博報堂Gravityの新オフィスに訪問 働き方とともに変わるオフィスの在り方とは
(画像=「セブツー」より引用)

広告会社の博報堂Gravityは今年6月、東京・日比谷の新オフィスに移転した。日比谷通りに面し、皇居もすぐ目の間の立地で、かつては「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」の日本第1号店があった場所だ。博報堂Gravityは昨年、博報堂マグネットとコスモ・コミュニケーションズが統合し、銀座と外苑前にそれぞれ分散していたオフィスをひとつに集約した。

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■元木大輔氏率いるDDAAが手掛けた新オフィス
新しいオフィスは、インダストリアルデザインとアートが融合したかのような空間で、建築家の元木大輔氏が率いるDDAAが手がけた。DDAAは 「エンダースキーマ(Hender Scheme)」の店舗 や「無印良品」の展覧会などで知られている。オフィス3階は、オープンスペースを「コ」の字型の執務室が囲むような造りで、写真家の横浪修らの作品が展示されている。

執務室には、デスクの他にこたつスペースやロープ状の暖簾に囲まれた個室など、一人ひとりの仕事のスタイルに合うように席が用意されている。工事現場でよく使われる単管パイプへ金メッキを施して組み立てたデスクとシェルフは、オフィス内で存在感を発揮している。4階の宇宙空間のような通路の先には、商談などで使用されるプレゼンルームがある。

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(画像=「セブツー」より引用)

■偶発的にコミュニケーションが生まれる場所
新オフィスのコンセプトとディレクションを任されたのは、博報堂Gravityのクリエイティブ・ディレクターである佐々木裕也氏だ。「会社に行かなくてもいい時代に、会社に集まりたくなる場所を作ろうと考えました」と、佐々木裕也氏は新オフィスの狙いを説明する。新型コロナウイルス禍を経て、テレワーク(在宅勤務)が定着し、働き方のスタイルも多様化した。その一方で、出社回数が減ったことなどにより社内のコミュニケーションは希薄になりつつある。こうした時代に、佐々木裕也氏はどのようなオフィス作りを目指したのだろうか。

「博報堂Gravityは、博報堂マグネットとコスモ・コミュニケーションズが統合して、違う文化や個性を持つ人たちが集まりました。そういった人たちが混ざり合って面白いことが生まれる空間にしたいというのが狙いでした。コミュニケーションが偶発的に生まれる場所です」と、佐々木裕也氏は新オフィスの狙いについて説明する。こうした考えから、「mingle」というコンセプトを設定したという。「mingle」は「混ざり合う」という意味では「mix」と同義だが、さらに「混ざり合った結果、何かが生まれる」といったポジティブに捉えられる言葉だ。このコンセプトを元に、内装や備品には、スチールやガラス、生地など様々な素材を組み合わせている。

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■働き方とともに変わるオフィス
オフィスには様々なこだわりが見てとれる。例えば3階の「コ」の字型に設計された執務室。この変わった形には「流動性」を意識した。佐々木裕也氏は「フリーアドレスなので、朝出社して席に着いたらずっとその場所にいてしまい、コミュニケーションが生まれなくなります。そうならないためになるべく人が行き来するように動線設計しています」と話す。ロッカーで荷物を取ってから席に移動するまでに執務室内を移動しなければならない、というような動線を数十パターン検証したという。各会議室も社名の「グラビティ」に関連して、「MARS」や「JUPITER」と名付けられている。新オフィスには、出社したいと社員に思わせるような小さなこだわりも。「リモートをみんなが選択するのは、リモートの方が働く環境として良いからです。だから、会社の環境が良ければ出社してくるだろうと考えました」。

佐々木裕也氏自身、子どもが夏休みになる8月は最低週2回はオフィスに出社し、必ず1日は在宅勤務の日を作っていたという。夏休み期間、小学生の娘を学童に毎日通わせるのがかわいそうだという思いから在宅勤務を取り入れている。新しい働き方は社員それぞれの環境によって柔軟に合わせられるという利点もあるようだ。一方でオフィス勤務について、クライアントとの会議などオンライン参加ができる仕事であっても、メンバーがオフィスに集まることが多いという。「やはりこの場所で会話するのとリモート越しで会話するのとでは全然違います。身内はやっぱり会いたいのでしょう。対面でしか生まれないやりとりも大事にしています」。

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■会社のカルチャーにフィットしていくためのリアルな場
新オフィスに移転して約4カ月が経ったが、「コミュニケーションが早くなりました。会う回数が増えましたし、みんなが出社するようになったと感じます」という。コミュニケーションの場としてのオフィスが機能しているのだろう。元々社員の70%が出社をすることを想定して設計したというオフィス。実際に移転してみると、出社率は70%を超える日もあり、席がないという声が聞こえるほどだという。佐々木裕也氏は、スタッフが早く会社のカルチャーにフィットしていくためにもリアルな場が必要だと考えている。

働きやすい環境を整えることは、スタッフのモチベーションの向上や効率化に不可欠であろう。スタッフがオフィス環境になにを求めているかを追及した好例といえよう。

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