医薬品開発業務受託事業(CRO)を手がけるリニカル<2183>は、2014年に韓国とドイツで同業者である企業2社を子会社化し、さらに2018年には米国の同業企業を傘下に収め、一気に海外拠点を18カ国・地域に拡大した。
この路線を踏襲し、今後10年以内に60カ国・地域に事業エリアを広げる計画で、人員も現在の約800人から1700人に増員するなど積極姿勢を見せる。どのようなシナリオを描いているのか同社の秦野和浩社長にお聞きした。
拡大続くCRO市場
-積極的な経営計画をお持ちですが、CROの将来見通しをお教え下さい。
15年ほど前のCRO市場は2兆円程度だったが、今は5兆円にまで拡大している。この流れは変わらず、今後さらに市場は膨らんでいくとみている。
-市場が拡大する背景には何があるのでしょうか。
今、薬の65%はバイオテック(バイオロジーとテクノロジーを組み合わせた造語で、遺伝子組換えなどの技術を用いて治療に役立つ物質などを作り出す技術)関連の企業が生み出している。大手製薬会社による薬は35%に下がっている。新薬につながりそうな物質を持つバイオテック企業が多く生まれているが、これら企業は薬を開発する機能は持っていないため、アウトソーシングが増えるとみている。
また大手製薬会社がバイオテック企業を買収することもある。大手製薬会社は新薬の開発能力は持っているが、買収したバイオテック企業に関する新薬開発を外部に委託するケースも少なくない。こうしたことを考えると市場拡大の流れは続くと考えられる。
-これまで3社を子会社化されています。経緯と現状をお教え下さい。
私は大手製薬会社で免疫抑制剤の開発に携わっていたが、2005年にこの会社を立ち上げた。当時からグローバルで活躍できるCROにしたいと考え、親和性のあるいい会社はないかと探していた。
まず出てきたのが韓国で、2014年に子会社化して一緒にやってみると、意外とうまくいった。同じ年にドイツの会社も子会社化し、こちらもうまくいった。韓国の会社は20人ほどだったのが現在は80人ほどになっており、ドイツの会社は100人ほどだったのが200人ほどになっている。
米国ではなかなかいい会社が見つからなかったが、2018年になってオンコロジー(がん)とワクチンをやっている会社を買収することができた。
我々はオンコロジー、中枢神経、免疫関連の新薬開発を得意としており、同じ領域で新薬開発業務を受託している企業であれば、細かいところまでマネージメントできるので、うまくいくのではないだろうか。