特集『隠れ優良企業のCEO達 ~事業成功の秘訣~ 』では、各地から日本経済を支える優良企業の経営トップにインタビューを実施。CEO達は何を思い事業を立ち上げ、ムーブメントを起こしてきたのか、どのような未来を思い描いているのか。会社のトップである「オーナー社長」に聞き、企業のルーツと今後の挑戦に迫る。

イーストウエストコンサルティング株式会社は、欧米を源流としたヘッドハンティングを日本で始めた日系エグゼクティブサーチファームのパイオニアだ。1987年に創業し、36年の歴史を持つ。現在も実績を積んだ日本人・外国人のコンサルタントが、クライアントの発展と繁栄に貢献している。本インタビューでは創業者で代表取締役社長の室松信子氏に、今日までの変遷や事業の特長、将来の展望などについて伺った。

(取材・執筆・構成=大正谷成晴)

イーストウエストコンサルティング株式会社
室松 信子(むろまつ のぶこ)――イーストウエストコンサルティング株式会社 代表取締役社長
1980年米国オレゴン州の大学卒業後、日本アイ・ ビー・エムに入社。製品開発、事業計画そして戦略事業部門を経て、1987年イーストウエスト コンサルティングを設立し、代表取締役社長就任。
イーストウエストコンサルティング株式会社
1987年創業、日本初のエグゼクティブサーチ(ヘッドハンティング事業)をスタート。以来、36年に渡って日本でトップのエグゼクティブサーチファームとして君臨している。会社規模並びに扱った案件数は日本で最大のエグゼクティブサーチファームだ。

目次

  1. エグゼクティブサーチの草分け的存在
  2. コンサルタントが自ら優秀な人材を探す
  3. 質の高いサービスの提供こそが求められる役割

エグゼクティブサーチの草分け的存在

―― イーストウエストコンサルティング株式会社の事業内容や今日までの変遷をお聞かせください。

イーストウエストコンサルティング代表取締役社長・室松信子氏(以下、社名・氏名略):弊社は1987年に創業した、日本におけるヘッドハンティングの草分け的な存在です。一般的なくくりで言うと人材紹介業ですが、基本はスカウトで人材を獲得します。昨今は「エグゼクティブサーチ」という名称が日本でも浸透しています。

イーストウエストコンサルティング株式会社
(画像提供=イーストウエストコンサルティング株式会社)

創業の背景には、日本における規制緩和の流れがあります。1980年の日本経済は輸出産業を筆頭に好調でしたが、1985年のプラザ合意を経て日本市場の開放に対する圧力が増した結果、外資系企業がこぞって日本市場に参入してきました。例えば金融ではゴールドマンサックスなど超一流企業が東証に席を置いて、野村證券や大和証券などと同じようにビジネスを始めたわけですが、そのためにはバイリンガルで優秀な人材が必要でした。その中で1986年に労働者派遣法が施行され、民間企業による人材派遣や紹介が解禁されましたが、外資系企業の人材ニーズは旺盛で、競合もほとんどない状況にビジネスチャンスを感じ、起業を決断しました。

―― 事業は順調に伸びたのですか。

当時から、大手上場企業を中心にエグゼクティブ人材はたくさんいました。一方、限られたポストの中で優秀な人材が適材適所に配属されていたわけでもなく、派閥や学閥、好き嫌いなどで人事が行われることもあったようです。そのような状況の中、世界的に有名な企業が日本市場に入ってきたことで活躍の場が広がり、優秀な人材に声をかければ興味を持ってくれると考えましたが、その読みは見事に当たりました。当時は、海外でMBAを取得して英語が使えても、日本企業では翻訳業務しか任されないといった人材もいて、そういった方たちに弊社の橋渡しは非常に喜んでいただけました。

―― どういった業界からアプローチをかけていったのですか。

金融業界の参入が目立ったので、当初はこれらに関わる人材にフォーカスしていました。その後、1987年にアメリカで起きたブラックマンデーの後、1990年に日本でバブルが崩壊すると、金融や不動産業界の景気は一挙に冷え込み、人材ニーズも急減しました。これらと入れ替わるように、インターネットの走りであるLAN(ローカルエリアネットワーク)などが注目されるようになり、IT人材も対象になりました。以降も半導体、自動車、製薬、医療機器の規制緩和、ECビジネスの成長などに伴い、カバーする人材領域を広げていきました。現在もAIの開発者やDXの推進など、IT人材のニーズは根強い状況です。

