日本の製造業は、慢性的な人手不足から、ベテランが持つ仕事の技術や知識を伝承することが難しい現実に直面しています。このような状況の中、IoTゲートウェイを導入することで製造現場の作業効率を向上させる試みが巻き起こっています。

ここでは、IoTゲートウェイの特徴や製造現場に導入するメリットについて詳しく解説していきます。

目次

  1. IoTゲートウェイとは
  2. IoTゲートウェイの特徴
  3. IoTゲートウェイの役割
  4. IoTデバイスが直接インターネットにつながらない理由
  5. IoTゲートウェイの接続方式
  6. IoTゲートウェイの多様性
  7. 製造現場にIoTゲートウェイを導入するメリット
  8. IoTゲートウェイが活躍する他の分野
  9. IoTゲートウェイで業務効率化とセキュリティの向上を

IoTゲートウェイとは

IoTゲートウェイとは?導入のメリット、活用事例について詳しく解説
(画像=Koto Online編集部)

IoTゲートウェイとは、IoT(インターネット・オブ・シングズ=モノのインターネット)製品とデータを蓄積するクラウドの間に位置し、情報の共有や各種動作のコントロールなどを行う装置のことです。

IoTシステムは一般的に、「デバイス」「ネットワーク」「ゲートウェイ」の3つのパーツから成り立っています。ここで言うデバイスとはコンピュータ端末やセンサーなどを指し、これらはデータを集めて送信したり、遠隔地から他の装置に命令を送ったりします。

ネットワークとは、これらの装置がデータや命令を送受信するための通信技術のことを指します。そしてゲートウェイは、デバイスとネットワークをつなぐ中継点の役割を果たします。

最近では多くのデバイスが通信モジュールを内蔵しており、Wi-FiやBluetoothなど、様々な通信規格に対応しています。そのため、直接ネットワークに接続して通信が可能な機器も増えています。

しかし、大量のデバイスを使って大規模なIoTシステムを構築する場合、各デバイスに高性能な通信機能を持たせるとコストがかさむ、通信規格が機器ごとに異なるなどの問題が生じます。

近年、多くの製品やサービスがIoT化し、あらゆるものがインターネットに接続して情報のやり取りを行うようになってきました。そのような中、情報のスムーズな送受信やIoTによって接続された機器の管理が必要となり、IoTゲートウェイは不可欠な存在となっています。

IoTゲートウェイの特徴

通常、データのフォーマットや通信プロトコルが異なるシステム間でのデータの交換は困難です。そんな異質なシステム同士を繋げ、データの通信を可能にするために、IoTゲートウェイはIoTデバイスとクラウド間でデータをやり取りする中継役を担っています。

ゲートウェイは、複数のデバイスを1つの回線でインターネット接続する「ルータ」に似ています。ルータは受け取ったデータの通信ルートを決定する機能がありますが、ゲートウェイは一般的にネットワークを中継する装置全体を指す名前です。

IoTゲートウェイとIoTデバイスとの結びつきは、無線接続が主流です。たとえば、工場や倉庫などの広範囲な場所では、センサーやデバイスなど多くのIoT機器をゲートウェイに接続する際、1本ずつを有線でつなぐのは現実的ではありません。

そのため、Wi-FiやBluetoothのような無線通信が活用されます。しかし、IoTゲートウェイとインターネットとの接続は、通信の安定性を考慮して、可能な限り有線接続が推奨されます。

IoTゲートウェイの役割

IoTゲートウェイの役割は大きく2つに分けられます。それぞれの役割について詳しく解説します。

IoTデバイスから収集したデータをサーバーに送る

IoTゲートウェイの主な役割は、IoTデバイスから集めたデータを内部で処理し、インターネットを通じてサーバーに送ることです。

Apple Watchなどの一般的なスマートウォッチは直接インターネットにつながりますが、ビジネスの現場でIoTが利用される多くのシチュエーションでは、IoTデバイスを直接インターネットに接続することは少ないため、その仲介役としてIoTゲートウェイが必要となります。

