この記事は2023年7月18日に「The Finance」で公開された「【連載】地方創生×金融ビジネス-前編- 活力ある地域社会の実現に向けたコミュニティの形成・強化の必要性と金融の可能性」を一部編集し、転載したものです。
日本では、少子高齢化やそれに伴う人口減少は避けることができない超長期のトレンドとなっている。全国的に若年層を中心とした都市部への人口流出が進み、地域人口の減少に拍車がかかっているなかで、地方創生の必要性はますます高まっている。
地方創生には、共通のテーマや場を中心に集った人々の集合体であるコミュニティの維持・強化が不可欠である。前編である本稿では、地方創生におけるコミュニティの重要性や金融業界の環境変化を念頭に置いたうえで、コミュニティ形成の様々な起点や事業化に向けた要諦について解説する。
目次
主なポイント
- 共通のテーマや場を中心に集った人々の集合体であるコミュニティは、地方創生が目指す『将来にわたって「活力ある地域社会」の実現』に重要な役割を果たす。特に、①地域住民の繋がりの維持・形成により地域の人口減少を和らげること、②地域の魅力発信等によって地域の外から稼ぐ力を高め、地域内経済循環を実現すること、③情報交換や相互扶助の役割を一層担うことで人口減少に適応した地域を作ることの3点において、コミュニティが果たす役割は大きい。
- これらのコミュニティの在り方に深く関わってくるのが金融業界である。金融事業に影響を与えうる変化として、労働人口の変化、人材・就労形態の流動化、社会的な価値観の変化、テクノロジーの進展が挙げられる。これらの環境変化を受けて、日々変化する社会的ニーズを的確につかむためには「ニュー・コミュニティ・ビジネス」という考え方が重要である。
- 働き方の変化やテクノロジーの進展、人々の生活の変化などによって新たなコミュニティの形成・活発化が進んでいる。金融事業はこのような多様なコミュニティとの関与を深めることで人々のニーズに応える新規事業を創出できる。
- 金融事業者が新たなコミュニティ・ビジネスを生み出すためには、コミュニティを育てるための能動的な関与、パートナーとの連携を通じたコミュニティへのアクセスの確保、コミュニティの将来見通しなどのデジタルを通じた示唆の蓄積が肝要である。
- 地方創成に取り組む各自治体は、自らの地域が真に必要としているコミュニティを見極めると共に、こうした新しいビジネスへの視点を有する、先見性のある金融機関と協働しコミュニティの進化・成長のカタリスト(触媒)になることが求められる。
コミュニティの定義
本稿におけるコミュニティは、「共通のテーマ(属性・価値観・取組など)や場(リアルの集会所やバーチャル空間など)を中心に集った人々同士が、相互のコミュニケーション・交流を通じ、時間とともに結びつきを強めていくもの」と定義する。そのため、コミュニティは働き方の変化やテクノロジーの進展、社会の変化など様々な要素に起因して新しく形成されるものも含む。
特に地方創生の文脈では、例えばDAOやフリーランス・ギグワーカーに関する団体、スマートシティ等の街づくりなどが、後述するコミュニティ形成の起点として重要である。
地方創生におけるコミュニティの重要性
内閣府が策定した、『第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2020改訂版)』によると、地方創生が目指すべき『将来にわたって「活力ある地域社会」の実現』と、『「東京圏への一極集中」の是正』を提示している。前者は、①人口減少を和らげる、②地域の外から稼ぐ力を高めるとともに、地域内経済循環を実現する、③人口減少に適応した地域を作る、という3つの要素で構成される。
上記の将来像の達成とコミュニティのあり方は密接に繋がっており、それらの維持・強化をいかに効果的・効率的に行っていくかがポイントになる。
