ファーストリテイリングがサプライチェーンを改革 原材料から最終商品までを自社管理
(画像=「セブツー」より引用)

ファーストリテイリングは11月7日、持続可能性と事業の成長を両立し新たなビジネスモデルへの転換を進めるビジョン「LifeWear=新しい産業」のメディア・アナリスト説明会を開催した。本説明会では、同社のサステナビリティの主要領域における2023年度目標に向けた取り組みの進捗と、事業そのものを持続可能にしていく新たな取り組みを紹介した。

説明会内で、同社取締役の柳井康治氏は、「LifeWear」を「新しい産業」にするための4つの指針を発表。まず、「LifeWear」の商品完成度をより向上させるためにサプライチェーンの全てを見直す。また、世界中の人の個や多様性を尊重し続け、これまで「LifeWear」が積み重ねて得た知見を活用して、社会の安定と持続的発展に寄与していく。さらに、ユーザーが長期利用できる新サービス・技術を開発・提供して「LifeWear」の価値向上を目指す。これらが主な指針内容だ。消費者が必要とするものだけを作り、服の生産から輸送、販売までのプロセスにおいて環境や人権が守られ、商品の販売後もリユースやリサイクルなどを通して、循環型の社会を実現することを目指していく。

このようなビジョンのもと「ユニクロ(UNIQLO)」では、循環型社会を目指し、全商品をリユース・リサイクルする取り組み「RE:UNIQLO」を進めている。この一環として、新たに「ユニクロ 古着プロジェクト」を始動し、今年10月には「ユニクロ」原宿店で、古着を販売する期間限定のポップアップストアを開催した。また、昨年9月にロンドンの店舗で開始した、服のリペアやリメイクを提供する「RE.UNIQLO STUDIO」の設置もグローバルに拡大・展開中だ。 さらに、2020年には、初のリサイクル商品として「リサイクルダウンジャケット」を発売し、ヒートテックとエアリズムの一部インナー商品においても、2023年から初めてリサイクルポリエステルやリサイクルナイロンの素材を採用している。素材研究の結果、リサイクル素材でありながらも両商品の特徴であるなめらかな着心地と高い機能性を維持している。現在は新たにコットン、カシミヤ、ウールを再利用した循環型リサイクル商品の開発を進めているという。

生産領域においては、持続可能性を担保しながら、安定的・機動的に生産できるサプライチェーンの構築に取り組んでいる。取り組む上で重視している柱は「サプライチェーンの可視化と集約」「生産拠点の多様化」「原材料調達管理の深化」の3つ。まず、1つ目の目標は、生産の全工程で品質、調達、生産体制、環境・人権対応の自社基準を適用し、自社でサプライチェーン全体を管理していくことだ(サプライチェーンの可視化と集約)。これを実現するため、最終商品から原材料レベルまでの商流やサプライチェーン全体を可視化し、少数精鋭の生産パートナーに取引を集約。また、主要生産拠点である中国だけでなく、インドネシアやベトナムなど東南アジアでの生産比率も拡大しており、成長市場のインドでもさらに国内生産を拡大していく(生産拠点の多様化)。 さらに、今後は、原材料を指定農場や牧場から調達する取り組みを進めていくという(原材料調達管理の深化)。

同社は、2001年に社会貢献室を発足して以来、社会課題を解決するためのさまざまな社会貢献活動を行っている。昨年9月には、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と共同でバングラデシュのロヒンギャ難民女性への自立支援プロジェクトを立ち上げ、今年8月までに約350名の女性に対する縫製スキルのトレーニングを完了した。2025年までに、1,000人に対するトレーニングの終了を目指している。また、ファーストリテイリング財団は、ベトナム人への留学生奨学金を開始し、第1期生として6名の学生が今年秋に日本の大学に入学した。日本で学ぶ必要性のある知見を身に付けると同時に、日本の文化を理解し、お互いが知的につながり、才能を活かし高め合うことを支援する。

同社の地球環境に余計な負荷をかけない服づくりや、働く人たちの健康、安全、人権を守る取り組み、そして、さまざまな事情で衣類が手に入らない地域の人々への支援の根本にあるのは、「服のチカラ」で世界をよい方向へ変えていくという理念だろう。「服のチカラ」を通して社会と調和し、事業を通じて社会課題の解決へ取り組む同社の今後の活躍に注目したい。