ベネッセ・福武總一郎氏のもと、美術館として再生

犬島精錬所跡は、遠目には大きな煉瓦づくりの煙突や外壁などが、まるで塹壕のように見える。操業停止後、80年ほどはいわば野ざらしの状態だった。だが、昭和から平成の時代にかけては、映画やテレビドラマのロケ地として利用されたこともあり、遺構ファンなどには人気のマトでもあった。

ところが2001年に、いわばその野ざらしの遺構をベネッセコーポレーション(現ベネッセホールディングス<9783>)創業者の長男、福武總一郎氏が買収した。現在、犬島精錬所は、福武氏が設立し理事長を務める福武財団により、精錬所跡を利用した美術館のほか関連する施設跡も含めて、犬島アートプロジェクトの一部としても再利用されている。

「瀬戸内国際芸術祭」などもあり、近年、瀬戸内の島々には多くの芸術家が集まり、また、観光客も集まる。特に犬島精錬所美術館でイベントが行われる時期は、多くの観光客で賑わいを見せている。その一方、美術館の閉館日には犬島精錬所跡地を遠目に見にくる人もいるが、まるで瀬戸内の凪のようにひっそりとしている。

M&A Online
(画像=冬、美術館の閉館日にはひっそりとしている犬島の港、「M&A Online」より引用)

文:菱田秀則(ライター)