- 人口減少を和らげる
住民基本台帳に基づく統計から各都道府県における転入・転出超過数を把握することができる。2022年では、東京都は他都道府県からの転入超過数が約38,000人(都人口比+0.28%)であったのに対し、転出超過率が最も高い福井県では約3,700人の転出超過(県人口比-0.48%)となっており、地方では他府県への人口流出が進んでいることが分かる。
コミュニティの存在は、人々のコミュニケーション・交流を活発化させるという点において、その地域との繋がりや帰属意識の拠り所となる。一方でコミュニティのない、または影響が小さい地域では、住民がその地域との繋がりを感じにくい状態にあり、結果として若年層を中心とした都市部への人口流出に拍車がかかることになる。そして若年層を中心とした地域人口の減少は、コミュニティの構成員を減少させ、コミュニティのさらなる存在感の低下に繋がるという悪循環を生む。人口減少を和らげるうえでの一つの方策として、コミュニティの維持・強化は肝要と言える。 - 地域の外から稼ぐ力を高めるとともに、地域内経済循環を実現する
テーマに基づくコミュニティは地域内の人々のみならず、地域外も含め広範にわたる人々を結び付ける。コミュニティを通して地域の情報発信を続けることにより、地域内外の人々に地域の魅力を伝えることができ、観光客や移住者のみならず、継続的に地域に関心を持つ人々の増加に寄与することができる。
同様にコミュニティは、その地域が抱える課題解決のために地域内外の人々を巻き込む起点にもなる。例えば、地域における新たな雇用やイノベーションを創出することが必要であれば、コミュニティを通して地域内外にその課題を発信し、解決に向けた助力を得ることも可能となる。このように地域内外の関係者をコミュニティに取り込むことは、地域内経済循環をはじめとした、地域が抱える課題解決に寄与する。 - 人口減少に適応した地域を作る
人口減少は先進国における明確なトレンドであり、日本においても避けることはできないものである。将来にかけて地域の人口減少が続くと、住民同士の繋がりを保つことが現在より難しくなり、個々人が孤立する状態が生じ、住民同士の相互扶助や情報交換が機能しなくなる可能性がある。そのような将来に備えるため、地域内の意見交換の場としてコミュニティを位置づけ、一層強化することで、人口減少に適応した地域作りが可能となると言える。
このように「活力ある地域社会」に向けてコミュニティは重要な位置を占めるが、これからのコミュニティのあり方に深く関わってくるのが金融業界である。
金融業界におけるコミュニティとの関係性と環境変化
現在、日本社会は世界情勢やデジタル化などの潮流を受け、大きな変動の真っただ中にある。抜本的な解決策の見つかっていない少子高齢化などの社会課題が山積し、個々人の生活の不安材料となっている。しかしこうした不確実性の高い時代であるからこそ、これまでも人々に「安心」を提供してきた金融業界の役割に対する期待値は高まっている。例えば保険業界においては、金融商品仲介業にかかる規制緩和なども背景に、従来の生命保険・損害保険商品販売に加え、資産形成や健康維持を含む、生活における幅広い不安に対して応えていく姿勢が求められている。
こうしたニーズを直視しつつ、持続性のある事業を実現していく上でカギとなってくるのが「ニュー・コミュニティ・ビジネス」という考え方だ。昨今の社会環境の変化に起因するコミュニティ形成に対する感度を高め、これらのコミュニティと深く関わることで、自社の中長期的な成長に繋げていくことができる。
コミュニティと金融の関わりを正しく理解するために、まず本稿では金融業界を取り巻く環境の変化について論じる。特に10年先の金融事業に大きな影響を与えうる環境変化にはどのようなものがあるだろうか?
