レントゲン写真用のタイマーがヒット

オムロンは1932年に立石一真氏が創業した。レントゲン写真用のタイマーに高いニーズがあることを知った同氏が一人で開発に取り組み、完成させた製品が大ヒットしたのが始まりだ。

その後タイマーに使用していた技術を応用して、配電盤用の継電器を開発したのをはじめ、自動券売機、電子自動信号機、自動改札機、現金自動支払機、卓上計算機、健康機器などを次々と製品化。1970年代以降は工作機械用の機器などを投入、生産現場の自動化、生産性の向上にかかわってきた。

M&Aについては適時開示情報以外にも多くの案件を手がけている。同社が公表している沿革によると、2015年には吸入器の生産や販売を手がけるブラジルのNS Industria de Aparelhos Medicos Ltda.と他2社を傘下に持つ、MMRSV Participantcoes S.Aや、モーション制御機器メーカーである米国のDelta Tau Data Systems Inc.と傘下の8社を子会社化。

さらに2017年に産業用カメラメーカーのセンテック(現オムロンセンテック)と傘下の7社を、2018年には米国の産業用コードリーダーメーカーMicroscan Systems Inc.(現Omron Microscan Systems, Inc.)と傘下の3社を子会社化した。

適時開示情報を合わせてみると、主力事業である制御機器事業やヘルスケア事業に資金を投じ、事業規模を拡大してきた姿が見えてくる。

同社ではこのほかにも再生可能エネルギーの制御などを行う社会システム事業と高周波機器などからなる電子部品事業に注力しており、今後は制御機器事業やヘルスケア事業に加え、これら事業分野でも規模拡大のためのM&Aが実現する可能性は低くない。

というのも、これら四つの注力事業で2025年3月期までの3年間で1480億円の売上高を上積みする計画を掲げているためで、これは伸び率にすると3年間で45%になる。非連続な成長をもたらすM&Aに出番が回ってきも不思議はない。

M&A Online
(画像=「M&A Online」より引用)


JMDCの子会社化がますます重要に

オムロンは2030年に向けて多様な社会的課題が噴出すると予想。この予想を踏まえ「オムロンが存在意義を発揮し、飛躍と成長につながる大きなチャンスを迎える期間」と分析する。

2025年3月期を最終年とする現中期経営計画はこの長期ビジョンの最初のステージとなるもので、「噴出する社会的課題を捉えた価値創造と持続的成長への能力転換を加速」するとしている。

2028年3月期を最終年とする第2ステージでは、「第1ステージで創出した価値の拡大を進める」とし、2031年3月期を最終年とする第3ステージでは「企業価値の最大化」とするだけで、詳細は明記していない。

このことからは第1ステージがいかに大事であり、2030年の企業の姿を左右することになることがうかがわれる。JMDCの子会社化がますます重要性を増してくる。

その第1ステージの目標は売上高9300億円(2025年3月期)で、中期経営計画を策定した2022年3月時点での2022年3月期の売り上げ見通しの7600億円(実績は7629億2700万円)からは22.3%の伸びになる。

売り上げの半分ほどを占める四つの注力事業の伸び率45%と、注力事業以外の事業の伸び率5.0%を合わせて計算した結果で、注力事業の非連続性が改めて浮き上がってくる。

一方、同期の営業利益目標は1200億円で、2022年3月期の見込み880億円(実績は893億1600万円)から36.3%の増加となる。

第1ステージの初年度となる2023年3月期は14.8%の増収、12.7%の営業増益を達成。2年目となる2024年3月期も第1四半期は10.3%の増収、19.9%の営業増益となっており、通期の目標である売上高8900億円(前年度比1.6%増)、営業利益1020億円(同1.3%増)の実現に向けて順調な滑り出しとなった。

2024年3月期が予想通りの数字で着地すれば、第1ステージ最終年の2025年3月期は4.4%の増収、17.6%の営業増益が目標となる。この目標に向けM&Aのカードは切られるだろうか。

M&A Online
(画像=2024/3は予想、2025/3は計画、「M&A Online」より引用)

文:M&A Online