日経平均先物(正式名称は日経225先物)は、日経平均株価の値動きに大きく影響を与えるマーケットである。日経平均株価は日本を代表する株式225銘柄で構成される株価指数だが、この指数を対象とした指数先物取引が日経平均先物である。

投資信託会社のニーズに応える先物市場

日経平均先物は金融派生商品(デリバティブ)の一種で大阪、シンガポール、シカゴの3取引所に上場されている。日経平均株価は銭単位だが、日経平均先物は10円刻みで取引される。

市場には、日経平均株価と全く同じ値動きをする金融商品を必要とする投資家がいる。たとえば、投資額が小さい個人投資家からお金を集める投資信託会社などだ。個人投資家は、投資信託会社が作った日経平均株価に連動するタイプの投資信託を購入すると、2万円程度の少額でも、日経平均株価と同じ値動きをする擬似的な「日経平均」を購入できることになる。一方、投資信託会社の側にとっては、個人投資家から集め、時には解約で出ていく出入りのある資金を、常に日経平均株価と連動するように運用する必要がある。

日経平均株価と同じ値動きをする持ち高(ポートフォリオ)を持つには、理論的には1銘柄ずつ現物株を買いそろえれば済む。しかし、取引時間中は個別銘柄は常に独自の値動きをする。証券会社のトレーディングルームにいる専門家は別として、投資家が順番に1つずつ買うと、希望した水準で全銘柄をそろえることは難しい。日経平均先物は、こうした投資信託などの機関投資家の必要に応える金融商品である。

機関投資家等の使い勝手が良い

日経平均先物が日経平均株価との連動性を持つのは、満期日が設定されているためだ。3月、6月、9月、12月の満期日には、現物株の始値から算出した特別清算指数(スペシャル・クォーテーション=SQ)が算出され、この価格との差額が決済される。通常の取引日は、この満期日までの日数分の短期金利を加え、配当分を除いた「理論価格」に基づいて取引される。

ところで、実際の株式相場では、日経平均先物が主導し、日経平均株価が後から追随して動くことが大変多い。市況記事では「●●というニュースが流れた直後から先物主導で日経平均株価が上昇した」と解説される。

こうしたことが起きる背景には、日経平均先物の市場参加者が、証券会社や国内外の機関投資家などの大口投資家が中心であるという事情がある。日経平均先物は、個別銘柄に比べて売る人も買う人も多く、取引に厚みがある。大口投資家にとっては希望した水準で売買ができる可能性が高く、素早く取引が完了するため、使いやすく安心感がある。

日経平均株価と先物の関係

このため、日本株全体に影響を及ぶような好材料が出ると、日経平均先物への買いが優勢となり、理論価格から離れて上昇する。こうなると今度は、割高になった日経平均先物を売り、割安な現物株を買ってサヤを抜こうとする取引(裁定取引)を行う市場参加者が登場する。この時、現物株には成り行き買いが入るため、売り手が少ない銘柄では価格が跳ね上がるケースもある。この結果、成り行き買いが一巡すると、現物株で構成する日経平均株価自体が日経平均先物に追随して上昇した形となる。

逆に、日本株全体に影響を及ぼすような悪材料が出た場合には、最初に日経平均先物が売られ、理論価格を離れて大きく下落する、ということが起こる。日経平均先物価格が日経平均株価に比べて売られ過ぎの状態になると、今度は割安な日経平均先物を買い、割高な現物株を売る裁定売り(既に裁定買いの持ち高がある投資家であれば裁定解消売り)を行う市場参加者が出てくる。現物株は一斉に売られ、日経平均株価は日経平均先物に追随する形で下落する。

先物の値動きを意識することが大切

先物市場と現物市場では市場参加者が異なり、値動きにかい離が生じる。各参加者には、運用資金や投資スタンスに違いがある以上、こうしたかい離が生じるのは自然なことだ。

とはいえ、個別株しか売買しない投資家でも、相場全体の値動きをつかむために日経平均株価をウオッチしている人は多い。個別企業の好材料に期待して買った個別株が、機械的な裁定解消売りで値を下げるようなことも起きるからだ。日経平均株価を左右する日経平均先物の値動きは、どんな投資家であっても意識の片隅に入れておくべきだ。(ZUU online 編集部)