総じて見たとき、金融事業に特に影響を与える変化は(1)労働人口の変化、(2)人材・就労形態の流動化、(3)社会的な価値観の変化、(4)テクノロジーの進展、と言えるだろう。
(1)労働人口の変化:少子高齢化の波を受け、労働人口の減少が続いた場合、社会の多方面に深刻な影響を与えるだろう。人手不足によって、中小企業などの事業規模拡大が妨げられる可能性がある。金銭的な余力が生まれにくいことから、従業員の賃金水準も上がりにくく、従業員の日々の生活に影響が出る。定年の引き上げやAIを活用した業務の自動化・効率化、外国人人材の増加など、官民による総合的な対応を効果的に行う必要がある。
(2)人材・就労形態の流動化:若年層を中心に人材の流動化、働き方の多様化が進んでいる。正社員であっても、一つの会社で働き続ける人は減っており、数年毎に転職を繰り返すジョブホッパーも珍しくなくなってきた。フリーランスやギグワーカーとして働く人も増えており、企業と従業員の関係性が変化している。正社員・契約社員・派遣社員などの旧来の働き方に対しては所属企業から福利厚生が提供されるものの、フリーランスやギグワーカーについては同様の制度がないことが大きな課題となっている。
(3)社会的な価値観の変化:ながらく企業やその活動に対する社会的期待値は、提供商品・サービスを踏まえた収益性などの財務的な指標に重きが置かれていた。しかし近年、従業員の「Well-being(健康・生活・キャリアなどにおける良好な状態)」や環境問題解決への寄与など、非財務的な指標の重要性が増している。社会全体に対し、自社の専門領域などで社会の一員として責任を果たすことが企業に求められている。特定組織への帰属意識の希薄化も相まって、社会的な責任を果たせない企業は従業員を繋ぎとめたり採用したりすることが難しくなっている。
(4)テクノロジーの進展:近年の世界的なデジタル技術の進展を通じ、人々の生活を豊かにする商品・サービスの選択肢が拡大するとともに、個々人の個別ニーズへの迅速な対応が必要となっている。こうした動きを受け、異業種連携が活発化している。また、スタートアップを含むテクノロジー企業などの新規参入などを通じ、業界構造も変わりつつある。AI技術の発達・浸透による企業活動などの自動化・効率化を通じ、人の就く仕事の内容も大きな影響を受けるかも知れない。
これらの環境変化を受けて、金融やその周辺事業の果たすべき役割は大きく拡大すると考えられる。社会の個々人の目線に立ったとき、長期的な予測の立てにくい環境は様々な生活上の不安をもたらすだろう。同時に、手段の多彩化を通じて自身の人生・生活のあり方を自ら設計することが出来るようになり、自己実現に向けたニーズも高まると予想される。生活上の不安と自己実現に向けたニーズの双方を満たしていけるような商品・サービスの提供が求められていく。また、各業界の企業の目線に立ったとき、人材獲得競争の激化が予想される。こうした競争に勝ち抜く上で給与水準と共に一層重要になってくるのが福利厚生制度だ。従業員の直近のニーズを精確に把握しつつ、そのニーズに対応した雇用環境を提供出来る企業が、安定的な人材の確保を通じ、持続的に成長していく世界になるだろう。個々人・企業を含む、社会のあらゆるステークホルダーに対し関わりを持ちながら、その時々のニーズに対して、安心をもたらしていく動き方が金融企業に求められている。
「ニュー・コミュニティ」の萌芽
金融企業が現在有している社会的なステークホルダーとの接点に加え、一層広く将来を見据えたつながりを提供してくれるのが、共通のテーマや場を通じた人々の輪であるコミュニティだ。
金融企業が社会全体に安心を届けていく上で、こうしたコミュニティと継続的に関わりを持ち、自社のビジネスに繋げていくことは極めて重要だ。
コミュニティの進化の過程においては多くの新しいニーズが顕在化していくだろう。このようなアンメット・ニーズの変遷を的確に把握することで、金融企業としては革新的な商品・サービスの開発・提供を行うことが可能となる。求心力が強く多くの人々が集まるコミュニティは時間とともに一層求心力を強めていくだろうから、進化をしながら持続する。こうしたコミュニティと付き合う企業は、参加する個々人とも長期的な接点を持つことが出来、各ライフステージにおける価値提供の機会を得ることになる。
コミュニティは社会の様々な変化を起点に形成される。働き方の変化によって生じるものもあれば、政府・自治体の施策によって活発化するものもある。テクノロジーの進展によって広がるもの、生活の変化に起因するものもある。デジタル化を通じ人々が空間や時間の制約なく交流出来るようになったこともあり、新たなコミュニティが生まれやすくなっている。
