A Online編集部