これからアクセルを踏み込む

-ところで、現在の株価についてはどのようにお考えですか。

この株価は物足りないと考えている。PER(株価収益率=株価が1株当たり純利益の何倍なのかを見る投資指標)でいうと12倍ほどしかない。市場の平均より低く課題に感じている。

一方で評価されないのは成長率があまり高くないのが原因だと考えている。2024年3月期の業績予想が1%台の増収営業増益だったのが影響しているのだろう。もちろん計画は必達でいくが、経営者としてはアップサイドを狙うために、日々いろんな仕掛けをしている。今回のM&A BASEの買収もその一つであり、このほかにもいろいろと材料を出し、成果を出せばちゃんと評価していただけるだろうと考えている。

-M&A BASEのほかにはどのような仕掛けがあるのですか。

SaaS・DX事業で、すでに新規事業を手がけている。経営管理のソフトウエアであるKUROTENはその一つだ。買収した当時のエキサイトは赤字だったが、経営管理を導入し、そのうえで適切な経営資源を配分することで、4カ月で単月黒字になり、通期でも黒字を達成した。

これで経営管理がいかに重要なのかが分かった。これをエキサイトだけで享受するのではんなく、困っているお客さん向けにKUROTENとして提供することにした。今、顧客が数十社ほどで、ようやくどう使えばいいのか分かってきた状況なので、これからアクセルを踏み込もうと思っている。

AI(人工知能)も社内で地道に研究に取り組んでおり、生成AIが出てきたのでこの活用を考えている。KUROTENでは今年5月からチャットGPTを搭載している。

AIには三つできることがあると考えている。一つは業務効率の改善によるコスト削減効果。二つ目は既存のサービスのUI(ユーザーインターフェース=サービスとユーザーを繋ぐ接点)や、UX(ユーザーエクスペリエンス=ユーザーが製品やサービスで得られる体験)を良くすること。三つ目は全く新しいサービスを作ることだ。三つ目は始まったばかりで、これからAIを活用した新しい事業を作っていくつもりだ。

M&A Online

(画像=西條晋一エキサイトホールディングス代表取締役社長CE0、「M&A Online」より引用)

【西條晋一(さいじょう・しんいち)氏】
1996年、早稲田大学法学部卒業後、伊藤忠商事に入社
2000年、サイバーエージェントに入社
2004年、取締役に就任
2008年、専務取締役COOに就任
2013年、WiL共同創始者ジェネラルパートナーに就任
2018年、XTech、XTech Venturesの2社を創業
2018年、XTechの子会社であるXTech HP(現:エキサイトホールディングス)を通じてエキサイトの全株式を取得し、代表取締役社長CEOに就任

文:M&A Online