社会の潮流を踏まえたとき、特に次の切り口を中心にコミュニティが拡大していく可能性がある。
フリーランス・ギグワーカー:個々人の都合・状況を踏まえた柔軟な働き方は今後も浸透していくだろう。高いスキルを持つデジタルクリエイターやフリーランスの括りで支援・情報共有団体(デジタルクリエイター協会、フリーランス協会)が組成されるなど、全国的に人々がつながり、大きなコミュニティが生まれつつある。また地方創生の観点では、勤務場所の制限が少ないフリーランスやギグワーカーは、都心部に住みながら地方の仕事に携わることや、逆に地方に残りながら都心部の企業の仕事に携わることも可能なため、地域にとって、より柔軟に人手を確保しやすくなる面もある。
DAO:ブロックチェーン上で誰もが参加でき、ガバナンストークンの保有を通じ投票・意思決定に関与できる新たな組織としてDAOが注目を集めている。企業のような中央集権的な組織の一員としてではなく、プロジェクトベースでの勤務を通じ、個々人が関心のある仕事に直接的に関与する。若年層の活躍の場が広がる一方で、法整備などで不確定な要素も大きい。しかし近年、DAOを活用した新たなコミュニティ形成を目指す自治体が出てくるなど、地方創生の観点においても活用が進んでおり、その動向が注目されている。
外国人駐在員:グローバルな視点を通じたビジネスの活性化や技術の進展などの視点から、高いスキルを有する外国人人材の就労環境の整備が東京都など全国の都市部を中心に行われている。他の先進国との給与ギャップなど課題も多いが、魅力的な環境づくり・福利厚生制度の実現を通じ、駐在員コミュニティが一層拡大する可能性がある。
スマートシティ等の街づくり:トヨタのウーブン・シティ(愛知県)など、サステナビリティを主軸とした街づくりが全国で進行している。また、各地域の労働人口の維持も視野に、若年層などの誘致に取り組んでいる自治体も多く、こうした移住者を中心にコミュニティが形成されつつある。住み続けてもらうための特典として、充実した福利厚生などの提供も想定しうる。
メタバース:テクノロジーの進展によって活発化するコミュニティの代表例がメタバースである。日本においても「クラスター」など既にスマートフォンやPCで即時接続可能なメタバースが展開されている。幅広いテーマで構築され、誰でも参加できる多数のマップがユーザーによって提供されており、ユーザー同士の交流を通じ多様なコミュニティが形成されている。こうした空間での経済活動も今後活発化していくだろう。
ワーキングスペースなど:コロナ禍の影響でリモートワークが推進された結果、自社オフィスでも自宅でもない、第三の場としてのワーキングスペースが都市部を中心に増えている。自由な働き方の一環として、コロナ禍の終息後もリモートワークとともに定着化するだろう。こうしたスペースがセミナーなどの企画を通じ利用者同士の親睦を図ることで、コミュニティ組成の起点となる。
アプリなどのプラットフォーム:交流アプリ(インスタグラムなど)や健康維持アプリなどを軸に多様なコミュニティが形成される。特に注目を集めているのが「Ed Tech」と称される学習アプリだ。政府による「デジタル人材育成プラットフォーム」を通じたデジタル学習・リカレント教育の推進も追い風に、アプリ企業・履修者・教育機関など幅広いステークホルダーの関与するコミュニティが形成されつつある。
ポイント経済圏など:EC・通信会社を中心に既に数千万人規模のアクティブ・ユーザ数を持つポイント経済圏が形成されている。経済圏のユーザー同士の繋がりをテーマ軸などで促進することで、求心力のあるコミュニティが組成される可能性がある。
ソーシャル・アクティビズム:世界中で地球環境や生物多様性への意識が高まる中、日々の生活においてこれらに配慮し行動をする購買者・事業者が増えており、強固なコミュニティを形成しつつある。
事業化に向けた要諦と「ニュー・コミュニティ・ビジネス」の可能性
こうしたコミュニティと関与を深め、人々のニーズに新規事業を通じて応えていくには、どのような視点が必要だろうか?我々としては、次の3点が特に重要と考えている。
(1)コミュニティに対する能動的な関与:コミュニティが自ずと進化・成長していくのを受け身で待つのではなく、企業が自ら能動的にその発展を促進し「育てていく」ことで、当該コミュニティの動向を常に肌身で感じ取り、人々の深いニーズにいち早く対応した商品・サービスの提供が可能となる。コミュニティの中核的なテーマや場における人々の交流を、明確なアジェンダ設定に基づくイベントやキャンペーンなどを通じプロデュースしていくことで、自社もコミュニティの中の欠かせない一員としての認知・信頼を獲得することが出来る。新しく生まれ広がっていくコミュニティと早期から接点を持ち、徐々に関与を深めていくことが肝要だ。