イノベーションを起こすことができるプロフェッショナル人材を必要とする企業も増えていて、コロナ禍で過去最高益を記録したルイ・ヴィトンなどを展開するLVMHといったハイブランドも優秀な人材を求めています。他にも外資系ホテルの日本進出は凄まじく、オフィスビルなど不動産関連も盛り上げっています。外資系企業同士の横のつながり、あるいは海外にいる日本人の駐在員から紹介を受け、弊社を知り連絡を頂けることも多くあります。私たちはクライアントを通じて、企業がこれから必要とする人材像や新たに登場するビジネスなどについて、いち早く情報を知ることができるため、それを活かしています。

昨今はエグゼクティブサーチに対する認知度が高まり、日本企業からのニーズも増えてきました。今では大手企業が役員レベルの人材を中途で採用するケースも珍しくありません。現在は、外資系5:日系5の割合でクライアントとお付き合いしています。同様に、弊社のコンサルタントの、日本人と外国人の比率も半々です。

コンサルタントが自ら優秀な人材を探す

―― エグゼクティブサーチには、転職をサポートするコンサルタントの存在が欠かせません。御社ではどのように育成していますか。

創業当時は転職市場がなく、どこの誰が転職を希望しているかわかりませんでした。よって、クライアントの要望に応じてリサーチを始めて求める人材を見つけたとしても、転職を希望しているかどうかは別の話です。一人ひとりにコンタクトを試み、人柄やスキル、タイミング、転職の決断を確かめていきます。こういった一連のノウハウをトレーニングして、一人前のコンサルタントを育成してきました。

一方、企業に在籍した経験がないと、実際に働いている方をスカウトし、ポジションを紹介するにも説得力がありません。そのため、弊社のコンサルタントは、異業種や同業種からの転職者がほとんどです。さまざまな世界に身を置いていた者達だからこそ、優秀な人材を探してコンタクトを取り、クライアントに自信を持って紹介することができます。登録者だけに頼らず人材を見つける力があるのは、弊社の強みです。実際、約9割の紹介人材はコンサルタントが自ら探してきております。

質の高いサービスの提供こそが求められる役割

―― さらなる成長を実現するための目標や5年後、10年後に目指すべき姿をお聞かせください。

企業が存続する限り人材は必要で、できるだけ良い人材を獲得したいと思うのは当然のことです。優秀な人材は企業の成長に不可欠だからこそ、エグゼクティブサーチの存在は必須となります。ビジネスパーソンの皆さんも、昔と異なり会社で出世すると一生安泰とは思えず、自分の人生は自分で切り開くという意識を持つ人が増えました。若い世代を中心にエグゼクティブサーチを活用して能動的に転職活動をするケースが目立ちます。

このような状況を背景に私たちが心がけているのは、常に質の高いサービスを提供することです。質が高いということは、クライアントのニーズを理解した上で、それにマッチした候補者を確実に見つけ出すということに他なりません。マーケットが変化し、ビジネスにイノベーションが起きたとしても、ファンダメンタルズを大切にしていれば、それに沿った人材を見つけ出してアプローチをかけることができ、ポジションに対する説明も明確にできます。プロのコンサルタントとしてこのような点を押さえながら、より多くの企業と候補者にサービスを届けていくことが当社のミッションだと思っています。企業の発展を支え、ビジネスパーソンのキャリアを正しく導くのが弊社の役割であると信じています。
そして5年後、10年後もマーケットの中で活躍をし続けるレジェンドのような存在になりたいと思っています。

―― 最後に、ZUU onlineの読者へメッセージをお願いします。

マーケットや人材の情報、スカウトのノウハウをたくさん蓄積していますので、優秀な人材の採用を考えている企業様は、ぜひ弊社にお声がけください。また、ビジネスパーソンの方々からキャリアに関するご相談も受けていますので、お気軽にご連絡いただければと思います。