血圧計などのヘルスケア商品をはじめ制御機器や電子部品などを手がけるオムロン<6645>が8年ぶりに企業買収に踏み切る。2023年10月に医療データサービスのJMDC<4483>をTOB(株式公開買い付け)で子会社化するのだ。買い付け代金は最大855億円に達する.

同社の適時開示情報を見ると2015年に産業用ロボットメーカーの米アデプトをTOBで子会社化したあとは、医療機器、レーザー機器、車載部品、MEMS(微小電気機械システム)を手がける4子会社をいずれも売却してきた。

2022年3月に策定した2023年3月期から2025年3月期までの3カ年の中期経営計画には、M&Aを含む成長投資に2000億円を投じることを盛り込んでおり、前中期経営計画(2020年3月期―2022年3月期)よりも約600億円、率にして42%ほど増額した。

前中期経営計画には「M&Aによる非連続な成長の実現」という目標を掲げていたが、実際は売り先行となった。現中期経営計画にはこうした文言は見当たらないが、今回のTOBを見ると積極策に転じたように見える。このまま風向きは変わるのだろうか。

総額は2000億円規模に

オムロンは2023年9月8日に、JMDCの子会社化を発表した。31.49%の持ち株比率を50%超に引き上げることで傘下に収める。

JMDCとは2022年に資本業務提携を結び、ノーリツ鋼機からJMDCの株式を1120億円で買い取り、持ち分法適用関連会社としていた。

合計およそ2000億円を投じて子会社化することになったJMDCは、レセプト(診療報酬明細書)や健康診断、調剤レセプト、電子カルテなどの医療データを保有しており、オムロンは血圧計などから得られる日常生活下での健康データを持つ。

この両社が保有するパーソナルヘルスデータを解析し、ヘルスデータプラットフォームを構築することで、健康増進や重症化予防につなげるのが狙いだ。

オムロンの過去のM&Aを見ると、JMDC案件の金額の多さが目につく。アデプトの買い付け代金は232億円で、今回はこれよりも1ケタ上だ。アデプト以降は売り案件だが、2016年の院内医療機器を開発するオムロン コーリンは20億円。

2018年のレーザー発振器から加工装置化までを手がけるオムロンレーザーフロントは非公表、2019年の車載電装部品メーカーのオムロンオートモーティブエレクトロニクスは1000億円、2021年のオムロンのMEMS(微小電気機械システム)事業を引き継いだ滋賀セミコンダクターも非公表といった具合で、これら数字からは今回のM&Aの重要性を想像することができる。