(2)パートナー連携を通じたコミュニティへのアクセス:コミュニティの多くには、人々が交流する場を提供し、支援を行う団体がある。例えば、フリーランスのコミュニティであれば、フリーランス協会やフリーランスと企業のマッチングを行う企業などがあるだろう。こうした団体や企業と互恵関係に基づくパートナーシップを組んだ上でコミュニティと関係性を構築していくことが重要だ。コミュニティの一つのハブでもある、こうしたパートナーとの関係も通じ、規制的な観点も含め金融企業として出来ること・出来ないことを見極めることが求められる。
(3)デジタルを通じた示唆の蓄積:コミュニティは人々の動的な集まりであるから、事業性のあるニーズを発掘していく上でも購買行動などのデータの蓄積・分析を継続的に行っていく必要があるだろう。自社の商品・サービスに繋がっていくコミュニティの括りを見極めていく上でも有用である。コミュニティの最前線の動きや将来的な見通しに関する独自の示唆を積み重ねることが出来れば、それらの示唆の他社への販売も含め、新たな事業の可能性が見えてくる。
こうした視点も足掛かりに、短期的・中長期的の双方の時間軸で新規事業を検討することが大事である。短期的には、即座に大きな収益を得ることを狙うのではなく、まずは対象とするコミュニティと繋がった上で、関係性を深めることに主眼を置きたい。狙いを定めたコミュニティと接点を持ち、既存の規制や商品・サービスの枠内でクイックに検討を行う必要がある。既存でカバー出来ていない顧客層をいかにコミュニティとして捉え、これらの顧客層と接点を持つ他企業とのパートナーシップなどを通じ関与できるかがポイントとなる。
中長期的にはこうしたパートナー企業とも連携しつつ、前述のとおりコミュニティに自ら働きかけて、その拡大を加速化したい。コミュニティの構成員との継続的なコミュニケーションを通じて理解を深めることで、当該コミュニティの抱える具体的なニーズを把握する。様々な方面からデータを取得・分析し、真に喜ばれる商品やサービスを設計することで、アップセルやクロスセルも狙っていく。データを蓄積し示唆を深めることで、金融以外の事業機会も見えてくるだろう。今から考え始めることが重要だ。
このように「ニュー・コミュニティ・ビジネス」はこれまでにないビジネスモデル創造の起点として大きな可能性を秘めている。少子高齢化など「課題先進国」である日本において地方創成などを通じていち早く有望なコミュニティの見極めとビジネスモデルの創出を行うことで、海外への同モデルの展開など、さらなる価値提供・事業機会の獲得も視野に入ってくるだろう。
地方創成に取り組む各自治体は、自らの地域が真に必要としているコミュニティを見極めると共に、こうした新しいビジネスへの視点を有する、先見性のある金融機関と協働しコミュニティの進化・成長のカタリスト(触媒)になることが求められる。
おわりに
本稿では、地方創生におけるコミュニティの重要性やコミュニティを活用した金融事業の在り方について論じた。後編では、これらの論点をもとに、保険やWeb3を活用した具体的な事例を検討することで、コミュニティにおける金融の新たな可能性について思考を深めていきたい。
シニアマネジャー
米系コンサルティング会社を経て現職。金融機関をはじめ、多岐にわたる業界・業態の グローバル企業における戦略立案支援に従事。デロイト トーマツのThought LeadershipプラットフォームDTIの設立推進なども通じ、業界・テーマ横断的な社会や企業の在り方を探求
ディレクター
SIer、米系コンサルティングを経て現職。金融機関の全社/事業変革や、異業種の金融参入・強化に強み。現在は、Future of Finance OfferingをLeadしており、中長期視点での金融の在り方や、Gen-AI等を切り口とした金融の将来像を追求している
マネジャー
日系Sierおよび米系コンサルティング会社を経て現職。金融機関向け戦略立案~実行支援や、非金融の事業会社向けに金融をイネーブラーとした経済圏構築の構想立案・実行支援を軸に多数のPJTを経験
コンサルタント
政府系金融機関を経て現職。キャッシュレス決済の普及推進支援、金融機関の財務・経営分析、製薬会社向けのSAP導入支援等の経験を有する