大手旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)<9603>の業績が振るわない。同社が2023年3月15日に発表した2023年10月期第1四半期決算で営業損益が34億3900万円の赤字となった。

赤字幅は縮小(前年同期は121億5800億円の赤字)しているものの黒字化は果たせなかった。同社は通期の見通しを公表しておらず、黒字転換の可能性はあるものの、出だしの状況ははかばかしくない。

一方、大手旅行会社のJTB(東京都品川区)は2022年11月に発表した2023年3月期第2四半期決算で、当初の予想通り通期の営業利益を63億円とし、3期ぶりの黒字化に自信を示した。両社にはどのような差があるのか。

コロナ禍前を上回る

JTBは2022年5月時点で2023年3月期の業績を売上高1兆150億円(前年度比74.3%増)、営業利益63億円としていた。これを11月に、業績予想を下回る可能性がある売上高を非公表とし、営業利益を据え置いた。合わせて当期利益の黒字見通しを追加した。63億円の営業利益はコロナ禍前の2020年3月期の13億9300万円を上回ることになる。

全国旅行支援や水際対策の緩和などから旅行需要が回復していることを背景に受注が拡大すると判断。さらに旅行以外の事業についても企業や自治体、観光事業者の課題を解決する形で事業を拡大できるとみて、黒字転換の予想を据え置いた。

【JTBの業績推移】単位:億円、2023年3月期は予想

M&A Online
(画像=「M&A Online」より引用)

大きいハウステンボスの穴

一方、HISの2023年10月期第1四半期は売上高が前年同期比37.4%増の461億4300万円となった。旅行事業は前年同期に比べ4.46倍となる345億3300万円に達し、ホテル事業も3.19倍の40億2200万円と回復基調にあったが、テーマパークのハウステンボスを2022年9月に売却したことからテーマパーク事業が88.8%もの減収となる7億5400万円に落ち込んだことから30%台の増収にとどまった。

営業損益は旅行事業が31億7600億円の赤字(前年同期は82億8800万円の赤字)、ホテル事業が4600万円の赤字(同9億6300万円の赤字)、テーマパーク事業が7100万円の赤字(同10億9700万円の黒字)だった。テーマパーク事業が黒字から赤字に転落したことが足を引っ張った格好で、通期でもこの影響は避けられない見込みだ。

新型コロナウイルスは感染力が2番目に強い「2類相当」から、2023年5月に季節性のインフルエンザなどと同じ感染力が最も弱い「5類」に移行する。これによって、旅行需要は一段と拡大することが予想される。

HISは主力の旅行事業をどこまで伸ばすことができるのか。円安が続き訪日観光客が増え、物価高が落ち着き、賃上げが広がるなどの好環境が重なれば、ハウステンボスの穴を埋めて通期で黒字転換することもあり得そうだ。

【HISの業績推移】単位:億円

M&A Online
(画像=「M&A Online」より引用)

文:M&A Online編集部