インフレヘッジに有効な資産への投資意欲が高まる中、コレクタブル投資市場が持続的な成長を記録している。コレクタブル投資とはアートや高級車、ワイン、レアウイスキーなど、コレクタブル資産(Collectable Asset/収集できる資産)を対象とする投資を指す。本記事では、英不動産コンサルティング企業「Knight Frank(ナイト・フランク)」がコレクタブル投資市場の動向を調査した『Luxury Investment Index(ラグジュアリー投資指数/KFLII)』から、2022年に世界の富裕層を魅了したコレクタブル資産についてレポートする。
2022年に最も価値が上昇したコレクタブル資産は?
同調査の対象である10種類の資産の指数(=価値)は2022年第4四半期までの1年間で16%上昇し、世界のインフレ平均=8.8%(「Inflation Peaking Amid Low Growth」(国際通貨基金))のほぼ2倍に匹敵するパフォーマンスを記録した。2022年に価値が最も上昇したのは、「アート」「クラッシックカー」「腕時計」である。
アート:巨匠の高額作品売買相次ぐが、NFTへの関心は冷え込む
超富裕層コレクターによる高額作品の売買が追い風となったアートの価値は、29%上昇と力強い成長を記録した。
オークションでは、「Microsoft(マイクロソフト)」の創設者、故ポール・アレン氏が所有していたポール・セザンヌやヴィンセント・ファン・ゴッホなどの作品数十点が総額15億ドル(約1,981億1,908万円)で落札されたほか(「Biggest Art Sale In History As Microsoft Co-Founder Paul Allen's Collection Fetches $1.5bn」(The Guardian)) 、米著名投資家兼慈善活動家、故アン・バス氏の所有していたエドガー・ドガやクロード・モネの作品12点(「The Collection of Anne H. Bass」(Christies))など、世界の巨匠クラスの作品の売買が相次いだ。
対照的に、2021年に旋風を巻き起こしたNFT(Non-Fungible Token/非代替可能)アートへの関心は急速に冷え込み、価値も大幅に下落した。著名NFTコレクションの1つである「BAYC(Bored Ape Yacht Club/ボード・エイプ・ヨット・クラブ)」の売上総額が16億ドル(約2,114億9,509万円)相当に達する一方で、多くの作品の初値はピーク時の81%減の6万ドル(約793万円)相当へと落ち込んだ。(「The Wealth Report」(Knight Frank))