IoTデバイスの管理と制御をする

IoTゲートウェイのもう1つの役割は、IoTデバイスの管理と制御をしていることです。

IoTゲートウェイは、サーバーから受け取った指示に従って、私たちが使っているIoTデバイスの状態を変えていく役割を果たしています。たとえば、パスワードを新しくしたり、セキュリティを強化したり、ソフトウェアを最新版に更新したり、特定の機能へのアクセス許可を調整したり、データの送受信ルールを調整したりします。これら全ての行程は、サーバーからの指示を受けたうえでIoTゲートウェイが仲介役を果たしています。

私たちが使うデバイスのパスワードが新しくなったり、ソフトウェアが自動的に最新化されたりするのも、実はIoTゲートウェイが裏側でしっかりと働いているからです。また、IoTゲートウェイによってデータの送受信ルールが適宜調整されれば、通信がスムーズに行われ、我々の生活がより便利になります。

このように、IoTゲートウェイは私たちの生活をスマートかつ便利にするために不可欠な要素なのです。

IoTデバイスが直接インターネットにつながらない理由

しかし、ここで1つの疑問が生じます。なぜIoTデバイスを直接インターネットに接続せずにIoTゲートウェイを介するのでしょうか。そこには以下のような理由があります。

セキュリティの問題

ビジネスの現場では、多数のIoTデバイスが同時に動作していることも珍しくありません。それら全てのIoTデバイスがインターネットにつながった状態では、セキュリティリスクを増大させることになります。そのようなセキュリティ上のリスクを回避するために、IoTデバイスを直接インターネットに接続することは避けられています。

通信費用の問題

地球上には億単位のIoTデバイスが存在します。その全てがインターネットにつながるとなると、それだけで莫大な通信費が発生します。その通信費用の観点からも、IoTデバイスを直接インターネットに接続することは避けられています。

IoTゲートウェイの接続方式

IoTゲートウェイには接続方法が2つあり、それぞれに特長があります。

有線方式

有線方式とは、文字通りケーブルでデバイスとIoTゲートウェイを繋ぐ方法です。IoTゲートウェイにデバイスに繋がれたケーブルを差し込んで設定すれば、あっという間に接続が完了します。

有線方式のメリットは、通信が安定する点です。大事なデータを確実に送りたい場合や通信速度を上げたい場合は、ケーブルで直接IoTゲートウェイに繋ぐことが推奨されます。

無線方式

無線方式には、「LPWA」と呼ばれる2つの接続方法がよく使われます。

1つは「ライセンスドLPWA」と呼ばれ、携帯電話などで使われる技術を利用しています。これは、電池の持ちがよく広範囲に電波を送れる特長があります。

もう1つは「アンライセンスドLPWA」と呼ばれ、「ライセンスドLPWA」よりも速度は少し劣りますが、省エネでありながら長距離に電波を送ることができます。また、利用に関しては免許不要なので導入しやすいところも魅力です。

無線方式のメリットは、IoTデバイスをどこにでも設置できる自由さにあります。その自由さから、IoTデバイスとIoTゲートウェイの繋ぎ方としては無線が選ばれることのほうが多くなっています。

IoTゲートウェイの多様性

IoTゲートウェイを必要としている業種は数多く、あらゆる業界でインターネット通信システムが非常に重視されるようになりました。ここでは、IoTゲートウェイの多様性について触れていきます。

IoTゲートウェイとBluetooth

BluetoothはWi-Fiよりも範囲や通信速度は劣りますが、電力消費が少ないという特長があります。そのため、イヤホンやスピーカーなどの小型デバイスに適しています。

また、一部のIoTゲートウェイ機器はBluetoothと連携してクラウドと通信することが可能で、特に家庭での利用に適しています。

つまり、IoTゲートウェイは企業の成長と効率化を後押しする一方、Bluetoothとの組み合わせにより家庭でも便利に活用できるものといえます。

IoTゲートウェイのセキュリティ

IoTは我々の生活を便利にする可能性を秘めていますが、それ自体がインターネットに接続することで生じる危険性も併せ持っています。

たとえば、IoTゲートウェイを介したパソコンでは、インターネットを介してウイルスに感染するリスクがあります。それによって個人情報漏洩などの問題を引き起こすことがあります。さらに、パソコンを通じて接続されている他の機器やネットワークも同様にウイルスに感染する危険性があります。

