Closeup Benjamin Franklin face on USD banknote
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この連載の目的は、金融市場での重要イベントの解釈と金融商品の動きをわかりやすく解説することです。市場の動きを左右する重要なイベントとは? 市場はイベントをどのように解釈するのか? そして、いかに反応したか? みなさんの投資に役立つマーケット分析のスケッチになれば幸いです(ロン横浜)。


3月の米消費者物価指数(CPI)は前年比で5.0%の上昇だった。9カ月連続の改善で、市場予想の5.1%を下回り、ポジティブな内容だった。高インフレを抑制するために連邦準備制度理事会(FRB)は、かつてないペースで政策金利の利上げを行ってきた。インフレ率が低下すれば、今回のFRBの利上げのサイクルがいったん終わり、今後低下に向かう可能性がある。金利低下は株式市場にはポジティブ。米株式市場はCPIを受け、プラスで始まったが、ほどなくマイナスに転じた。なぜ、このように動いたのか?

総合CPI改善もコアCPIが高止まり

米労働省が2023年4月12日午前8時半に発表した3月総合CPIは前年同期比で5.0%増と2月の6.0%から改善した。9カ月連続で改善ペースを維持していることになる。ただし、市場予想の5.1%は下回った。2021年5月以来、約2年ぶりの低水準だ(図1)。

図1 米CPIの推移 (出典:米労働省データを元に筆者作成)
図1 米CPIの推移(米労働省のデータを元に筆者作成)

CPIの改善はガソリン価格の下落が大きい。食品の値上がりは8.5%と高水準(2月は9.5%)だが、エネルギーは▼6.4%(2月は5.2%増)と大きく低下した。特にガソリン価格が▼17.4%と下げが大きい。中古車の価格も▼11.6%下落とCPI下落に寄与している。

市場の動きがCPIの改善を大きく評価しなかったのは、ガソリン価格が下落したから。ガソリン価格は2022年6月がピークなので、6月以降の前年同月比での改善はいったん止まる可能性が高い。OPECプラスは5月から追加減産を予定しており、むしろ原油価格上昇の懸念がある。

物価の振れの大きいエネルギーと食品を除くCPIコア指数は前年同月比で5.6%。市場予想どおりながら、2月の5.5%を上回った(図2)。コアインフレ率は総合インフレ率を約2年ぶりに上回った。

図2 CPIの主要商品別の動き:CPI/食品/エネルギー/コア(出典:米労働省)
図2 CPIの主要商品別の動き:CPI/食品/エネルギー/コア(出典:米労働省)

原燃料高のインフレは落ち着いたが、雇用統計の強さと合わせてみると、サービス業のインフレは人手不足による賃金インフレであり、改善の兆しは少ないことがわかる。

株式市場の動きは素直に「買い」とはならず