2023年10月期に3期ぶりに本業の儲けを示す営業利益で黒字転換を目指している回転ずしチェーンくら寿司<2695> の目論見に黄信号が灯り始めた。
スタートダッシュを決めたかった第1四半期が赤字で始まったのだ。コロナ禍の影響が徐々に薄れ後半に向けて業績が回復してくることが予想されるが、原材料費や運送費、人件費の上昇などのマイナス要因は依然として重くのしかかっており、予断は許されない状況にある。
回転ずし最大手のスシローを展開するFOOD & LIFE COMPANIES<3563>は2023年9月期の第1四半期は営業黒字を確保し、くら寿司との差が鮮明になったものの、国内のスシローだけを見ると同部門の利益は99.2%もの減益となり、利益額はわずか3900万円に留まった。
回転ずしチェーンでは、いたずら動画が数多く投稿されたことから、回転ずし店での飲食を控える動きが背景にありそうなだけに、業界全体としても雲行きが怪しそうだ。
くら寿司、日本、北米、アジアで売り上げは増加
くら寿司の2023年10月期第1四半期は売上高が10.4%の増収となったものの、原材料費をはじめとするコストが上昇し、営業損益は6億7100万円の赤字(前年同期は6億8700万円の黒字)、経常損益は7億4200万円の赤字(同26億5600万円の黒字)、当期損益は6億2400万円の赤字(同17億800万円の黒字)と全段階で赤字となった。
日本国内、北米、台湾などのアジア地域すべてで売り上げが増えており、国内は3.8%、北米は69.0%、アジアは28.8%の伸びとなった。ただ利益を確保できたのはアジアだけで、日本と北米は水面下に沈んだ。同社では第2四半期以降の回復を見込んでおり「業績予想に変更はない」としている。
【くら寿司の業績推移】単位:億円、2023年10月期は予想
海外スシロー、利益は2.9倍に
FOOD & LIFE COMPANIESの2023年9月期第1四半期は、売上高が5.0%の減収となったのをはじめ、利益も70%を超える減益だが、営業利益は15億7000万円(同71.3%減)、税引き前利益は10億7800万円(同79.5%減)、当期利益は6億7100万円(同80.2%減)と黒字を確保した。
国内のスシローは売上高が18.8%減という不調に終わった。2022年6月に景品表示法に関する措置命令を受けたことや、2020年10月の値上げ、新型コロナによる人流の減少、さらにはいたずら動画の投稿などが、売り上げ不振の要因となったよう。
これに対し、海外のスシローは売上高が84.8%増え、これに伴い利益は2.9倍に急増した。中国で6店舗、台湾で4店舗、香港で2店舗、タイで2店舗と積極的な出店が功を奏した。
両社の第1四半期決算からは、国内、北米ともに売り上げは伸びているものの利益が出ていないくら寿司、国内の売り上げは減少しているものの利益を確保し、海外は売り上げ、利益ともに好調なスシローという姿が浮かび上がってきた。
第2四半期以降はどのような姿に変わっていくのか。少なくともくら寿司には、業績予想通りの数字が現実のものとなるにつれ、大きな変化が訪れるはずだ。
【FOOD & LIFE COMPANIESの業績推移】単位:億円、2023年9月期は予想
文:M&A Online編集部