この記事は2023年3月23日に「The Finance」で公開された「ChatGPTとは?金融業界での使い方の例 7個」を一部編集し、転載したものです。
最近、「ChatGPT」というAIチャット技術が大流行しております。本稿では、ChatGPTとは何か? また、実際にChatGPTを使ってみた事例や課題等をわかりやすく解説します。
目次
ChatGPTとは
ChatGPTとは、アメリカにある人工知能研究所である「OpenAI」が開発した、人工知能チャットボットサービスです。
まるで人間と話しているような対話型チャットが可能で、その性能の高さから大きな注目を世界中で集めています。2022年11月にリリースされたChatGPT は、わずか1週間で100万人のユーザーを獲得、2023年1月にはアクティブユーザー数が1億人に到達と驚異的な勢いでユーザー数を増やしています。
ChatGPTは、OpenAIが開発した「GPT-3」と呼ばれる言語モデルを基にして、インターネット上にある膨大な情報量を学習し、質問などに対して人間のような自然な形で回答する仕組みです。なお、ChatGPTの回答は必ずしも正確とは限りません。時には間違った情報で回答されることもありますが、内容に誤りがあった場合には、ユーザーが指摘できる機能が搭載されているため、精度はより向上していくことが考えられます。
また、多言語対応もできるため、日本語で質問したことには日本語で回答をしてくれるのも特徴です。たとえば、実際にChatGPTの仕組みを尋ねてみると以下のように回答してくれます。
ChatGPTは、さまざまな分野の質問でも回答が可能なことに加え、小説の作成などのクリエイティブ活動にも利用ができる革新性が話題を呼び、ビジネスから個人の活動まで利用が広がっています。
※参考
・[新連載]史上最速で利用者1億人突破のChatGPT、焦るグーグル「破壊」の危機
・”宿題を解くAI”が現実に登場「ChatGPT」凄い中身
・松尾豊(東京大学教授):「AIの進化と日本の戦略」
ChatGPTはどんなことに使えるのか
ChatGPTの使い方はさまざまです。たとえば、以下のような使い方があります。
- ある事柄についての質問に回答してもらう
- 長い文章を要約してもらう
- 外国語を翻訳してもらう
- メールなどの文章を書いてもらう
- 長編小説を書いてもらう
- Excelの関数を教えてもらう
疑問に思っていることについての質問への回答、調べたい事柄についての回答などが主な利用用途として挙げられます。
また、より実務的なExcel関数の具体例やプログラミング言語のコードについても回答がもらえます。そのため、ビジネスでの利用にも対応ができ、専門知識を持った個人的秘書のようにChatGPTを利用することが可能です。
ChatGPTの特長と従来のAIチャットとの違い
(1)回答の正確性が高い
ChatGPTは、膨大なデータを機械学習していることに加え、誤った情報はユーザーが訂正できる仕組みとなっているため、回答の正確性が高いのが特長です。
そのため回答の品質は、自身で検索を行い、情報を取得する品質と比較しても遜色がないレベルです。たとえば弊サイトでも取り上げた「NFT」について、ChatGPTに質問をしてみると以下のような回答が返ってきました。
日本語の言い回しに不自然な部分はあるにせよ、NFTの概要を押さえることは可能です。またChatGPTは、より専門的な分野の質問であっても、時にその分野の専門家に迫るレベルであることも少なくありません。
※※参照:NFTとは? わかりやすく解説【2022年12月最新版】
(2)自然な文章で会話ができる
人と話しているかのような自然な文章で会話が可能なのも、ChatGPTの特長です。従来のAIチャットボットサービスだと、機械的な応答になってしまい、コミュニケーションという面では満足にいかないことも少なくありませんでした。
ChatGPTは、従来のAIチャットと比較しても何世代も知能が向上しているため、機械ではなく人間とコミュニケーションしているように感じます。そのため、今後は企業での応対にChatGPTを導入し、無人での対応にも関わらず、人との対応のように、きちんとしたコミュニケーションをとって解決するという取り組みも進むと考えられます。
(3)多数の情報を要約してくれる
インターネット上には多くの情報が溢れているため、情報の取捨選択や概要を掴むのが難しい場合もあります。たとえば、2008年に起きたリーマンショックについて尋ねると、以下のような回答が返ってきました。
ChatGPTの回答から、リーマンショックについての概要を掴むことが可能です。もちろん内容について問題はないか、精査を行うことは必要になります。
また、法律の条文について概要を掴むのは難しいでしょう。こうした法令の概要などについても、ChatGPTは要約を行ってくれます。具体的に著作権侵害についての法律を尋ねたところ、以下のような回答が返ってきました。
上記のような法令の条文などについても、概要を押さえて要約をしてくれます。