そのため、パソコン同様、IoTにもセキュリティ対策が必要とされています。しかし、今のところ、パソコンほどその認識が広まっていない現状にあります。そこで総務省では、IoT向けのセキュリティ推奨対策として以下のようなガイドラインを設定しています。

・方針1 IoTの性質を考慮した基本方針を定める
・方針2 IoTのリスクを認識する
・方針3 守るべきものを守る設計を考える
・方針4 ネットワーク上の対策を考える
・方針5 安全安心な状態を維持し、情報発信共有を行う

参照:総務省IoTセキュリティガイドラインより

製造現場にIoTゲートウェイを導入するメリット

IoTゲートウェイを製造現場に導入する場合、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

IoTデバイスの一元管理で作業効率化ができる

IoTゲートウェイが対応できる通信規格は多岐にわたり、工場内のセンサーや端末をIoTゲートウェイにつなげることで、すべての情報を一元的にサーバーに送信できるようになります。これにより、IoTデバイスの管理がしやすくなり、作業の効率を上げることができます。

さらに、IoTゲートウェイの導入により、リアルタイムでのデータ分析や迅速な意思決定も可能となります。これは、必要な情報がすぐに得られ、問題が生じた際に早急に対応できるという意味で、業績向上にも寄与します。

工場設備内のセキュリティが向上する

最近ではIoT機器を狙ったハッキングなどのサイバー攻撃が増えているため、セキュリティ対策が重要になってきています。しかし、工場内で使われているIoT機器の種類や規格は多様で、それぞれにセキュリティ対策をするのは大変です。

ここで、セキュリティ対策が施されたIoTゲートウェイを使用すれば、工場内の全てのIoTデバイスに対するセキュリティ対策が一元的に可能になります。

IoTゲートウェイが活躍する他の分野

IoTゲートウェイとは?導入のメリット、活用事例について詳しく解説
(画像=Koto Online編集部)

IoTゲートウェイは製造業に限らず、他の分野でもIoTシステムを支えています。ここでは、IoTゲートウェイが活躍している他の分野についてご紹介します。

農業

農地では、土をチェックするセンサーや収穫を手伝うロボットなど、さまざまなIoTデバイスが活躍しています。これらのデバイスからの情報は、IoTゲートウェイを通してクラウド上に送られます。それにより、農家は遠くからでも土壌の状況や作物の生育状態をチェックでき、農作業をより効率的に進めることが可能となります。

交通

スマートな交通システムを実現するためには、道路に設置されたさまざまなセンサーからの情報を収集し、分析することが必要です。IoTゲートウェイによってこれらのセンサーとネットワークをつなげれば、交通管理センターで道路の状況をリアルタイムに把握できるようになります。

エネルギーインフラ

発電所や変電所には設備の監視のためにセンサーネットワークが設けられており、IoTゲートウェイからの情報に基づいてエネルギーの供給状況が管理されています。

遠隔地での通信トラブル防止

山間部や地下などの電波が弱い地域では、通信障害が命取りになることもあります。しかし、IoTゲートウェイを使えば、通信の状況をリアルタイムで確認し、早期に問題に対処できます。

IoTゲートウェイで業務効率化とセキュリティの向上を

最近では、多くのデバイスがWi-FiやBluetoothなど様々な通信方法に対応できるようになってきました。しかし、大規模なIoTシステムを作るときには、コスト問題や通信規格の違いなどが課題となっています。その問題を解決するために必要となるのがIoTゲートウェイです。

近年、多くの製品やサービスがIoT化し、情報のやり取りを行うためにインターネットに接続することが増えてきました。その中で、IoTゲートウェイは情報のスムーズな送受信やIoTデバイスを管理する上で欠かせない存在となりました。業務効率化やセキュリティの向上など、あらゆる面で効果を発揮するIoTゲートウェイは、現代社会で今後ますます重要性を増していくでしょう。

(提供:Koto Online