ChatGPTの始め方
ChatGPTは、以下のステップで簡単に利用が可能です。
1. https://chat.openai.com/auth/loginへアクセスし、「Sign UP」をクリックする。
2. 利用するメールアドレスを登録し、任意のパスワードを設定する。※Googleやマイクロソフトアカウントがあれば、それらを利用することも可能
3. 登録したメールアドレスに認証メールが届くので「Verify email address」をクリックする。
4. 名前と名字を入力する。
5. 電話番号を入力して、受信したコードを入力する。
6. すべての設定が完了すると利用が可能になる。
ChatGPTの使い方の例
(1)謝罪メールの作成をお願いする
クライアントに対して、謝罪メールの送付する際の文章作成が可能です。ChatGPTの回答を例文として、少し手を加えると、具体性のある謝罪メールになります。
(2)長編小説を書いてもらう
条件を設定して質問を行えば、長編小説のようなクリエイティブ作品を書いてもらうことも可能です。以下のように小説のタイトルから概要までを数分で文字起こししてくれます。
(3)Excelの関数を教えてもらう
ビジネスで利用するExcelの関数を教えてもらうことも可能です。以下の質問は簡単なものですが、より複雑な条件がある場合でも、条件を指定して質問することで回答がもらえます。
なお、以下の質問をした際には例も出してくれたため、理解が早まります。
(4)最新の金融トレンドについて教えてもらう
最新の金融トレンドについてもChatGPTで回答がもらえます。なお、正確な予測ができないと回答していますが、この回答から自身で調べる取っ掛かりには十分な内容です。
なお、ChatGPTが回答した「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」やESG投資に関連した「TCFD」については、以下の記事をぜひ参照してみてください。
※参考
・CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは? 先行国と日本の状況【2022年版】
・TCFDとは?概要・国内外の事例まで総解説【2022年版】
(5)個人情報保護法のポイントを要約してもらう
自社で個人情報を取り扱う際に留意すべき、個人情報保護法のポイントについても、要点をまとめて回答をしてくれます。
(6)AIチャットがビジネスに与える影響について質問する
ChatGPTのようなAIチャットがビジネスに与える影響についても質問してみました。自社の今後の展開として、AIチャットの導入を考えている際などに役立ちます。
(7)デジタル人民元の中国国内での利用状況について質問する
中国が進めているデジタル人民元についての活用も、ChatGPTに聞いてみると概要を回答してくれます。なお、デジタル人民元についてより詳細に知りたい方は、以下の記事も参照してみてください。
※参考:デジタル人民元とは?現状・影響・問題点を解説【2022年版】
ChatGPTの課題
ChatGPTは、質問したことに対して素早く回答をしてもらえますが、すべてが正しい情報とは限りません。実際に1,000円札のデザインについて質問をしてみると、描かれている人物は野口英世ではなく、福沢諭吉という回答がされました。
こうした明らかな間違いであれば、すぐに気づくことはできますが、専門性が深い分野だと判断が難しいケースもあるでしょう。そのため、ChatGPTの回答を鵜呑みにせずに、自身でも正しい回答かどうかを調べることが大切です。
しかし正確性の課題は、ChatGPTがより学習を積むことや、ユーザーの訂正が入ることで、より精度が上がり、早期に解決していくことも予想されます。
また、金融に目を向けるとChatGPTを制限する動きが広がっています。中国をはじめ、アメリカでも規制の動きがあり、機密性の高い財務データがチャットボットと共有されてしまう懸念や、ユーザーに対して金融の誤情報が渡ってしまう可能性などを示唆しています。
現在は、ChatGPTの「安全かつ効果的な使用方法」としているため、金融機関における活用には、もう少し時間がかかることが予想されます。将来的には、金融サービスにおけるChatGPTを活用したユーザー対応なども考えられるでしょう。
※参考
・中国、ChatGPTの利用停止 アリババやテンセントに指示
・「ChatGPT」に警戒強めるウォール街、大手行で利用禁止の動き相次ぐ
まとめ
ChatGPTの活用方法は、さらに広がっていくことが考えられます。2023年2月には、マイクロソフトが開発元のOpenAIに対して、1兆円規模の追加投資を行うと発表しました。そのため、今後はさらにChatGPTが洗練され、効果的に活用すれば、自社の業務効率化や施策などにも活かすことも可能でしょう。
金融では規制の動きが広がっていますが、将来的には無視できない技術であると言えます。今後、ChatGPTを活用した新たな金融サービスが生まれていく可能性もあるでしょう。